翔子が、生徒会の会員になる。一般会員だ。一般会員とは、会社でいえば平社員。

 入る手続きは簡単だった。名前を書いてハイ終了。生徒会の会員手帳をもらっただけ。
 まあ平社員だ。こんなものだろう。
 大きな行事以外は、部活動や休憩時間、放課後などで、定期的に来て下さいとのこと。
 最初は雑用から。二回生なので一応一回生の仕事よりは上の役をするらしい。

 人から指図されるのが嫌いな翔子だが、大丈夫だろうか?

 ただ、生徒会長の推薦状を持っていったので、ちょっとだけ態度が違っていたが。

「まあ、こんなものね。最初は」

 入ったのはいいが、これでは、やれることは限られている。
 このままでは意見を言えるのは生徒総会の時だけだ。
 年に数回しかない総会で意見など言えてもたかがしれている。

 評議会にもまったく出られない。

 こんな手帳一つで、天下の如月翔子が満足するはずもない。
 と、思いながらも教室へ向かった。すると、

「あら、翔子、本当に生徒会入ったの?」
「まあ、もう知れ渡っているのね」
 ふふふっという態度の翔子。仲のよい友達が集まってきた。午後の授業も終わり、帰宅部の人はせっせと家路に急ぐ。
「これからは、この私が……生徒会を変えていくわ!」
 どっと笑いが出る。平社員の大口たたきのようだ。
 新人が陥りやすいのによく似ている。
 しかし、きっぱり言うのが翔子の面白いところだ。

「でもさ〜めんどうしくない? 大変みたいよ」
「面白いと思うわ、私は。その代わり、自分の思い通りにならないと嫌だけどね」
 なんというわがまま。
 入会すればいきなり思い通りになるとでも思っているのだろうか?
「翔子って結構三回生の人たちも注目してるらしいわよ」 
 物知りのような娘が言った。

「ちょっと前、その三回生の方と……いろいろとあったけどね」
「え?」
 みなが一瞬シーンとなる。

「亜津子さんのクラスへ行ったのよ」
「……そ、そうなの」
 堂々としている翔子に驚く取り巻きたち。
 しかし、一向に意に介しない翔子の態度はたのもしい。
「ねえねえ〜 生徒会手帳みせて〜」
 めずらしいのだろう、見せるとあっという間にまわし読みである。

 これでまた、人気も上がった翔子。

「さて……と、テニス部へ行こうかな」
 クイッと腰を動かして、部活動に向かった。



 テニス部での休憩雑談中……
 話題が翔子のことで持ち上がる。生徒会手帳はこちらでも大忙しだ。

「すごい人気よねえ〜」
「…………」
 じっと見ているのはもちろん……

 丸山優実。
「手帳一つで、大騒ぎね〜」
 小声で悪友と皮肉るように言う。

 ――なんであんなに……
 人気あるのかと言いたいのだろう。

「手帳見せてるだけで、あんなに人が集まるなんて始めてみたわ」
「ばかばかしい〜」
 優実にとってはあほらしく見ていられないといったところか。
 だが、妬めば妬むほど翔子の評価は上がっていく。
 その妬みの視線をオーラではじき返す翔子。

「練習、始めるわよ」
 クイクイと腰を動かしながら、三毛亜津子が命令する。一年上の肉体が、ゆっくりと翔子の前を通過していく。テニスウェアが見事な肉体をいろどっている。

 こちらは余裕だ。優実のように妬みはない。

 ――翔子……

 だが、心の中では別だった。

 ――亜美さえも……
 亜美とはあのポニーちゃんのことだ。どうやら亜津子のグループのナンバー2のような存在らしい。補佐役、ブレーキ役といったところか。だが、腹黒いのは確実。
 あの微妙な笑み、あの微妙な雰囲気は怖いものがある。
 雰囲気でナンバー2になっているようなものだ。

 亜津子の周りは一癖もふた癖もありそうな連中ばかり。
 そのポニーちゃんからの助言は、利用しようという判断。

 亜津子はそれに従うことにした。生徒会長になるのとならないのはこの学園では大違い。
 補佐役の発言力は大きい。

 だが、そのことは如月翔子を結果的に強い立場にすることにもなるのだった……
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