「さあ、はじめましょう」
 コートに別れた二人。キッと亜津子は翔子をにらむ。
 舐められないために、最初は肝心といったところか。それは翔子も同じだ。

 お互いの綺麗な足が争っている。
 ふともものつけねが見え隠れするテニスウエア。フェチにはたまらない光景だ。

 他の部員達も見守っている。今日は4回生以上の人はいない。
 高等部は1、2、3回生、それ以上の4回生からは短期の大学にあたる。
 つまり高等部では3回生が一番上になる。この学校は高等学校から大学まで一気に突き進むようになっているのだ。
 テストが始まった。亜津子のサーブされた球が翔子のコートに向かって行く。


 パコーンッ!――

 パコーンッ!

 ――へえ〜なかなかやるじゃん。

 優実がじっと翔子のプレイを見ている。
 予想より現実は違っていたらしい。そしてもう一人、他の部員とは明らかに違うまなざしで見ている生徒がいる。

 ――すごい……亜津子先輩とあそこまでやりあえるなんて。

 1回生の子だ。おとなしいタイプに見える。
「ねえねえ、翔子さんて結構すてきよね」
 横にいた子が尊敬のまなざしで見ている子に言った。尊敬の眼で見ているこの子の名は如月舞。 
 
 ――如月?

 だが翔子の如月家とは全く関係ない。家も普通の家柄だ。どうやら同姓らしい。それがよけいに親近感を与えるのかもしれない。二人の勝負に熱が入ってきた。対等にスコアも渡り合っている。
 本来は、他の者は練習しなければならないのだが、この勝負に見入っているようだ。

 翔子の汗が、顔から背中にかけて流れていく。一方の亜津子の方も同じだ。
 あの汗になれれば、両方の肉体を舐め回すように楽しめるのは間違いない。

 ――やるわね……翔子。

 二人は、いつ終わることもないように打ち合い続けていた。




 今日一日で翔子はテニス部の誰もが知っている存在になった。
 まさにここを仕切っている亜津子と同格で見られ始めたのだ。

 と、同時に敵を作ったのも事実だろう。
 他にも3回生はいっぱいいるのだから……

 だがこの翔子にはそんな事は関係ない。ただただひたすら王道を突き進むのみ。
 ロッカーで着替えながら何か考えている翔子。汗にまみれた身体はいっそうエロチックだ。
「あなた結構うまいのね」
「ありがとう」
 にこっと笑う翔子。横にいる同じ2回生の子に言われて少し気が緩んだようだ。
 すると、
「すごいですねえ翔子ちゃん」

 あのあどけない顔が迫ってきた。

「ふふ、そう言ってくれるとうれしいわ」
 翔子が返す。
「今度私ともお手合わせしてくださいね」
「ええ、機会があったらそうしましょう」
 嫌味な言い方だ……言葉こそ当り障りないが、優実の言い方には棘がある。まあ、翔子も負けてないが。

 ――あの子、亜津子のいそぎんちゃくのようね。私を偵察……ってとこかしら。


 そのいそぎんちゃくが思う。

 あの女は――危険……亜津子さんにとって。

 優実はどうやら察知し始めたらしい。翔子は危険な存在だと。

「翔子、あの子には気をつけて」
「ん?どういう意味?」
 話しかけられた横にいる生徒に聞く。
 周りの子がいなくなったのを確認してからその生徒は……

「だいたい自分から積極的に話し掛ける相手は嫌ってる証拠なのよ。あの子の場合」

 ――なるほど……そういうタイプなのね。  ふふ、やっぱり。

 ――裏表バリバリというわけね。

「ありがとう、それよりこれからあなたどうするの?」
「お茶しない?翔子さん」
「いいわよ」
 情報を仕入れるにはこの子は使えそうだ。いよいよ翔子の権力争いが始まる。
 パワーゲームのためのスタートを切り始めた。


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