宴の夜
「ああ忙しい、忙しい」
 メイド達がぶつぶつ言いながら走り回っていた。出来上がった料理を次々と宴の間に搬入していくためだ。
 大広間では甲高い笑い声が絶え間なく聞こえてくる。

 この部屋は、今、貴族の身分の者、成金、著名な作家、芸術家等であふれていた。なぜなら、ある一人の女性が、広大な領地を持ち、その周囲にさえも絶大な権力を持った父の後を、正式に継ぐ事になったからだ。

 その名はミセルバ・アウグス。 今日正式に父の身分を継承した女性である。
その姿は気品あふれる美しさ・・といったところだろうか。キュッと引き締まったウエスト、なめらかにエロチックに曲線を描いている豊かな胸、少し気の強そうな顔立ち、それでいてどことなく子供っぽいような容姿にも見える。
 だが今は少々お疲れのようだ。 それもそのはず、朝から彼女は一日中百人近い人間からあいさつを受け、貢物を慣例のように受け取り、座ることさえほとんどなかったのだから。
 しかし周囲にいる者にはそんなことより、いかにお近づきになって既得権益の保持や、これからの商売を有利にすること等で頭がいっぱいのようだ。

 お嬢様…いえ御領主様は、だいぶんお疲れみたい。大丈夫かな?。メイドの一人が心配そうに見つめている。

 彼女の名はミク、一月ほど前に雇われた女性である。彼女にとってここでの生活は本当に驚く事ばかりだった。何十人もいるメイド、兵士や役人が毎日城のどこかにいる。
 食事を作る料理人も一人だけではない、朝昼晩とすべて別の料理人が別々に作る。親子二人だけの生活から一気に集団生活に変わったのだ。驚くのも無理はないだろう。
 加えてみな優しい人が多い。本来こういう所は必ず妬み、企み等が渦巻き、陰湿な面が見えがちなのだが、先代のミセルバのお父上が人格者として立派だったこともあり、大きな揉め事も起きていない。

 そして彼女は今、恋をしている。だが相手は、男ではない。

 そう……お相手は、ミセルバ……先日まで御令嬢、今日から広大な領土を持つ御領主様。
 その方を想うたびに、いけないところが愛液ですぐ満たされていく。最近は眠る前に、必ずと言っていいほどミセルバを想い、自慰にふけるようになっていた。
 今もじっと特別な目で見ている。
「ちょっと!ミク!なにボーっとしてるのよ」
「あ、はい,すいません」
 仲間のメイドにちょっときつく言われて、あわてて彼女は仕事にとりかかった。


 しばらくはこの宴は続くだろう。彼女は、心の中でミセルバを気遣いながら、厨房へ向かっていった。
一つ前