露天浴場


ライザが向かったのは露天浴場、ようは城内に設けてある一般の大浴場。浴場は三箇所設けられている。二つは一般浴場、そしてもう一つが御領主様とそのご家族が使われる浴場だ。そのうちの一つは露天式と呼ばれているところである。外の景色や風を肌で感じ取れるところであり、こちらは24時間いつでもOKとなっている。ただこの浴場は女性達には評判が良くない。
 なぜなら人が普通に通るところに設置されており、男達の目をまるで楽しませるような仕組みになっているからだ。2〜3代前の御領主様が作らせたらしいのだが、明らかに魂胆はみえみえであった。
 だから普通はもう一つの浴場を使うのが一般的だ。だが夜遅くになると、管理している者が、鍵を閉めてしまう。その場合は、露天の方を使うように言われていた。
 しかしライザはこちらの方に興味があった。看護婦達がこっちの方が気持ちいいと噂していたからだ。
こういう時はとてもその情報は役に立つ。あいさつ回りで、夜も更けてきたからもう一つの方は使えない
 自然とこちらへ行くのは当然だ。ただこちらは湯も出っ放しほとんど管理もされていない。

 ――まあ、気にしない。さ〜て貸切状態かな?

 裸になりあたりを見回す、すると遠くの方に人影がある。
「ん?」
 どうやら手を振っている、あ、あれは……。

 なんと看護婦の一人、ゼラだった。

「せんせい〜い」
 甲高い声が響く。はあ、せっかく一人でゆっくりしようと思ってたのだが。仕方ないなあ。あきらめた顔でライザは湯船に浸かっていった。


 しばらく二人は談笑を重ねていた。なにしろ今日ここに来たばかり。特にゼラにとっては驚きの一日だった。
「すごいですよねえ」
「ああ、そうだな」
「ミセルバ様とても綺麗だった。あこがれちゃうなあ」
 半分呆れ顔のライザをよそに勝手に喋り捲っているゼラ。しかたないか、しばらくは…ん?どうやらまた向こうから人影が見える。今度は数人だ。

 ――あ、あれは……。
「ミセルバ様?」
 ビックリしたのはライザだけではない。ゼラも同様だ。まさかここでミセルバ様が来るとは夢にも思ってなかったのだから。

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