その2


 ――て、貞操帯……ってあの。

 読んでいたミセルバにとって昔良く聞かされた言葉だった。貴族の奥方が戦争に行った夫が帰るまで不貞を働かないようにと作り出されたモノだと聞いたことがあった。祖母が良くその話をしていたのだ。正確には噂を聞いていたのだが。
 ミセルバの母上メライヤははっきり言って淫乱と言う部類に入っていただろう。父は結構厳格な人だったが、母は父上の結婚前にもいろいろ男の噂が絶えなかった女であった。祖母リュ−スはそんな母を嫌っていた。しかしミセルバの母は王家の遠縁に当たる家柄であり、政治的にもミセルバの家にとってはねがってもないチャンスだった。反対したのは祖母一人。
 他の親族はみな賛成だったのだ。どんなに淫乱娘だろうがそれが王家の関係ある者で、それなりの地位があるなら話しは別なのである。ミセルバ、アーチェと二人の子供を儲けた後、もう一人男の子がほしいと母メライヤが先代のグールにせがんだ時もひと悶着あった。基本的に子供を何人儲けるかは男が決めるのがしきたりだった。

 グール自身男子がほしいのは本音だったが、この国では男子でなくても第一子、または御領主が決めた人間なら即位するのは女性でも構わないからだ。しかし母は諦めきれなかった。
 そこで子がほしい子がほしい、次こそは男の子を産んで見せますとしきりにねだった。しかし子作りをいいことに快楽を追求する淫乱女、貞操帯でもつけておかないとどこぞの男とでも……とリュースは影でこそこそあらぬ噂を広めたのだ。
 結局クローザー様がお生まれになったのだが、両者とも最後まで溝は埋まらず、母メライヤは3年前に他界してしまう。それからは祖母にとっても不幸な事だった。周りからは、毒を盛ったのでは?という噂が流れ、みなが疑心暗鬼に陥ってしまったからだ。そのため精神的にも疲れ果て老体に無理がたたったのだろう。その3ヶ月後には他界した。

 そして一年前父グールも他界。ミセルバはこの何年かで3人の親族を失っている。しかし今はそのことより、貞操帯の続きが気になるようだ。続きをミセルバが読み始めた。


 

 部屋に男がゆっくりと入ってきた。
「へへへ、どうだい?」
「…………」
「ん?」
「あ、あの」
「なんだい?淫乱の奥方様」
「お願い……もうこれを」
「取ってほしいのか?なら……受け入れるのか?」
「も、もう」

 ああっ……女は絶対に言いたくはない恥辱の言葉をついに放つ事を決意する。

「限界なのよ、お願い」
「はっきりいってほしいよなあ、でなきゃおれ理解できん……馬鹿なもんでよ」

「これを……取って、取って」
「とってどうするんだ?自慰は許可なく出来ないぜ」
「あ、あなたの……モノを受け入れるから」
「モノってなんだ?詳しく述べてくれ」
 にやにやしながら薄気味悪い笑みを浮かべる男。

「……ぺ、ペニスを」
「ほう・・ペニスを・・・なんだ?」
「い、入れて」
「そうか……ついにほしくなったか、にしてもよくがんばったよなあ、二日も我慢できるとはおもわなかったぜ」
「…………」
「なにせ強力な淫乱薬でここまで我慢するとはなあ」
「…………」
 女はただただ黙っている
「へへ……その粋に免じてさ、今から選択させてやる」
「え?」
「まずはなあ」
と言って男は三つの選択肢の内容を話し始めた。

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