新しい先生 |
次の日は非常に寝覚めがミセルバは悪かった。それもそのはずあれから夜明け近くまでもんもんとしていたのである。朝からメイドの一人に夕べは良く眠れなかったのでございますかと言われドキッとした やはりあの浴場での官能が心のどこかにこびりついて離れない。そして10日後ぐらいにミクの当番もまたやってくる。それが変に気になってしまっていた。 「閣下、閣下」 「え?」 おもわずハッと我に返る。 「今話したこと理解されてますでしょうか?」 「あ…ごめんなさい」 「いえいえ」にこっとそばにいた側近が微笑んだ。 「爺、ところでその閣下というのは辞めた方が良い。」 「あ、しかし…いや申し訳ありませんな。つい昔のくせで」 先代のミセルバの父グールは、グール閣下と呼ばれていた。立派な方だったからこそ、みな尊敬の念を込めて使っていたのだ。 「女性に閣下というのはふさわしいとは思いません」 「申し訳ありません」 にっこりとミセルバが微笑むと老人は軽く会釈した。 この爺さんの名はシュタイン。代々このミセルバの家に仕える側近の一人である。 「で、先ほどの件なのですが」 「新しい医者のことですね」 「ええ、それなりにふさわしいかたが良いかと」 「爺、女性の医者はどうかしら?」 「女性の、女医ですかな?」 こくっとミセルバはうなづく。 「ふ〜むしかし周りがいろいろと」 「能力があるなら女性でも立派に勤まると思いますけど」 じっと爺を見つめるミセルバ。 「わかりました、検討してみましょう。この前の様な不祥事は避けたいお気持ちもわかります」 不祥事、それは最近医者に不心得者が多くなってきているのである。貴族の身分の者は行きつけの医者をたいがい決めている。まして御領主であるミセルバのお抱えとなれば待遇も名誉も格が違う。しかしこと最近二人の医者をお抱えとして使ってきたのだが、一人目はメイドに性的な行為を強要したことが発覚して罷免、二人目は、こともあろうにミセルバの弟であられるクローザー様にいたずらしたことが発覚し、ミセルバの支配地域、クローラ地方からの永久追放の処分にしていたのだ。 このようなこと続いてほしくはない。 そう思いミセルバは提案したのである。 「では早速検討に入りましょう。失礼いたします」 そう言って爺は部屋から出て行った。今度はまともな者を、そう願うミセルバであった。 |
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