いきなり咥えられたモノ……ミリアムは正直驚いた。

 ――プ……プリナ……
 貞淑そうだったプリナ。しかし、今の状況はそう見えない。
 グイグイとくわえ込む。

 だが、ミリアムはすぐにわかった。

 ―― 一生懸命、なんだな……
 アピールだと思った。

 そのとおり。

 そう思うと、ますますモノは勃たなくなるのだ。この青年は心が綺麗過ぎる。
 しゃぶられながら考える青年。

 この娘のためなら……そう心が動く。
 しかし、それはますます泥沼にはまることになるのだ。

「んぐ、んぐ」
 一生懸命にしゃぶり続けるプリナを見て、ミリアムは複雑であった。




 それから一週間後のこと。

 中央の王都にある、酒場……
 その酒場に数人の地方騎士と皇族騎士がいる。そしてその中に……


 あのガッツ騎士団長だ。久しぶりのご対面。しかし、態度はあまりでかくない。なぜなら自分よりも地位が高い者がいるから。

 皇族騎士が数人いる。Royalty Knightという腕章をつけているのが証拠だ。これを見れば大抵の平民は黙ってしまう代物である。
「ほ〜クローラのミセルバ公はそんなに美しい方なのか?」
「まあ……ですね」
 聞かれて適当に答えているようだ。

「一度お会いしてみたいものだな」
 いかにも好色そうな顔をしている皇族騎士の一人。ガッツもわざと合わせているようだ。

 ――疲れるぜ……
 中央に研修に出て一ヶ月……まだまだしばらくは滞在しないといけないらしい。
 だが、ここで長い研修を終えれば、将来の騎士連団長や騎士帝長の椅子が近くなるのだ。
 
 だが、騎士団長としてクローラ地方にいる方がはるかに気楽である。

 ――しかし、ここは確かに楽園でもあるな〜

 女に関しては事欠かない。国中のいい女の集まりみたいなものだから。いつの世も同じだが、都会には人は集まる。欲望が集まるのだ。

 今日は、この長い研修の合間に、一息ということらしい。

「ガッツ殿、今度ミセルバ公にお会いできるように、取り計らってはくれないか?」
「は、はあ〜 」
 ちょっと困るガッツ。この皇族騎士は相当酔っているようだ。いくらなんでもそんなことは気軽にはできるはずがないだろう。
「18で地方領主ですからな。お目にかかりたいものだ」
 別の皇族騎士も興味津々らしい。

 ――けっ……いいかげんにしてくれ。

 どうも気に入らないガッツ。実は、相手はみな年下なのだ。
 ほとんど25過ぎぐらいだろう。しかし、地位は当然上。

 同じ試験にパスし、騎士の資格を持っている条件も同じ。
 しかし、この若さで皇族騎士になれるのは……


 コネである。


 貴族の息子とか、有力平民の息子など……後ろ盾があれば、王族に推薦してもらえる。後は、まじめにやっていさえすれば、職も失わないのだ。もちろん、訓練はきびしいが。

 ――酒がまずい……ぜ
 気分が悪くなる。こんな若造に命令されているのだ、嫌なのだろう。しかし、これが現実である。
 年功序列の時代はもう終わっているのだ。
 するとその若造の一人が、

「おい、こっちだ!――」
 一人の女を呼びつける。さっきから女がくるのを待っていたこのグループ。
「すいません、先客がありますので」
「なに〜いいいいいいっ!――」
 酔っ払い皇族騎士が怒った!

「あっちが、さきなの。すぐに別の娘、よこすから」
「俺はお前がいいんだよ」
 どうやらお気に入りの娘のようだ。

 いきなり胸を掴んだ!

「ちょっと! 触らないでよ!――」
「馬鹿やろう! 触られるのが、仕事だろうが!――」
 嫌なお客の典型的。

 ――おいおい、みっともねえな。
 ガッツに思われるほどだ。相当みっともない。

 人のことはいえないが。

「わたし、あんた嫌いなのよ、正直いって」
「なに〜いいいいいいいいいっ!――」
 今度は、無理やり抱き寄せる!

 と、その時……

「みっともないですね、それでも皇族騎士ですか?」
 いきなりちょこんと、出てきた少年。まじめそうな顔立ち。

 ――ん? なんだ?
 ガッツが不思議に思う。

「あ〜なんだ? このガキ! すっこんでろ!」
「そうはいきません、僕らのところにくる女性だったのですから」
 引かない少年。皇族騎士にも一歩も引かない。おまけにイッチョ前に剣も持っている。

 ガッツはその剣の鞘を見た。みると、すべて黒で覆われているのだ。

 ――あれは……


「さ、離してください」
 平然と言う。この冷静さがカチンときたらしい。
「この〜!――」
 ついに手が出た! 

 ガキに大人気ない。


 と、その時……収まりがつかないと判断したのだろう。この少年のパートナーがもう一人……
 こちらは大人だ。りりしそうな青年。

「やめろ、大人気ないぞ」
 声もいい声している。女性が騒ぎそうな美声だ。
「なんだ? お前は!――」
 さらに叫ぶ皇族騎士。
「あなたも騎士なら、それなりの態度をするべきだと思うが」
 冷静に問いかける。この男も帯刀している。だが、鞘はやはり黒いもので覆われている。騎士や軍人などは、鎧、服装、剣に身分証明みたいなものを必ず刻んでいるのだ。
 そして騎士や軍人はある意味みせびらかしている。

 だが、この二人は、それをあえて隠している。

 すると酔っ払いが、少しだけひるんだ。冷静になる酔っ払い。
 どうやら鞘を隠している意味がわかったらしい。

「……お飾り組織か……」
「お飾りじゃない!――」
 少年が言い返す!
 今度は少年の方がきれそうになった。

「ち、わかったよ……別の女でいい。すぐによこせよ」
 さっと目をそらして言う皇族騎士。面倒だと思ったのだろう。
 そしてさっさと席に戻った。

 ガッツたちも戻る。
 何事もなかったかのように……

 ――あの少年……もか?


「戻ろう」
「……はい」 
 悔しそうだ、この少年。お飾りと言われたのが、本当に悔しいらしい。

 このふたりこそ……


 リシュリューが画策し、ミセルバさまが考えている王族検察官の二人であった……
BACK NEXT TOP