「これ」
 渡されたのは薬だろうか?白い粉のようなモノが入った透明の子袋である。
「大丈夫なのか?」
「あのなあ使いすぎるとやばいかもよ」
「…………」
「軍人とかは薬物に関しても知識が豊富だから」
「そうなのか?」
「おいおい、あんた皇太子殿下だろう?」
 笑うラミレス。
「それくらい知っておけって」
「ほいほい」
「身体は全く火照ったりはしない。そういうのすぐにばれやすい。なんか欲求不満になるらしいとか」
「へ〜」
 これをうまく飲ませて……

 背徳の匂いがプンプンする。さらに若いのに薬に頼るとは……

「やってみな、効くかどうか」
「まあ検討はするよ機会があれば」
「いつも側にいることが多いならチャンスありだぞ」
「でもなあ俺が飲み物作るってことなんかないしなあ」
 確かに……そんな事はまずありえない。
「そこら辺は……まあがんばってくれよ」
 ポンポンと肩を叩くラミレス。仕切っているのはどうやらこっちの方らしい。殿下は親友から不思議な粉を貰った。これをどう使うか。
 これは殿下次第になる。


 もちろん軽い気持ちだったのだ……最初は。
 しかしこれが徐々にのめり込む要因になることになるとは……




 それからラミレスの屋敷を後にした殿下御一行。いろんな店などを回って今日は戻ってきた。

「ふう〜なんかあいさつ周りでもいったみたいね」
 自分の部屋の椅子に腰掛けリラックスするルビア。
「お疲れ様でした。でも、殿下、今日は不思議とかしこまってらして……不思議でしたわ」
 クリティーナは敏感に殿下の変化を察知していたようだ。

「ふ〜んそうなの。ところでラミレス殿って、殿下と仲がいいみたいね」
「ええ、昔からの幼馴染とか」

 ――幼馴染。

 私と、マグの関係みたいなものか。そういえばマグ、うまくやっていけるのかなあ〜

 だんなの事をちょっと気に掛けるルビア。こっちで新しい商売をするための準備が出来たら、王都に向かう事になっている。だが後2週間は一人者の状態のままだ。
 ひさびさに独身を謳歌しているルビア。

 ――たまにはいいわね、こういうのも……ふふ。

 ルビアが昨日、この部屋でひそかに自慰をしたのもそういう理由があったのだ。

「でもクライシス殿って不思議な方ですね」
「そうねえ〜ああいうタイプは私苦手」
「あら、やり込めそうな雰囲気持ってらっしゃるのに」
「負けるわよ」
 ルビアがクスッとわらう。

「あなたああいうタイプは?」
 聞き返すルビア。
「う〜んご遠慮したいですわ」
「ふふ、気が合うじゃない」
 二人はクスクスと笑いあっていた。






 ――はあ〜やっと自分の時間ができた。ポポは疲れた様子だ。人を引っ張って案内するということがこれほど大変だとは。いつもは自分勝手に動けばよかったから余計に辛い。
 だが将来は王になる身。リーダーとしては必要なことだろう。でも今は好き勝手やりたい。部下なんぞ必要ないというのが本音だ。

 ――これ、どうしようかな。

 貰った白い粉……さてどこにしまって置くか。洞穴の部屋に隠すか・。いやしかし、取りに行くのが大変
 城の部屋は……ここはプライバシーもくそもない。自分の部屋だというのに。メイド達がしょっちゅう来て掃除されるわ、片付けられるわ……


 ……ん?そうだ……

 ルビアの部屋に……どうせ仕込むのならまずルビアの部屋に……あの部屋のどこかに。
 夜は十分に更けている。見回りのメイドや兵士が廊下を歩いているぐらいだ。窓から出て、洞穴使ってルビアの執務室に行くのはたやすいこと。

 ――行ってみるか。

 夜の部屋は当然いないはず。住み込みじゃあないんだから。

 よし!――

 窓から外に出る。いつものように。気持ちいい〜ここちよい風が吹いている。この時期はすずしい時が多い。早速部屋へ向かうことにした。洞穴から経由して……善は急げである。





 一方ルビアは新しい屋敷に来て一週間になる。ようやく落ち着いてきたってとこだろう。今日、殿下に会えてとりあえずほっとしたという感じだ。だんなはまだ来ない。向こうの屋敷の手続き等もマグアイヤにまかせている。こういうことはさすが商人、うまくやってくれそうなのだ。
 こっちで雇ったメイドは3人いずれも女……若い。この若いが気になる。
 まあ気持ちわからないでもない

 ――仕方ないわね……もうちょっとおばさんが良かったのだけど。

 いないモノは仕方ない。メイドがいなければ部屋の掃除等も大変だ。うとうとし始めた、いろいろ気疲れしたのだ、なにもかもが初めて……しょうがないだろう。
 今は風呂から上がった状態のルビア。洗い髪が妙に色っぽい。チラッとグラスを見る。ぺろりと舌を軽く出す。
またいつもの癖が始まろうとしていた。


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