「寝不足か?」
 メルティーナ姉上が嫌味たっぷりにポポに問う。

「あ、はい、はい」
 思わず答えるポポ。
「二回も同じことは言わなくてよろしい」
 ちくりと言われる未来の国王。
「……はい」
 朝食を食べながら雑談ではなく嫌味を姉上に言われている。いつもなら聞き流すのだが……

「うふふ、いつもとぼけるのにめずらしいわね」
 サラティーナがちょっと不思議そうに笑う。

「……いや……その」
 寝不足の原因はあの小説だ、しかしそれ以外にももちろんある……

 スープのスプーンをテーブルにこつっと置くポポ。


「ごちそうさま」
 と言って席を立ってしまった。さっさとこの部屋から出て行くポポ。

「姉上がいじめるから……」
 ぽつっとサラティーナメルティーナ姉上を見る。
「別にいじめてはおらぬ」
 メルティーナはいつもどうり平気な顔。


 しかしこのメルティーナも実は……夜は……よなよなメイドに……

 最近ポポはそれはもう気になっていない。
 それどころじゃないだろう、特に昨日からは。


 ポポはゆっくりと部屋に戻っていった。




 部屋に戻る王子。

 もうすぐルビアたちが朝のあいさつに来る。昨日の出来事から一夜明けた日。
 徐々に昨日の想いがポポによみがえってくる。

 


 ――うう、ドキドキ……



 昨日はエッチしてから平気だったポポだが、一夜明けてちょっと緊張気味だ。
 興奮してしまうポポ。目がキョロキョロ状態。それがまたかわいい。

 ――ル……ルビア……どうしてるかな?


 洞窟ではエッチしてから終始ポポがリードしていた。あの状況で他人に悟られないように顔に泥塗るというアイディアもポポだ。

 しかし今は緊張している……というかなんとなく恥ずかしい。
 はじめてエッチした女と翌日出会うというのはなかなか意味深いものがあるのだ。

 経験済みの男がいうのだ、間違い無い。

 
 こつこつと足跡の音がする。みな軍靴を履いているからすぐにわかる。


「おはようございます、殿下」
 ルビアとその一行が入ってきた。

「お、おはよう……」
 ちょっとうつむくポポ。やはり顔をあわせられない。恥ずかしいのだ。
 
 

 とうのルビアは……


 落ち着いている……
 落ち着いているようだ。
 
 が、しかし……ふう〜と軽く息をつく。なんとなくだがルビアもポポに目を合わせずらい。

 (さて……と)
 冷静を装っているルビア。



「今日も一日よろしくお願いします、殿下」
 そう言って側にある自分も座れる椅子に腰掛けた。だが、内心はひやひやだ。

 

 (嫌ね……この雰囲気……)



 ポポも椅子に座ったまま黙り込んでしまった。その様子はあきらかにおかしい。
 でもなぜポポがそういう態度をするかは当事者以外は知らない。

「今日も一日平和ですなあ〜」
 のん気なことを言っているジト。はっきりいってこの任務は退屈だ。
 しかし他の任務より格は上なのだが。

「そうね」
 クリティーナが合わせる。最近ジトと話が合うようになってきた。こちらもはっきりいって消化不良の仕事に飽いている。殿下が襲われた時ははりきっていたが、それからはもう暇だ……

 その横で今日はクライシス外交官が本を読んでいる。こちらもただただ殿下の側に……
 のん気にいてもしようがないと思っているのだ。暇さえあれば勉強だ。
 


 すると殿下が歩いた。

 

 テクテク……テクテク。


 そしてベッドに……ずどん!
 ねそべった。

「暇だ」
 ルビアに微妙に目を合わせないように言う。

「確かに暇ですなあ〜本当に。しかし勝手に外出はいけませんよ」
 ちくりと言うジト。昨日のようなことはかんべんしてもらいたいのだろう。
「わかってるよ」
 ごろっと横になってじっとしているポポ。まだルビアの顔が見れない……

 
 ――だめだ、恥ずかしい……昨日はなんともなかったのに……

 心臓ドキドキ状態だ、自分の心に反して高鳴る心臓の音。
 ポポは今日一日大変なようだ。
 
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