「殿下!」
 ルビアを筆頭に追いかける三人。ところがポポの姿が消えた。

「もう〜逃げられちゃった」
 クリティーナが悔しがる。
「別れて探そう」
 各々別れて逃げた少年を探す大人たち。それを注意深く見ている少年がいた。

 

 ポポだ。

 ――よし、別れたな。

 どうやらルビアを一人にする意図があったようだ。当然探す立場なら別れて探索した方がはやい。


「あっ!」
 ルビアが叫ぶ。ひょっこりポポがわざとらしく顔を物陰から出す。

「こっち、こっち」
 なんとポポは手招きしている。
「殿下!」
 ポポの方へ向かっていくルビア。するとポポが裏門から出て行ってしまった。裏門とはいくつかある表門とは別の城内へ入る入り口のことだ。その中の一つの裏門をポポは抜けていく。後を追いかけるルビア。

「殿下!」
 あたりを見る。

 


 (たしか……ここは)




 目の前の足元には深い堀がある。相当深い。
 二メートル以上はある深さだ。実はこれ、お城の周りにわざと彫ってある。
 こうして決まった出入り口以外から侵入者が入って来れない様にしてあるのだ。表の大城門以外からは通常は普通に入れない。他の入り口は選ばれた人間だけが行き来できるものや、内部から出ようとすると深い堀が目の前にあって事実上外に出にくい様になっている。

 出にくいとは実は、堀には梯子がかかっているものがあり、それを伝っていけば安全に降りて向こう側の堀へ行くことができ、そこから城外へ出られる。普通は使用しないところだ。
 もちろん戦争状態の時や、
敵に攻め込まれた時には堀を行き来する梯子は取り外されるというわけ。

「殿下!」

 殿下をみつけた女軍人。
「こっち、こっち」
 向こう側の堀を登りきったポポ。またもやわざとらしく手招き。
「…………」
 

 ちょっと考えるルビア……



 誘われている……




 しかし追いかけないといけない。他人を呼ぶ暇はない。
 ルビアはポポを追いかけ始めた。





「しかし、なぜ爆発音が……」
「まったくだ」
 兵士の高官クラスと騎士の高官クラスがなにやら話をしている。


 すると……


「宝物庫が、宝物庫が!」
 一人の兵士が叫んできた。
「宝物庫がどうした?」
「金貨が奪われました!」
「なにい?」
 後ろにある宝物の山を見る高官兵士。火を消したあと、一度すべての財宝を出して無事かどうかを確認を行っていた。

「何を言っている、ちゃんとあるではないか」
「違うんです、別の宝物庫が!」
「!!……な、なんだと?」
 兵士達は走り出した。


 こちらの宝物庫の火事と爆発音は……



 囮だったのだ。





 逃げるポポ、追いかける人妻女軍人。

 誘われているルビア。このまえさんざん少年におもちゃにされたおっぱいと身体をゆらしながら。
 
 美乳をゆさゆさと揺らしながらもそれはわかっている。
 でも追いかけるのをやめるわけにはいかない。


 これは勤めだ。


「殿下、お待ちください!」

 逃げる殿下を制止させようとするがもちろん無駄だ。ポポが向かっているのはお城から一キロほど離れたところにある小さな森である。城から正面の大城門は城下町に向かって大きな道があるが、その反対方向は大草原や小さな森がひろがっている。基本的に人は住んではいない。たまに老人がひなたぼっこや、薬草取りに来るくらいだ。
 

 あとカップルがよなよな……である。

 ここを駆けて行くポポ。


 意図ありありの行動……ルビアは走りながら心構えだけはしていた。さてどうやってうまく穏便に何もせずに……と。

 ポポが森に入っていく。くるっとルビアが来ているか振り向くポポ。

 


 ――きてる、きてる。

 ちょっとクスッと笑う。そして再び前を向く、その先あるのは……




 教会……別名無人教会といわれているところである。

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