「始めまして、ランカと言います」
「……うむ」
 神妙に頭を下げる女軍人に答えるブルック。ランカと言う女軍人と部下の男が二人。それとブルックと側近の男一人。これが今この部屋にいる人数だ。

「早速ですが……森の中にお嬢様が行方不明とか」
「そうじゃ、普通ならそういうことはありえん」
 言い切るブルック。そのとおりだった。今までならこんなことはなかったのだ。

「原因は……私達が突き止めます」
「なぜ君たちが動く?」
 老人がスラッとした長身で長い髪を持つランカに聞き返す。


 
 ダークエルフの女軍人 ランカ……今回の事件を捜索しているということらしいが……



「……それは……」
「ダークエルフの者のしわざか? それでか?」
 尋問のようなブルックの言い方。

「ええ……」
 聞かれたくないようだ。ランカは。

「そうか……ではよろしく頼む、一刻も助け出してほしいのじゃ」
「わかりました、ただしばらお時間を頂きたいと思います」
「……そなた達でも簡単には捕まらないというわけじゃな?」
 するどい指摘だ。何か心当たりのあるブルック。

「……申し訳ありません、それにはお答えできませんので」
 再度頭を下げる女軍人。ブルックはそれ以上問い詰めはしなかった。

 そして三人は早速森へ向かったのである。100名ほどの兵士を率いて……




「100名ほどの数のようです、統治長も驚いておられたとか」
「ううむ……やはりな」
 考え込む老人ブルック。100名も連れてくるというのはただごとではない。

 しかし……

「どういうことでしょう? 犯罪者数名にこれほどの数を……しかも軍人ですよ?」
「だいたい検討はついておる、あの者たちは聞かれたくなかったのであろう」
「……聞かれたく……ないと申されますと?」
 横にいる側近の男が尋ねる。すると老人は側の椅子に腰掛けた。

「森の中にいるダークエルフはただの犯罪者ではない」
「…………」
「おそらく……エルフの国の威信に関わることのはずじゃ」
 娘も心配なブルック。妻にも先立たれ娘の成長だけが人生の目的にもなっていた老人。

 しかしこの老人はこの町でも有力な貴族の一人。
 政治的にどうしても考えてしまうのだ。

「時間がかかると言っていたな、あの女軍人さんは」
「はい」
 側近が答えた。


 ――まさか……だとすれば……あの者たちでも到底無理じゃ。どうするつもりなのか?

 面倒な事になった……娘も、マレイアスもセイキンも心配じゃ。じゃがどうすることも出来ん。

 人間では……
 まゆを哀しそうにひそめるブルックだった。
 

 
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