マレイアスが陵辱されている。セイキンはもちろん知っている。 ――畜生! 牢屋のようなところでじっとしているセイキン。何も出来ないふがいなさが辛く心に当たる。 そこに先住民のエルフがやってきた。リックだ。 「リック!」 「……すまない……」 頭を下げるリック。 「お嬢様は?」 「無事だよ、眠っている」 「手を出していないんだな?」 一番聞きたいのはこれだ。 「大丈夫、サルンはお嬢様には興味がない」 「そうか……」 少しほっとしている……これでお嬢様に何かあれば何のために騎士になったかわからない。 もっとも見習いだが。 「……本当にすまない……あいつらのせいで」 「仕方ない……君は悪くない」 擁護するセイキン。 「実は少しだけいい知らせを持ってきた」 「……?」 「ダークエルフの軍が来ているらしい」 「軍?」 問いかけるセイキン。 「うん、さっきミックが外の様子の異変に気づいて見てきたらしいんだ」 「じゃあ……」 少し期待感がわくセイキン。 「ただ……まだ時間がかかると思う」 「なぜだ? 軍が出てきたら後は……もしかして俺達が人質のようになっているのか?」 ちょっと黙っているリック。そしてぽつりとこう言った。 「あのサルンというダークエルフ……ただのダークエルフじゃない」 「なに?」 ただのダークエルフじゃない? 「あいつは多分……」 その時後ろから声が…… 「そう……僕はただのダークエルフじゃないよ」 にこりと笑っているサルンがそこにいた。 「きさま!」 「ふふ、威勢がいいね。セイキン君」 にこっと笑うサルン。チラッとリックを見る……。 「リック、君たちはもういなくてもいいよ、ここを放棄したまえ」 「なんだと!」 振りむいて睨むリック。 先住民に出て行けとは…… 「僕はここに居座るつもりだ。もう鬼ごっこは飽きた」 「…………」 鬼ごっこ? 「セイキン、君はいずれ逃がしてあげるよ、お嬢様と一緒にね」 「おい! マレイアスは!」 怒鳴りつけるセイキン。 「彼女は僕の虜になるんだ」 「ふざけるな!」 叫ぶセイキン……だがむなしいだけだ。 「ちょっと思考があってね、今は君たちには居てもらった方がいい」 「もうすぐおまえは捕まるんだ!」 負けず嫌いのセイキンの声。 「ふふふ、君は知らないだけだ、僕を捕まえようとするなら……あいつらでは無理だよ、 ……やるなら別の方法で相打ち覚悟しかない」 「…………」 黙って聞いているリック。リックにはもうわかっていた、種族は違うが同じエルフだ。 あの兵士達が来たところでサルンは捕まらない…… 「ところでちょっと聞きたいのだけど、長身の女軍人がいなかったかミックに聞いてくれないか?」 「…………」 少し顔色が変わるリック。女軍人が率いているという情報はミックから聞いていたからだ。 「そう……やっぱりね。彼女は僕の思考回路がよくわかるようだね」 ――そうか……ランカ……君もしつこいね……命令とはいえ…… だったら僕もしつこくしてあげよう…… 「さて……夜が楽しみだな……あの女騎士の身体がね」 サルンの目がちょっと光る…… 何かを考えているサルン……不適な目だ。 それを睨むセイキン。リックは下を向いているだけ…… それぞれの思惑が交錯していた。 |
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