連れて行かれた先は洞窟の奥……奥……奥。
 火がともされている洞窟。どんどん奥に進んでいく。際限ない不気味な洞窟だ。
 こけが、黒い壁、岩が、それをさらに惹きたてている。これから何をされるというのだろうか?
 二人は何か儀式のような所に連れて行かれた。拘束状態のまま。
「離せ!離せって!」
「みんなは呼んだ?」
「う、うん」
 少年エルフであるミックが仲間を呼んだらしい。10人ほどがやって来た。
「おい、見ろ、人間だぞ、こいつらが森を壊しているんだ。」
「ね、ねえ〜やめようよ」
 ミックがサルンに言う。他の少年エルフも乗り気ではない。
 やる気満々なのはダークエルフと呼ばれる者達だけだ。
「馬鹿いうな、お前らこのままでいいのかよ、俺らがなんでここに来ているか知っているだろう」
「…………」
 黙っているミック。

「おい!離せって!」
 マレイアスがまだ反抗している。反抗的な声もまたいい。身体をなんとかしようと動かすが触手が締め付けているのでなんともならない。ショートカットの髪が小刻みに揺れる。
「お前らは俺達の場所を奪ったんだ、当然のむくいだ!」
「な、なに?」
 聞き返すマレイアス。だが、なんとなく意味はわかっている。
「森や自然を壊すお前達を許すつもりはもうない!」
「…………」
 黙って聞いているマレイアスとセイキン。
 確かに昔はエルフと人間は共に一緒に助け合って生きてきた。
 しかし、最近は一方的に各地のエルフは追い出されているのだ。
「お前達……ダークエルフだな」
 女騎士がキッと睨む。マレイアスは知っている。ダークエルフが何をしているかを。
「そうだよ、各地で人間達を苦しめているのさ、特に女をね」
 スッとマレイアスに駆け寄るサルン。
「君はなぶりがいがありそうだ」
 マレイアスを見てニッと笑うサルン。
「なんだと!」
 強気に言い返すマレイアス。するとまたサルンはちょっとマレイアスから離れた。そして触手の拘束が緩む。

 ――あっ!

 ガバット起き上がり剣を持ち飛び掛ろうとするマレイアス。自由になったのだ、もちろん襲い掛かろうとする!

 とその前に!

 ――ガシャーン!――

 十本の鉄格子が前を塞いだ。


 後ろは壁。つまり行き止まり。



「しばらくここで反省するんだな」
「くそ! 出せ!出せってば!」
 怒鳴るマレイアス。強気な一面が出ている。
「お仕置き素直に受けますっていったら出してあげるよ」
 にこっとサルンが笑う。不適で危険な笑顔だ。
「ふざけるな!」
 もう一度怒鳴るマレイアス。サルンを睨みつける。
「こっちは人質がいるんだ、そのうちうんと言わないといけなくなる、でも僕はやさしからね、君達が言うまで待ってあげるよ」
 にやにやしているサルン。結構きれいな顔立ちをしているサルンだが笑うとよけいに不気味だ。
「おい! ただじゃ済まないぞ! こんな事をして!」
「ただじゃ済まないのはどっちかな? もうすぐわかるよ、それじゃあおやすみ」
 そう言うとサルン達ダークエルフは洞窟の奥に消えていってしまった。
 後はマレイアスとセイキン、地元のエルフ達だけ。

「…………」
 何か言いたそうなミックとその他の地元の少年エルフ。

「ごめんね、マレイアス。僕は何もしてあげられない……ただ、残虐な事はしないから……安心して」
「……そういう問題じゃない」
 どうやらマレイアスはミックとは知り合いのようだ。
「困りましたね」
 途方に暮れるセイキン。ちょっと覚悟はしていた、なぜならエルフの方が本気を出せば強いからだ。 術を使われたら勝ち目はほとんどない。まあ、わかっていてきたのだが……。
「と、とにかく今日はおやすみなさい」
 ぺこっと頭を下げるミックとその他のエルフ。
「お、おい、お嬢様は無事なんだろうな?」
「うん、大丈夫だよ、元気にしてる」
 ちょっと悲しそうな目でマレイアスを見るミック。
「そうか……わかった」
 仕方がないという表情でミックを見る。ミック達も洞窟の奥に消えていった。

「なんか、一部のダークエルフが勢力増しているいるというのは本当だったのですね」
 セイキンがマレイアスに問いかける。
「勢力が増すというより、追いやられたと言った方がいいだろうな、あいつらエルフの中でも性悪らしいとか」
 一部のダークエルフに対して人間はことごとく追放しようとしている。もはや犯罪者扱いなのだ。
 そのため各地で逃げ回っている。しかし元はといえば人間にも問題がある。
 言い換えればどっかの超大国とどっかの異文化の国の戦争だ。
「どうします?」
 セイキンが聞き返す。
「このまま、返してもらうまで待とう」
「でも……あいつらお仕置きとか……」
「気にするな脅しだ」
 強気のマレイアス。諦めたのかゴロッと寝てしまった。そのまま眠り込む。さすがといおうか余裕といおうか……。
 
 ――真似出来ないよなあ〜

 こういう態度出来るだけでもさすがと見ているセイキン。自分も一緒にねっころがる。
 もうすやすや寝ているマレイアス。寝顔もなかなかいい。ショートカットが似合う勝気な顔。それをチラチラと見る見習い騎士。

 (二人っきりだ)



 ちょっと微笑むセイキン。マレイアスは強い、綺麗、そしてエロチック……身体を見ればすごさがわかる
 といっても今は鎧に身を包んでいるからわからないが、セイキンは見たことがある。

 


 そう……風呂場で。



 覗きだ……
 (あれはドキドキものだったよなあ〜)
 昔を思い出しているセイキン。あの美乳が……あの美乳の形が忘れられない。
 マレイアスにひそかな憧れをいだいている少年騎士。

 (飽きない……マレイアスの顔。いくら見ても飽きないよ)

 これがセイキンの正直な気持ち。

 そのままセイキンも眠りについた。今はどうしようもないからだ。
 しかし、この二人の予想とは違い、ダークエルフ達の怒りはかなり来ていたのだった。


BACK NEXT TOP