エルディーニをサッと見るミレーユ。エルディーニがちょっと困った顔をする。その顔は少年のあどけなさが残っているような顔だった。 「おひさしぶりね、みなさん。そして、エルディーニ」 しっかりとエルディーニをみつめる女領主。人妻というようなタイプのミレーユ。年は間違いなく、エルディーニよりも上だろう。豊満タイプの肉体は、大人の女の色気がプンプンしているのだ。ロングドレスのスリットが魅力をかきたてている。 「早速でございますが……」 ラブゼンが事の詳細を話始める。それでもこの女性は、エルディーニをみつめている。相当お気に入りのようだ。 しかし、話の中心になると目つきが変わった。 「……なんと……まあ〜」 いつもにこやかなミレーユもこの話には驚いた。サルディーニはサルン……そしてそのサルンはもはや手に負えない状況にあるというのだ。回りにいる少年達もみな驚く。 「それで、宝物庫になにか役に立つのがあるかもしれぬと……見たいと申すのじゃな?」 「はい!」 「わかった」 と、そこまではよかったのだが。 「ただし、条件がある」 「は?」 「エルディーニと二人で話がある。そこでエルディーニ、そなたが条件を呑むなら考えてもよい」 「…………わかりました」 サッと返事したラブゼン。困るのはエルディーニ。女領主は笑っている。 ということで、邪魔者である、他の王子、王女、少年達は早速退場。二人っきりになった。 「元気にしていたか?」 「は、はい……」 「うふふ」 無邪気に笑うお姉さんというタイプだ。ちらっと足を組み替えた。正式な将来の王を挑発する。 「ラゼはいないようだけど」 「……ええ、外させています」 ラゼは捕らわれているとはまだ言っていない。やはり王族が捕まったというのは、外部には 言いたくないようだ。 「ふ〜ん、そう……」 そういうと魅力的な身体を近づけながらミレーユが近づく。ちょっと顔が赤いエルディーニ。彼女とは昔、特別な関係があった。 「私を昔のように……思いっきり満たせてくれたら……それが条件よ」 未来の王のあごをそっと撫でるミレーユ。ミレーユは、ラゼが婚約者に決まる前、エルディーニとは関係があった。三角関係だったのだ、この三人。 実は、サルディーニが王につけば、ミレーユとの結婚話もあった。ところが、サルディーニが後を継がない方向になると、状況が変わり、結局ラゼが婚約者になったらしい。 「……わかりました」 素直に返事した王子。 「あら、やけに素直じゃない、いつもはわがままな癖に」 「わ、わがままなのはあなたの方でしょう〜僕がどれほど困ったのか……んんっ!」 いきなりキスされた! 積極的なお姉さんだ。 「私はわがままじゃないわよ! プイ!」 と言って顔を横に向けた。 かわいい〜なんというかわいいお姉さんだ。なるほどこういう性格らしい。 ――また始まった…… 困るエルディーニ。実は、このお姉さんには、散々振り回されっぱなしなのだ。 「わ、わかりました、わかりましたから。では早速案内してくれませんか?」 「どこに?」 ん? って言うような顔でエルディーニをみつめる。 「どこにって……宝物庫のあるところにです」 「なに言ってるの、するのが先よ」 「ええ?」 てっきり、まず宝物庫に案内してくれると思った王子。この緊急事態の状況をミレーユはわかってくれないらしい。 「別にした後でもいいじゃな〜い」 甘えた声で言う。これにだまされる少年や青年は多そうだ。 「あ、あのですね、今の状況をわかって……」 「今すぐしてくれなきゃいや!」 またプイッと横を向く。 かわいい〜 ――な、なんて……ううっ…… あきらめたエルディーニ。言うとおりにすることにした。 ――ラゼ……すまない。 エルディーニは心の中で謝罪した。 |
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