数字と文字をあわせていく…… 根気のいる作業だ。しかし、並べいくうちに恐ろしい結果が出始めていた…… 「ミレーユ……さん、これは……」 「……全部揃えてからにして……私も驚いているの」 二人はすべての作業が終わるまで、黙ることにした。 そして…… 二時間ぐらいたっただろうか? 王子の目は、恐怖におののいていた。女領主の顔は、結構落ち着いていたが…… 「うそだ! これは嘘だ!」 「……多分、これが真実よ」 「こんな! こんな馬鹿な!――――――」 大声をあげるエルディーニ! 認めたくない結果がありありと出たのだ。ミレーユもさすがに信じられなかった。 「創始者エルデンが、邪悪な神と一緒に、ダークエルフと人間を襲った? そんなことありえるものか!――」 書かれている内容はこうだった。 創始者エルデンの真の姿は、悪魔である。 邪悪な神と手を組み、エルフの女たちを襲い、人間の男を殺しまくり、女たちを凌辱した。 よって、これを神聖エルフの剣で刺し殺したと…… 「おおおおおおっ!――――――」 頭を抱えて倒れこむ王子! あまりにショックな結末……エルデンは……創始者エルデンは、この国の危機を救った英雄のはずなのだ。今まで王族エルフや貴族、民達が習ってきたのはそうであった。 王城に掲げられている彫刻……みなに慕われているエルデンの姿。 エルデンの顔を利用して、作られたコインもあれば、エルデンが作ったという学校もある。 エルデン功績をたたえる専用の屋敷まであるのだ。そこには笑顔で民に語りかけ、やさしい表情をしたエルデンの姿があるのだ。 この国には、どこに言ってもエルデンだらけだ。それに関係する祭りもいっぱいある。 人々の窮地を救い、争いをうまくまとめあげ、平和な世を創りあげたとされる英雄エルデン…… 「ううっ……う……うわああああああああっ!――――」 あまりのことに泣き出したエルディーニ。エルディーニのエルもエルデンから取ったのだ。 エルディーニも英雄エルデンをもちろん慕っていた。その子孫が彼ら王族なのだから。 この記述が本当なら、エルディーニたちは、鬼畜な悪魔の子孫ということになる…… 「なるほど……だから……この宝物庫を……」 ミレーユは思った。この宝物庫は、この自治区の命だといわれてきたのだ。代々の領主は、絶対必要な時以外にここを覗けば、悪魔が舞い降りるという言い伝えがあると…… そう言って誰もここを開けようとはしなかった。たまに開けたものもいるようだが、このほこりだらけの状況では、見る気もしないだろう。 守るはずである。ここの秘密を…… ――でも……どうして、処分しなかったのかしら…… ――それとも……ここがあるから……逆に自治区が認められた? 考えるミレーユ。 エルデンを倒した後に、何があったと思う。しかし、今はもうわからないだろう。そこまでは書かれていない。一方泣きじゃくる王子。こんな残酷な結末を迎えるとは…… さらにここには、こうも書かれてある。 邪悪な神をも飲み込みし、その悪魔のエルフは、その力さえ利用し始めた。 天上に向かおうとしたのだ。おろかにも、天空の神々まで襲い始めた。 天空の最高位、天空神王の后の女神さえもモノにしようとした……と。 ついに天空神王、神々の怒りを買い、神聖エルフの剣が、与えられる。それを使った人物によって刺し殺されたと書かれてある。 これで裏づけは終わった。間違いなく、サルンはこの神聖エルフの剣で刺し殺せる。方法もわかっている。心臓と頭を刺せばそれでよい。 だが…… 問題は……どうやって……近づくか…… あの悪魔のような力になりつつあるサルンに、近づいて剣を刺せる人物などもういない。 ――う〜ん、弱点とかないのかしら? それにコレ…… 最後にまた番号がある。 邪悪なエルデンを倒した人物は、ここに記した。後世のために。 345−6985−98765に刻む……と つまり、ここにさらに何か秘密があるという意味だ。さっそく探すミレーユ。エルディーニはしばらく駄目だろう。ショックでそれどころじゃない。 ところが、問題が起こった。書物がない。この番号の書物がないのだ。 「困ったわ……」 書物がないんじゃどうしようもない。 考えるミレーユ…… ――ん? 刻む? それって…… 刻むとは、彫刻などに刻むという意味もある。 さっそく、財宝関係を調べることに。すると、ようやくエルディーニが起き上がった。 「すみません、取り乱して」 「いいのよ、それより、一緒に探してちょうだい」 膨大にある彫刻や、財宝。ペンダントから、ルビー、ダイヤ、王冠のようなものまである。 エルディーニも事情を教えてもらって探し始めた。 |
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