加速度のように巨大化する黒い玉。人間の女騎士を倒すのには十分すぎる大きさだ。無駄すぎる巨大なエネルギーの塊が天高くそびえている! かなり時間をかけている。プライドを賭けた一撃のようだ。 「君には失望したよ、マレイアス」 もう后と言う言葉は使わない。 「なに?」 失望という言葉が気に障る。 「君は目ざわりだ。消えたまえ」 不必要になったとたんにこの言葉だ。性格がよくでている。片手を優雅にあげるサルン。そのしぐさはダークエルフの王にふさわしい。 気を入れるマレイアス。今の女騎士に出来る事はこれだけだ。 「さようなら……わが后よ!!――」 般若のような顔に一瞬なる少年。次の瞬間、黒い玉は、一気にマレイアスを飲み込んでいった…… 「な、なに!――」 ラゼが叫ぶ! 「みんな、守れ!――」 ラブゼンが防御するように叫ぶ! ラゼがエルディーニに飛びついた! 「きゃあああああああああああっ!――――」 洞窟に逃げ込むランカとミシェルンたち! 恨みを込めた黒い玉が、地面に激突するようにぶつかってきた! 黒い彗星のように、うなりをあげて地面に激突する! その瞬間、周りの木々が粉々に砕け散る! 次にすさまじい爆風が、辺りを走り回り、駆け回る! そして、きのこ雲のように広がった…… 「ううううっ……」 あまりの衝撃にうめくラゼ。エルディーニは放心状態だ。この状況でも気が戻らない。もはや、ショックで動けないようだ。 ドーンッという音の後…… 少しずつ煙が消えていく。 ――な…… ラゼが周りを見る。爆風でめちゃくちゃになった森。相当な広範囲にわたっているようだ。黒い霧があたり一面に帯びている。 嫌なにおいもする。焦げた匂いだ。どうやら木が燃えているらしい。 サルディーニが降りてきた…… 「ラゼ、僕の后になれ」 「なにいいい?」 いきなり今度はラゼに言う。マレイアスがいなくなったので、第二の后から昇格させるらしい。なんとも身勝手な少年だ。 「なれといっている。拒否するなら、エルディーニは殺す」 「き、きさま……恥を知れ!――」 「そんなものを知る必要はない、僕には不必要だ」 ゆっくりとラゼに近づくサルン。立ち上がり構えるラゼ。だが、戦っても勝ち目はない。あれだけのエネルギーを使ってもサルンはびくともしない。だが、傷は癒えていない。エルフの剣にやられた箇所だけは、今でも再生できていない。 乙女がにらむ……強気乙女が。そのにらみに笑って返すサルディーニ。 その時だった…… サルンが何かを感じた…… 「ま……まさ……か……?」 その気配とはまぎれもなくマレイアスの気配だった。 |
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