昼休みの見回り……
 簡単に言えば、生徒の行動チェックである。今日はお弁当だった翔子。
 さっさと済ませて見回りをしている。といっても、本気ではないが。

 持ってきてはいけない本などを見つけたら没収できるのが風紀委員。が、実際本気でやる人はほとんどいない。それでも、風紀委員の腕章をつけていると、検察官のような気分になる。

 ――なかなか……気分がいいわね。

 どうやら人を監視するのは翔子にはお似合いのようだ。
 腕章をつけて闊歩するお嬢様。
 すると向こうから森野 欄があらわれた。三人いる。
 横にいる二人は風紀委員の娘。いずれも二回生。

 他の二人は、別行動に出たようだ。一人になった瞬間、翔子と目が合った。

「ごくろうさま」
 さりげなく言う森野 欄。その欄に……

「なっ!――」
 いきなり驚く森野 欄。

 翔子が突然顔を近づけてきたのだ!


 ――な、なに?

 一瞬おどろく、そして……

 欄の顔が赤くなる。その表情を見逃さないサド娘。

 ――やっぱり……

「な、なによ!」
 焦っている! 焦っている森野 欄。こんなことをいきなりされたら誰でも焦る。
 が、このほほの赤らみは……

「教えてほしいのよ」
「え?」
 顔を近づけられたまま言う翔子。

「そして話し合いましょう」
「…………え?」
 今度は驚く森野 欄。短い髪がビクッとうごめく。
 両肩をそっと抱かれる。今、この廊下には他に誰もいない。

「私とあなたの役割分担とか必要でしょ」
 今度は微笑む翔子。その微笑に目をそらす……

 ――ふふふ……
 やっぱりね〜という翔子の表情。
 すると、翔子が欄のほほに手をあてた。そして正面を向かせる……

「今日、放課後……生徒会の風紀委員室に来て……」
「な、なにっ?…………」
「今日は誰も来ないでしょ」
 目をじっと見つめる。金縛りにあったようになったのは、森野 欄だった。
 こんなことをされたのは初めて……

 いや……それを……否定できない……


「じゃあね。待ってるわよ」
 そう言うと翔子はお尻を振りながら、この廊下を後にしたのだった……



 これは罠だ。
 すぐにそう察知した森野 欄。

 が、その罠から逃げられない……
 それが森野 欄……なのだ。

 ドキドキ感が止まらない二回生の副委員長。平気であんなことをした如月翔子に……
 あっけらかんという表情で……行動を起こした翔子に……

 何かを感じている……授業中でも、そのドキドキが止まらない。
 術中にはまっているのはたしか。が、逃げる気がしないのだ。

 ――いや……だめよ。
 心に言い聞かせる。何もびびることはない。逆に立場をわきまえろと言えばいいのだ。

 が、その心は……


 もう、心の準備は違う方向でできていたのだ。
 その心を翔子は見抜いていた……

 あっという間に放課後が迫る。



 とうとう……
 とうとう来てしまった……

 放課後。

 生徒会は、何もない日は誰も来ない。
 すべてが独立しているので、他の委員のことには誰もノータッチだ。
 例外は執行部長から会長クラスの人ぐらい。

 誰もいない風紀委員室に入る森野 欄。薄暗い教室で、短い髪型が小刻みに震えている。
 高揚感が高まる。いったい何に高まるというのか……


 ――いない……
 まだ来ていないようだ、翔子は。

 ――言ってやるわ……思いっきり……
 私が上と言うことを言い聞かせるつもりらしい。
 しかし、こんな状況では、いつ、罠に嵌められると思わないのだろうか?
 いや、思っていても……もう……


「来てくれたのね」
 スッと翔子が入ってきた……うふふと笑う表情。

「な、何を話し合うの?」
 両手で胸の辺りに手を近づける。ガードの姿勢だ。防御の姿勢だ。
 しかし、危険と思うならなぜここにきた?……

「今後のことよ」
 無造作に近づく翔子。微笑みながらたくらんでいる。
「近づかないで!」
 身体が危険信号を出している。

 が、無視……それを無視のお嬢様。

「近づかないと……お話できないでしょう?」
 無視して近づく翔子に胸が高まる。今までこういう扱いをされたことがないのだ。

 そして……こういう扱いを……

 待っていた……

 とうとう目に前にきた如月翔子。逃げようとしない 欄。
 文句を言えるところまできた。目の前だ。が、言葉がでない。

 クイッと制服に覆われたおっぱいを前面に出す。


「役割を確認するためには……お互いがわかりあえないといけないわ」
 さらに近づく……もはや禁断の匂いがプンプン。
 が、逃げない 欄。もう逃げようがない。

「だ、だめよ……」
 目が金縛りにあっている。
「何がダメなの?」
 そう言ってほほを触る。
「あっ……」
 両方の頬を触られた。二回生の風紀副委員長がもう一人の二回生の風紀副委員長に……


 虜にされていく……


 次の瞬間……如月翔子はやさしくキスをしたのだった……
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