転校生

キキ−ッ…… 大きな車が校門の前で止まった。リムジンタイプの黒塗りの車だ。運転しているのは、もちろん所有者ではあるまい。止まった車の中から運転手がすぐさま降りて後部座席のドアを開ける。 　――あら……今風じゃないのね。 　へえ〜……なるほど。 　ちょっとだけ辺りを見回すロング髪の女の子。なかなかの顔立ちをしている。スーっと流れるような眼。流し目が妙に似合うタイプ。気はまちがいなく強いタイプだろう。見下している雰囲気が常に匂う。 　さすがは名家や資産家のお嬢様達が多いと言われる学校のことだけはある。校門をみただけでも普通の学校の門とはあきらかに違う。明治や大正を偲ばせる作りだ。 　きれいなコンクリートで手入れが行き届いている感じは全くない。しかしその汚れ方は芸術的に見える。 　おそらくわざとだろう。 　通学途中の女生徒がたくさんいる。ちらちらと車を見てはいるがそんなにびっくりはしていないようだ。こんな豪華な車が止まっていても他の生徒たちは全然驚いていない。 　そう、これぐらいはこの学園では当たり前。他にもこれ以上の高級車がぞろぞろ止まっているのだ。みなお金持ちが多いらしい。 　――ふ〜ん……なかなか楽しいかもね。前の学校はたいくつだったし…… 　正直珍しがられるのが嫌だった。 　――ここなら私は特別じゃないみたい……でも……。 　それはそれで気に入らないわね―― 　翔子の困った性格が始まった。常にトップでなければ気がすまないという性格。もちろん美しさにかけても例外は認めないのだ。この世に自分よりも美しいということは許されない。 　たとえ、人間でなくてもモノであっても。なるほど確かに容姿はすばらしい。鼻筋、唇の形、胸のふくらみ、スカートから見え隠れするふともものチラリズム。どれをとっても最高クラスかもしれない。 　ただ全体的にきつい印象を受ける。まあ本人はそんな印象など気にも留めていない様子だが。 「ではお嬢様、校長室へ向かいますので」 「ええ、案内してちょうだい」 　横にいた老人と共に翔子は学園内に入っていった。

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