リモコンの光景 |
あれから三日後。 今日は体育の授業がある。内容はテニスだ。 テニス部顧問である桐生時枝が、第3運動場に翔子達と一緒にいる。 みなテニスウェアがまぶしい。やはりミニスカートタイプはグッと来る。 よく似合っている生徒たち。全員が素振りの練習を始めた。 一際目立つのが翔子の足だ。美しい足がすらりと伸びているが、他の追従を許さないふともも、足首。 私以外に超えるものはないと象徴しているかのようである。 それがまた優実にとって鼻につくのだろう。いい気分ではない優実。 ――あの顔が嫌なのよねえ〜冷静ぶっちゃって。 いらいらが募る優実。もう噂も立ち始めていた。 優実の性格をよく知る生徒たちは、いつかは爆発すると思っている。 そして、優実の怖さをよく知っているのだ。 だが、そんなこと意に介しない翔子お嬢様。 無敵のお嬢様は、王道を突き進むのみ。 「かおり、いつか、あの二人……ぶつかるかもよ」 「関係ないけどね〜どうなろうと」 「もう〜優実がトラブルメーカーってことは知ってるでしょう?」 有機香の横にいた生徒が問い掛ける。 「だから?いつも言ってるジャン! ほっとけばいいのよ」 香も、優実のわがままには言いたいこともある。日直当番や掃除当番も、勝手に順番を変えたりするのは、優実の得意とする所だ。 だが、注意したモノはだいたい嫌な目に合っている。 香も昔揉めた事があった。最後には3回生の三毛亜津子まで出てきて結構やりあったのだ。 もう昔のことだが……香には手を出さなかった亜津子。 というか、亜津子もやりずらかったのかもしれない。 ならば、翔子はどうか…… だが、教師である時枝先生は別だった。餌食にされた時枝先生。時枝の顔が赤い。 生徒達の素振りを見ている時枝。しかしなんとなく落ち着かない。 下半身が微妙に気になるらしい。 ――はあ〜物足りない。 穴の奥にしっかりと埋め込まれたバイブが、弱い振動を断続的に与え続ける。ふとももの奥からは、特有の匂いが出ている。だが生徒達が素振りをしている所からは匂いはわからない。 何事もないように時枝は振舞っていた。 そんな時枝をちらちらと見る優実。 ――ふふ、いい気持ち見たいね。後でじっくり見せて貰おうかな。 どうやら優実が仕込んだモノらしい。そして篤の見たものとはこれだったのだ。 テニスを教えるのは男子部でも時枝が教えることがある。 その時、時枝の表情に疑問を思った篤は、亜津子先輩、優実、時枝の関係を知った。 「一、二、一、二!」 素振りをする音が辺りに響く。ゆっくりと時枝が、歩きながら生徒たちを見る。 股間にあるモノを肉体はかみしめるように。 もうかなり慣れているのだろう、この程度では物足りないらしい。 ――もっと……強い刺激を……やだ、なに言ってるのわたし。授業中よ……いまは。 授業として教えることは、たまにしかない時枝。 そのたまにが、今や最高の背徳のシチュエーションになっていた。 ――なにかされてるわね、絶対あれは。 翔子は着替えながら思っていた。優実のあの態度見ていてもわかる。ちらちらと時枝を見るあの態度が、時枝先生をいたずらしていますと言っている。 だがなぜか噂にならない。 まるで……当たり前のような感じでもある。 生徒たちはロッカーでの着替えが終わって、教室にむかい始めた。 翔子も着替えが終わり3人で雑談しながら教室にむかっている。 ――あっ!し……翔子さん! 乙女チックな世界にでもはまっているような女の子が、一人こっちを見ている。 如月舞だ。 翔子達が着替えたロッカーからは、この1回生のクラスの廊下を通って行くのが速い。 ぞろぞろと2回生3組の生徒が歩いていく。 「あら、舞、あなたこのクラス?」 「あっ、はいそうです」 舞は感激している。 「今日は来るの?」 「あ、はい」 「そう、じゃあ放課後また会いましょう」 「はい」 うるうるとした目。少女漫画の世界のような雰囲気だ。 「あの子、相当まいってるわね、翔子に」 「そう?私は普通と思うけど」 冷静に返事。 「翔子っていつも冷静よね、ほんと」 「ふふ、あなたには負けるわよ」 横にいる二人ににこりと笑う。 ――舞ちゃん……ほんと、私にぞっこんみたいね。今日あたり近づいてみようかな。 翔子はそう思いながら、次の授業へ向かっていった。 |
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