放課後

 テニス部に入るために翔子は、テニス部の顧問室に向かう。

 静かに満ちた雰囲気。

 すこし怖くも感じる。この学校は体育館がいくつもある。スポーツも盛んだ。
 運動場や、サッカー場、野球場といたれりつくせりの広さを持っている。
 その一つが第二体育館と呼ばれる所。ここはバレーボール部とテニス部が使う。
 雨が降ったときにテニス部は使用しているところだ。
 テニス部の顧問室はその第二体育館にあった。

 ――コンコンコンッ。
 手持ちのスポーツバッグを片手に戸をノックする翔子。

「あ、はい」
 女の声が聞こえる。
「失礼します」
「あら……新入部員の方?」
「ええ、テニス部に入りたいと思うのですが」
「うれしいわ」
 ニコッと微笑む女性。この女性の名は桐生時枝。28歳の女教師。と、いっても、授業は教えない。
 テニスの顧問だけ務めている。野球の監督だけというようなものだ。
 普通は勉学も教えて……という感じが一般的かもしれないがここは違う。
 すべてにおいて専門だけをする教師も多い。

「じゃあ入部の手続きするわね」
「あ、はい」
 と言いかけたときだ。突然ガラッーと戸が開いた。

「如月翔子さんね」
 スラーッと足の長くて綺麗な女性が一人立っている。その横には、あのあどけない顔の丸山優実と、もう一人の女子部員がいた。
「あ!きてくれたんだ、優実うれしい」
 感に触る声。

 少なくとも翔子は好きになれない女の子一人だろう。
 その気にいらない声の持ち主の横にいる、すらりと長い足をもつ美しい女。
 テニス部のウェアがいっそう美しさ、エロスを際立たせている。

 ――あつこ先輩……この人? 優実が言っていたのは……――

 翔子はピンときた。横にいる優実の態度がそう言っているのだ。
「はじめまして如月さん、私、3回生の三毛亜津子と申します」
 きりっとした態度……優雅な落ち着き、すごみもある。
 
 ライバルには不足はない。上級生だろうが、関係ない翔子。

「よろしく亜津子さん」
 冷静に見つめる翔子。
 顔、首筋、胸、腰、足……順に見つめていく。

 ――ふ〜んなかなかのスタイルね――

 だが自分より上とは絶対に認めない。それが翔子だ。

「じゃあ早速着替えて来てください。テストしますから」
「テスト?」
「そうよ如月さん、あなたが入部するにふさわしいか、私がじきじきにテストしてあげる」
「そう、わかりました」
 じっと亜津子を見つめる翔子。その横で優実が笑っている。

 ――嫌な性格だとおもったけど……やっぱりね。いずれ……コテンパンにしてあげるわ。

「じゃあ優実、ロッカーに案内しなさい」
「はい、お姉さま、翔子こっちよ」
 翔子は軽く先生に一礼した。

 ――面白いわね、まるで仕切ってるのは先生じゃないみたい。

 翔子と優実はロッカーへ向かっていった。



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