にこにことダルマのような顔がにこやかな笑顔でメイドさんたちを見ている。

「う〜む〜いつもながら絶景じゃ」
 自分で主催した晩餐会を自分で楽しんでいる。首を左右に揺らしながらメイドたちの美しい姿を楽しんでいる。横には数人の側近がいるが、毎回毎回のことなのでもう慣れているようだ。

 しかし、その中で一番若い少年は別のようだ。どうも腑に落ちない様子。

「どうした?」
 ミツアーウェルがなにやら納得の行かない側近の少年に声をかける。
「あ、……いえ」
「ふふ、なんでこんなことをするのかという顔をしておるぞ」
 にっこり笑うミツアーウェル、結構憎めないダルマさんのような顔だ。年は40〜50ぐらいか?

「不思議なのでしょう、だんなさまのされることが、わたくしも不思議でなりません」
 もう一人の側の者が言う。
「不思議か?」
 椅子に座ったままくるっと後ろを振り向く。少年はドキッとする。振り向いたダルマさんはかわいい顔をしている。声もやわらかい。なるほど、女性にももてる理由がなんとなくわかる。


 この男、体型に似合わず、実は女性にはもてるタイプ。
 ツス家の庶民派の男として知られているミツアーウェル。平民の意見もしっかりと意見に耳を傾ける男。
 

 リリパットやラルティーナははっきりいって庶民のことを気遣うタイプではない。
 それに対してこのミツアーウェルは別だ。庶民との話もよく耳を傾けるというタイプ。必ずこう言う人は必要だ。そうでないと支配というのは長く続かないものだ。

 いわゆるアメとムチ……ツス家やアウグス家はこの二つを使い分けている。現代もそうだ。
 ただ現代はなぜかムチばかりだが……

 加えて女性にはとてもやさしい、無理に手篭めとかには絶対にしないのだ。さらに口説き上手。
 こういうところが人気がある秘訣なのだろう。
 リリパットやガッツとは大違いだ。
 
 でっぷりと大きなおなかがかっぷくのよさを現している。
「さて……」
 ゆっくりと立ち上がるだんなさま。そして側にいる少年に一緒にくるように言う。
「そなた、ついてまいれ」
「は、はい」
 後を少年はいそいそとついていった。



 リリスが忙しそうに挨拶をしている。他の貴族のメイドさんたちにあいさつまわりというところか。
はたからみると貴族同士のご挨拶だ。
 楽しんでいるけど、それ以外にも大変そうだ。ミクなんぞほんと気楽なものである。

 好きなドレス着て、おいしいクッキーばかり食べて……
 
 ほんとにさっきからクッキーばかり食べている。
 クッキー食べていればミクの仕事はまるで終わりのようだ。

 ほとんどの貴族のメイド長も出席している晩餐会。
 普段から互いに情報交換もしている。ご主人様の愚痴大会になることもしばしばだが。
 今回、レイカは辞退した。表向きはリリスが次のミセルバ様のメイド長ということを周囲にはっきりと見せるためということだった。

 


 しかし……本当は……




「う〜む、すばらしい〜この娘はいい!」
 なにやら遮断された別室で、望遠鏡のような筒状のモノを持って、覗いているだんなさま。
 ちょうど筒状のものの先の壁に穴が開いてあり、そこからパーティ会場を覗くことが出来る。
「…………」
 少年はびっくりだ。



 この部屋で……やっていること……


 それは……



 覗き……


 堂々と覗きをしているのだ、この男。
 部屋の壁の穴につけられた望遠鏡で楽しそうに擬似貴族娘のメイドたち覗いているだんなさま。

「おお! これはまたよいよい!」
 魅力的なお尻を見つけたようだ。カフスを着た美青年といったメイドのお尻……

 ――これが目的なのかな?
 あっけにとられている側近の少年。
 こんなだんなさまに仕えている側近達は大変でもある。
 
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