「むむむっ!」 真剣に覗きをしていただんな様が顔をしかめる。リリスのお尻が見えなくなってしまった。リリスが移動したのだ。別のメイドさんたちのグループにあいさつ回りというところ。 「こりゃいかん!」 といって横にいる側近の少年の手を取り連れて部屋を出る。 「あ、あの……だんな様、どこへ?」 いきなり部屋を出て、上の階へ上がりカフスを着たリリスを探す。円形ドーム状になっているこのパーティ会場、円にそって上からすべて下を見渡せるようになっている。この場所は招かれたメイドさんたちもたくさんいる。それにしてもすごく広い……さすがはツス家の人間だ。 おや? ミクだ。ミクがいる。 一人でここに来たらしい。ちょっとさびしそう。リリスお姉様はあいさつまわりで忙しく、マイカとエンヤはさっきからなにやら二人でべたべたしている。モーラとはここのところ話さえしていない。 あんなことされたらいい気もしない。 他の一緒に来たメイドさんたちは各々グループになっているか、美少年たちを物色している。 ――つまんない…… ちょっとさびしいミク。クッキー食べながらうろうろしていると二階に上がれるところを見つけてここにきたのだ。 ここの円形状の壁には絵画がズラーッと間隔をおいて並べられている。さらにその下に装飾品を置く棚があり、派手な色をした彫刻とかが置いてある。 「おお! あそこじゃ! あそこにいた! ……ということはじゃな」 ダルマさんの身体をズンズンズンと忙しく動かしながらミツアーウェルが走っている、するとミクにぶつかってしまった。 「きゃあっ!」 すってんころりん、倒れこむミク。 「おお! 大丈夫か?」 心配そうにミツアーウェルが見ている。リリスを見ながら走っていたので前方不注意でミクにぶつかってしまった。 「あ、は……はい」 いそいそと起き上がるミク。 (あ……かわいい) 横にいた少年はちょっとときめいた。 ミクのドレスは確かにかわいい花柄タイプ。しかしそれよりももっと少年を驚かせたのは、 口紅だ。 似合わない……ますます子供に見える。 それがかわいさをさらにかもしだしている。 「本当にすまぬのう〜 申し訳ない」 ぺこぺこと頭を下げるミツアーウェル、そしてそっと手を差し出す。 ミツアーウェルの手でゆっくりと起き上がるミク。 〜なるほど……女性に対する作法とかもしっかりしている。 やさしくミクを抱えるように起こす。 そしてにこっと笑った。かわいいイメージのダルマさんの顔がさわやかだ。 これがもてる秘訣だろう。だが相手はメイドなのだが。 この男にはそういうのは関係ないらしい。 しかし…… ツス家にこんなやさしい男がいるとは…… 「忙しい身での、申し訳ないが失礼させてもらうよ」 何をするのに忙しいかは知らないが。 と……言ってミツアーウェルはさっさとまた走り出す。 お目当てのお尻を追いかけるために。 ところが横にいる少年の方はまだミクを見ている。 「大丈夫?」 少年がそっと近づいてささやく。どうやらミクは好みのようだ。 「は、はい」 「僕の名前はシミリアン、君はなんていうのかな?」 結構手馴れているような言い方だ。金色の髪がよく似合う少年。 なんとなくロットに雰囲気は似ている。 すると……サッとさりげなく手を握る。 すばやい。 ロットはここまで積極的じゃない。 むしろ受身だ。 「ミク……ミクよ」 きょとんとしているミク。手を握られてちょっとびっくり。 「こらこら、はやくこんか〜」 ミクを口説いているシミリアンにこっちにこいとうながすだんなさま。 「あ、はい」 くるっと振り向いてだんなさまを追いかけるフリをして…… 「ミクか、いい名前だね、後でもう少しお話しようよ」 にこっと微笑む金髪の少年。 「はあ〜」 きょとんとしているミク。ナンパされているのはわかっていても興味がない。かっこいい少年とは思うが今のミクにはどうでもいいことだ。 ミクの心はミセルバさまとリリスお姉様のことでいっぱい。 挨拶して去っていく少年。急いでだんな様の後を追いかける。それをボッーっとして見ているミク。 「え〜と……」 …… ………… 「あの太った人……だれだっけ?」 なんと! ミクはこのパーティの主催者の顔をよく知らなかった…… |
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