そのころ……リシュリューたちが帰ってきた……


 屈辱の想いで……

 精神的につかれきっているリシュリューたち。


 納得できない!!――――

 納得できるものか!!――――――


 この怒りをどこにぶちまければいいのかさえわからない。

「騎士長!」
 先に帰っていた騎士たちがかけよる。

「御領主は?」
「さきほど事情を話しました、今捜索隊も出ており二人は探させております」
「……まだ起きていらっしゃるか?」
 リシュリューが尋ねる。
「ええ……」
「お話したいことがある」 
 リシュリューがミセルバの元へと行こうとする、すると……

「騎士長!」 
 後ろにいた騎士の一人がリシュリューを止める。
「なんだ?」
 クルリと振り向くリシュリューが見たのは騎士たちの意味ありげな目だ。
「さきほどのこと……言われるのはもう少し待つべきだと思われませんか?」
「なんだと?」
 怒りの矛先を騎士たちに向ける。


 待つだと……?




「どういうことだ!」
「騎士長、あなたもここの状況はもうおわかりのはずです」
 リシュリューを諭そうとする騎士。先に帰ってきていた騎士たちは意味が分からない。
「…………」
「ここは他の王家の委託領地とは少し違うのです」
 他の騎士たちが心配そうに見ている。
「それは知っている……だがそれと今回とのことは別だ」
 言い返すリシュリュー。
「騎士長、あなたのためでも…あるのですよ」
 意味深な言葉だった。

 

 心にグサリとくる……不安がよぎる……



 が、リシュリューはこう言った。

「何かあれば私の責任で構わぬ」
 と言って再びミセルバ様の元へと行こうとする。
「あの屋敷はミセルバ様の許可が出てもそう簡単には中を調べられるとは思えませんが……」
 さらに説得を続ける騎士の一人。
 先に帰っていた騎士たちもなんとなくだがわかってきたようだ。言っている意味が……

「……責任は私一人で取る……心配するな」
 と、立ち止まったまま言い返す。
「しかし! あなた以外の身に何かあったら……」
 その言葉にビクッと反応するリシュリュー。この言葉は一瞬動きを止めるのには十分な言葉だった。


 


 だがリシュリューは……


「私は独身だ、家族はこの地方には住んでいないよ、安心しろ」
 
 この一言でお互いを見合う騎士たち。ここまで意志の強い人を見るのは久しぶりだった。
 他の上官でここまではっきりとした意志を持つ人間はいま皆無に等しい。

 リシュリューはミセルバ様の元へ意を決して向かっていく……
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