――ふう〜やっと落ち着いて来たってとこね。

 溜まっていた書類をようやっと片付けたミセルバ様。この二、三日、急なお客で忙しかったのだ。
 横にはあのロットがいる。久々の登場ロット少年。
 そのロットには今のミセルバは……


(はあ〜だめだ……む、胸の谷間が……すごすぎだよ)
 美少年がちょっと心の中でため息。座っているミセルバに対し、立って書類の処理ををミセルバの横で見ているのだ。これが胸の谷間が気になってたまらない。

 リリスに調教され始めたミセルバの身体の淫乱な匂いはロット少年の心も狂わせている。このところのミセルバ様は忙しかった。しかし充実している。身体が充実しているのだ。

 もちろん夜の方もだ……毎晩リリスにされているわけではない、が、毎晩自分を慰めてはいる。
 それがまた気持ちを掻き立てて最高なエクスタシーを与えるのだ。一人エッチをするたびに美しくなっていくミセルバ様。

 あれからリリスと甘いキスをかわした二人。ミセルバの心は確実にリリスに支配され始めている。以前はミクの愛撫にいとおしさを感じている御領主だったが、今はリリスの方が大事なようになっているのだ。

 もうミセルバの心は決まっている。次のメイドの次長の座はリリスだ。あんなに気持ちのよいことをしてくれるのはリリスだけだ。もはやミクの存在以上になっている。やはりミセルバ様にはマゾの気がある。どうも人に取り込まれやすい一面を持っているミセルバ様。

 しかしそれは立場上非常に怖い。




 そんなことより……ミセルバ様は今、気になることがある。
 シスアの件だ。




 ――本当かしら? あのリリパットのところに?

 ミセルバのところにも噂がやっと届いてきた。シスアは最近城にもいないという。メイドのことはレイカとリリスたちにすべてまかせてある。いちいち何十人以上もいるメイド、使用人たちをミセルバが構っている暇はない。ミクがいないというならまた別だろうが。しかしシスアぐらいのクラスになれば気になるものだ。

 表向きはお暇をもらっているということだ。ミセルバもあえて何も聞こうともしない。しかしびっくりはしている。リリパット卿のところにいるという事実がおどろかせているのだ。
 


 ――ちょっと信じられないわね――




 あの男の女に対する良くない噂は鈍感なミセルバでも知っている。もしツス家の当主という絶大な権力の立場にいないのなら成敗しているかもしれない。
 久しぶりにリリパットという名を聞く御領主。亡くなった父上からもリリパットやツス家の者達とはうまくやるようにとは言われてはいた。
 


 ミセルバもその点はわかっているが。



 18歳の女性でも政治的にもうまく立ち回るのも大事ということは知っている。人との付き合いは大事だ。
 
 わかってはいるのだが、一つだけ納得できない事がある。

 それはリリパットの女性に対する考え方だ。ミセルバは女性……女を道具やただの芸術のように見ているリリパットの印象は悪い。だが、相手はアウグス家と対等の地位にある家柄である以上、それなりに気も使わないといけない。



 ――シスアのことは……まあ、いいけど。 自由だしね。
 メイドをやめるのは原則自由だ。やめたら報酬がなくなるだけのこと。
 リリスが辞めると言ったら今のマゾ状態のミセルバにとっては大変だろうが。逆にこれでリリスを次長にしやすくなったのだから。お城にいない、仕事をしていないメイドにはもう次長の資格などない。

 こつこつとなんとなく机を叩くミセルバさま。

 ――にしても……リリスの……あの時は凄かった……

 またもやすぐに淫らな想いがよみがえる。
 あの甘美な焦らし攻めと、連続的に来た被虐の絶頂がミセルバの淫靡な想いをよみがえらせる。
 身体がまた……なんとなく……うずく……ような気がしたミセルバ。あの後、二人はゆっくりとお互いを愛撫して愛し合った。お互いをしっかりと……愛を……確認して……身分を越えてだ。

 もはやリリスはお姉さまの存在……徐々に逆らえないお姉さまになりつつある。


 ――やだ……

 横にロットがいなければ今からでもオナニーをしたい気分だ……気も狂わんばかりのリリスのサディスティックな攻めを思い出す……

 (うわ……なんか……)
 ミセルバの強烈な色気がロットの顔を赤くする。18歳の調教され始めた身体の匂いは今のロットには耐え切れない。見えない匂い、見えない色気、そして今はもちろん……見えないあそこ。

 ハッとするミセルバ。いけないいけないと淫らな心をふっきる。そしてちょっと顔が赤くなる。さらにそれをロットは敏感に感じ取る。ミセルバの表情はこの少年にはまことに教育上良くない。

「ロット、リリスを呼んで来てちょうだい」
「あ、は……はい」
 ボーっとしていたロットが思わず返事をした。妖しい被虐の匂いがプンプンするミセルバの身体。
 ミクに焦らしの喜びを教えられ、リリスにさらに開発され……どこまでミセルバ様は逝ってしまうのだろうか?
 

 そのエッチな身体の匂いは……今のロットには本当に毒だ。


 
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