痴態の光景


 ミセルバ様?どういうことだ・・ここは一般浴場のはず……。
 二人がビックリするのも当然であった。豪華な貴族専用の浴場を使わずにここを選ぶことは信じられないからである。しかしあの姿は今日一度だけだが確かにミセルバ様であった。ミセルバは着ている物を脱ぐとすぐに湯につかった。だがこちらには気づいていないようだ。この浴場はある意味ミセルバ様が使われているのより広いのだ。まあ一日百人ほどが入ることも考えており、加えて昔の御領主が多くの女達が、たくさん入って目の保養にするために作られた意味も大きい。

 ふたりは、なぜか茂みがあるところに身を細めた。直感的に何かを感じたといってもいいかもしれない
 しかし運のいい所にミニ森林のような所が儲けてあるものだ。これも計算されて昔作られたのかもしれない。ゼラもじっと見ている。ライザ先生の真剣な顔を見ているだけで幸せというところだろう。
 しばらくするとメイド達がミセルバの身体を洗い始める。
「いいご身分ですよねえ」
「ふふ、そうだな」
 ライザはなぜかこの覗きのような行為に一種の背徳感を覚えてしまった。大貴族の女性を覗き見。しかし、男なら楽しいかもしれないけど。なんで、自分が……不思議。だけど胸はどきどきしている。これから起こることが普通でないことを期待するように。



 ミク……。

 ミクが目の前にいる。上を向きながら、ミセルバの脳裏にはこの前のあの背徳感がよみがえり始めた
 それにしてもなぜミセルバ様はここにいるのだろうか?これには理由があった。ミクの進言が効いているのだ。リリスは今日それとなくミクに対していろいろなアドバイスをした。ミクはそれを素直に実行しているのだ。
 内容はこうだ。まず一般の露天をお使いになりませんかと進言するように命令していた。もちろん無理強いは厳禁だと。ミクはたまには趣向を変えてというつもりでミセルバに提案してみたのだ。
 だがリリスの本音は違う。まずミクの進言をどこまで聞き入れてくれるのかに興味があった。次に聞き入れられれば、さらなる戦略を立てていたのである。
 
 それは……


 はあ……なんか身体が熱い……
 ライザは身体の微妙な変化に気づき始めた。さすがは医者である。のぼせた?いや違うここまで熱くなるのはおかしい……。


 この湯には……強力な媚薬が溶け込んでいたのである。


 仕組んだのはもちろんリリス。

 ミセルバ様が、こちらで今日はご入浴遊ばされると聞いて、自分の息のかかったメイド達に大量の媚薬を混入させたのである。これはいつも遊戯宿で使われているモノだ。リリスなら手に入れるのはたやすいこと。

 アイラに頼めばいくらでも……である。

 この露天浴場の湯は循環はしているが、この媚薬は薄まっても十分効果がある。そこら辺はすでに計算済みであった。そしてミセルバの今のまわりのメイド達は自分の指に狂っている者ばかり。極めつけは石鹸だ・・これにも特殊な調合がしてある。湯に溶け込んでいる媚薬を濃縮して、石鹸に調合したモノなのだ。

 そして今日の当番はミク……
 すべては計画通りであった。
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