騎士団長


「うまくなったわあなた、腰の使い方が。騎士団長になってからますます上達してるじゃない」
 汗にまみれながら妖しい笑みを浮かべる。馬乗りになって相手の男を見下すように見つめている。
「ケッ、それがこの騎士団長様にいう言葉かよ」
 彼らが行為をする時はいつもこうらしい。
「でも、ちょっと今日は固さが足りないんじゃない?ほら!固くしてよ」
 こいつ……言ってくれるぜ。6つも年が上の男によ。
 騎士団長ガッツ、38歳、半年前に第一騎士長から昇進した。騎士とはよく知っての通り、城の主、王侯貴族に雇われている兵士の地位のひとつである。主に城の兵士の上位に位置することが多いが、ミセルバの支配する地方では騎士は、支配下の地方の軍の特別職にあたる。特にこのミセルバの支配する城、オクタビアームの騎士団長とは軍のNO2といってもいい存在だ。その男が、メイド長に馬乗りにされて、見下されている。
 だが男には不快感はない。むしろにやにやしながら、楽しんでいた。女の腰の動きが激しくなる。男の長い髪が激しく揺れる。
「あああ・・いい固くなってきたよ」
「へ!当然だよ」

 女は天国へと一気に向かって行った。



「ねえ・・」

 レイカが子供のような声を出す。
「なんだ・・またこごとか?」
 いつものが始まったとガッツは感じた。いい女なんだがこれさえなければと言うのが本音だ。女は本当におしゃべり好きなのだろう。付き合うのも辛いときがある。

「あんたリリス狙ってる?」
「あ・・・またそれかよ」
「だってもうすぐあんたの適用年齢に入るじゃない」
 騎士団長ガッツ……別名おばマニア……他の騎士からひそひそと呼ばれている噂だ。25歳以上の女しか相手にしない。それ以下はガキ……抱くに値しないというのが持論である。最近の若い騎士は楽をしたがる。ウブの女ばかり狙い、男のあしらい経験豊富な女には騙されやすい。そんな事だから出世できないんだよ、というのがこの男の考え方なのだ。

「気にするな……俺はなんとも思っちゃいない」
 まわりにある、拷問道具を見ながら、おばマニアは言い放つ。ここは尋問部屋。罪人の取り調べをするところだ。自由に出入り出来るのは、騎士では団長以上のクラスになる。それをいい事に、団長の中でもリーダー格のガッツはレイカを抱くのに使用しているのだ。最初は怖がったレイカだが、最近は慣れてきたらしい。ここなら仕事中でもいつでもHが出来るというわけだ。

「そう・・」とだけレイカは答えた。

「お前・・リリス嫌いなのか?」
「別に・・」
「うそつけ、嫌いって書いてあるぞその顔に」
「ふふふ」
 にっこり微笑むレイカ。

「別に嫌いではないけど、でも私をどう思ってるかなと・・」
「なんで?」
「私が引退しない限り、彼女はメイド長にはなれないのよ」
「まあ・・そうだが」
「今までなら年齢で自動的だったけど、これからは違うわ」

 ふむ……閣下……いやいやミセルバ様ならそうかもなあ。

「で、先に片付けようというのか?」
「まあ……怖い」
にやりとレイカが冷酷な眼で笑う。
「怖いのは君だ」ガッツは言い返す。

「あなた片付ける気ある?」
「…………」

「ないでしょ?狙ってるくせに」

 ――しつこい女だな……ホント。

「でもあきらめた方がいいわよ、あの娘、女しか興味ないから」
「それ、本当なのか?」
 そのとたんガッツが聞き耳を立てる。前から気になっていた事柄だからだ。

「結構有名よ、メイドの5〜6人は毒牙にかかっているみたいだし」
「ほう〜……それはそれは」
 
 やはり……噂は本当か。

 なら……。

 なおさらやりがいはある……。

「だったらなおさら都合はいいはずだろ?お前にとって。他の男を利用する気もないだろうし」
「馬鹿ね……メイドが全部狂わされたらどうするのよ」
「馬鹿はお前だ、メイド全部食っちまってもメイド長任命するのはミセルバ……あ……ああ?」

 ――まさか……そんな心配する必要があるのか?

「そう……究極はミセルバ様も危ないかもね」
「おいおい、冗談だろ?」

「ふふ……冗談よ、リリス嫌ってる女もいることだし、でもねある意味それも怖いわね」

「まあ……性というものは奥が深いからな」
 怪訝な顔をするガッツ。その気があれば別かも知れん。つい最近もお隣の領主の家が側近の美少年と……うう……世の中いろいろかよ。

 ――だが、障害が多ければ燃えるってもんだぜ。

 38歳のこの男はもうリリスは予定に入ってるらしい。
「さて・・二回戦といくか」
 そう言ってガッツはレイカを抱き寄せた。
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