第二章


レイカ

 メイド長レイカ……32歳。

 16年前から雇われている女性。いわゆるお局様だ。だがお局といえば大体40〜50代、さらに上を想像する人も多いだろう。この年で30人以上のメイドのリーダーは他の城を持つ大貴族の中ではめずらしい。
 だがこれには理由がある。普通は長く勤めればそれだけ年季も経験も積む。それが役に立つと言うのが仕事では一般的だ。しかしこの城の歴代の御領主はそんな者を求めてはいなかった。メイド達を統制するのはメイド長だが、その上は御領主の后が仕切ることになる。ということは、色気もかわいさもなくなった年寄りは引退が当然というのが主流だった。
 せいぜい30代前後、35を過ぎれば不必要、変に年を食って権力の魅力に固執されても困ると言うわけだ。

 だから歴代のメイド長は、35までには引退し後はその経験を活かし、他の小貴族の家のメイドの長になって余生を過ごすというのがこの地方では当たり前だった。当然レイカにもその波は押し寄せる。30を過ぎてから周りはいつレイカが引退をするかを賭けにしているという噂もちらほらあった。

 これは気持ちのいいものではない。しかし、ミセルバが正式に御領主になられて、この城の慣習も変わろうとしている。ミセルバはメイド長は35まで……そんな考えを持つわけがない。むしろ女性を活かすことを考えているお方なのだ。レイカにとってこれは今からの出世の道は有利である。

 だが……。

 人間、不満が尽きることはない……。



「あ・・・うあ・・いいわ・・そこそこ」
「俺の身が持たんぞ、この淫乱女」
 騎士団長の上にまたがり、にっこりと淫靡な笑いを浮かべる女……。この女こそメイド長レイカである。
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