想い


 ではなぜ男官なのか?これには理由がある。ロットは元貴族の息子なのだ。没落貴族であるが……。
 没落貴族とは地位はあるが影響力、金権力が事実上ない家のことを差す。貴族の地位はすべて王家によって与えられる。しかしその後は変な話営業力だ。金と顔の広さで力関係が決まる。領土を持てるほどの地位を与えられたら別だが、一般的に名誉だけしか手に入らない。地位はあるが貧乏……そういう事は良くある事だ。
 そうなるとより地位の高い貴族に近づくか、お金を持っている貴族に……となる。それによっていろいろと……というわけだ。

 ロットの家も例外ではなかった。広大な領土を持つミセルバの家系に近づく事は没落貴族にとってメリットがある。ロットも家のある意味犠牲者なのだ。ロットを迎え入れたミセルバの父は将来側近で側務官の地位を与えようと考えていた。
 まず素直。加えてとても温和な性格。争い事が嫌いなミセルバの父にとっては親しみが沸いたのかもしれない。しかしそこで問題が起こる。他の側近が側務官に対して異議を唱えたのだ。ロットは貴族の家系といっても長男ではない。次男なのである。貴族の地位を直接継ぐわけではない。
 いくら貴族の家系でも側務官には時期尚早、早すぎる、年齢を重ねるまでは世話人で良いのではないか?と言う声があった。それに対して文官の有力者から反対意見が上がる。貴族の家系である以上、それなりの地位を与えるべきだと。困ったミセルバの父、グールはとんでもない事を言う。

 男官に任命すると言ったのだ。

 男官は本来地位のある女性が愛人として任命する。それをグールは男でありながら男官に任命した。
衝撃である。だが、その気があるわけではない。こうするのなら文句はあるまいという考えだったのだ。
 これによって一時解決となったわけだが……。

 しかし数ヶ月後、グールは他界。

 ミセルバはそのままの地位をロットに与えた。この方法が一番揉めなくて済むと考えたからだ。
これにより、形式上ロットはミセルバの愛人となる。

「どうしたのロット?」
 ミセルバがもう一度聞く。
「あ、いえ、さ……最近お綺麗になられたと」
「まああなたがそんな事言うなんて……めずらしい」
 にっこり微笑むミセルバ。どうやら淫らな欲望は消えかけているらしい。だがロットは別だ。ミセルバは美しい。許されるならこの手で抱きしめたいほどだ。特にあのむしゃぶりつきなさいと命令されたようなされた胸はたまらない。16歳の少年にとって18歳の美しいミセルバはあまりにも魅力的過ぎるのだ。
「ふふ、色気づきましたか?」
「あ……いえ」
 ミセルバが微笑む。

 はあ〜ミセルバ様、ここのところ……魅力的。というか淫らに……。い、いや……そんな事を想うこと事態。ミセルバの色気が最近増してきた事に、ロットは悩まされているようである。
 仕方ないかもしれない。ミクの愛撫によって、身体を狂わされ始めたミセルバは、美少年の理性を狂わせるほど淫らな匂いを放っていたのだから。
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