男官ロット


 あの出来事から一週間、あれを超える刺激をミセルバは味わえていない。夜には自慰に対する渇望が絶え間なく来る。
 一回イケば済むのだが、以前はこんなことはなかったミセルバである。

 ミクに……ミクにしてもらえれば……だ、だめよ。何、考えてるの私。

 今は公務中、いろいろな書類に執務室で目を通している真っ最中。
 
 はあ〜こんな時に、どうして……もう。

 性欲は誰にでもある。しかし今まではこんな場所でそういう事を考えたことはなかった。書類はほとんどがサインをするだけ。内容は側近の者が予め目を通しているから極端な話、めくらでサインしてもそう問題はない。内容はいろいろだ。ある所の橋が壊れかけているので修繕してほしいとか、商売をこれここでするので、許可を頂きたいとか等だ。申請書や要望書、中には密告もある。全部目を通すとなればものすごい枚数だ。
 だからすべてはミセルバまで書類が届く事はない。ある程度までは文官や軍官が処理している。それ以外でも凄い量なのだ。歴代の特にミセルバの祖父の代までなら、サインするだけで見ないこともしばしばあった。だが父の時代から最近はきちんと目を通すようになった。本来はこれが当たり前なのだけど。
枚数が多いため、サインするだけでも結構体力がいる。
「ふう〜、これで終わり?」
「はい」
 とにこやかに少年が言う。
「今日はこれで休憩します。あなたもお疲れ様」
「あ、は……はい」

「ん?どうしたの」
 ミセルバは不思議そうに少年を見る。彼の名は

 ロット。

 ミセルバ様の側近の一人。16歳。なるほど、美形の顔立ちをしている。これならまいってしまう女性もいる事だろう。クローザー様の次にメイドの間では人気がある男だ。と言っても政の意見等をいう権限はない。たしかに側近だが、ただの世話人、つまりメイドのような身分なのである。
 側近にもこの国や地方ではいろいろな呼ばれ方がある。政治的な意見を述べるのを専門としている者は側務官と呼ばれる。これが一番一般的。そして単なる世話人は世話人、つまり女性ならメイドだ。それから……下の世話を専門的に。

 つまりは男の愛人……。

 これを男官と呼ぶ。

 男のモノで官位を貰っているという軽蔑した意味合いが含まれている地位だ。ロットは男官であった。
しかしロットの場合は、その下半身は役目を果たしていない。なぜなら愛人のつもりで地位が与えられたのではないからだ。

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