眠れない夜
 カーン…大きな音が大浴場に突然こだまする。誰かがモノを落としたらしい…ミセルバはハッと我に返る。ミクもなにかに醒めたように手を性器から離した。
「も…申し訳ありません。」
 メイドの一人が頭を下げる。先ほどミクに背中をポンと押した女性だ。
「え?ああ、いいのよリリス、気にしないで」
「はい」
 スッと軽く頭を再び下げるとリリスは落とした陶器を拾い上げた。その後ミセルバはミクを見つめた。ミクは下を向いてしまっている。
「ミク、ごくろうさま」
「あ、は、はい」
 顔を真っ赤にしてミクは答える。
 ごくろうさま、この意味は一つだけではないのかもしれない。




 それからミセルバはベッドに横になった。豪勢な部屋に豪華なベッド。
 この地方一体を治めている大貴族なら当然であるが、個人的には以前の部屋の方が気に入っていたこの部屋はどうも物々しいのである。少なくとも女の子向けって感じではない。本来なら部屋を着飾りたいところだが、歴代代々の領主の座に付いた者の寝室だ。
 むやみに変更さえ出来ないように決められている。実は特殊な通路やからくりがこの部屋にはあって、何も考えずに物を置くと、機能しなくなるからだ。敵国や、不振な者が進入した時に逃げる事が出来ないのでは本末転倒である。だが今日はなぜか眠れない。ミセルバはあの浴場での事を思い浮かべていた。

 まさかミクがあそこまでやるとは。

 人にあのように触られたことは今日が初めてである。ミクの性格はよく知っている。いつも元気でハキハキしてるし、好感も持てる。一月ばかりだが、個人的にはメイドの中では一番のお気に入りでもあるのだ。その彼女にこのようなことをされたのは意外だった。
 向こうはそういうつもりではない事はわかっている。
でもあの指の動きは愛撫にそっくり。私は……う、うん。だ、だめ。こんなことばっかりさっきから。寝ようと思っても寝付けない。悶々とする感情が体の奥から吹き上げてくる。途中で辞めてしまったことがますます寝られない要因になっている。
 彼女はそっと指をあそこに当てた……。

 たしか、こんな感じ……あ、そう。

 少し指を入れてその周りの肉襞を撫で回す、奥にも入れすぎず、浅すぎず……。

 ああっ、うんんっ、こんな感じ……。

 今まで自慰をする時は、ただ適当にかき回していた。でも今日の感覚は初めてだった。体験したことのない感覚だ。だけどミクにされたのと同じ感じは湧き出ては来ない。
 
やっぱり……ミクにされないと……やだ、何を考えているの私。

メイドにされて感じるなんて……はあ〜。でもミセルバは、欲望を満たすまで指を動かし続けた。
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