序章の始まり


「ミク、お願い……私を……支配して」
「ミ……ミセルバ様」
 ミクが驚くのも無理はない。自分がお使えしている御領主が自分を支配してと言っているのだ。普通ならとても信じられない言葉である。
「あ、あの……それは、ですから」
「ミク……なにも驚かないで」
 そういうとミセルバはやさしくキスをした。目は完全に新たな世界に逝っている目だ。

 ――ミクは思った。

 ――普通じゃない――

 ミセルバ様……どうしちゃったの?

 不安になるミク。だがミセルバはもう引き戻せない魔術にかかっている。
「ミク……良く聞いて」
 がばっとミクを抱きしめる。グイッとその腕に力がこもっている。

「あなたに、あなたに……支配されたいの……それが私を満たしてくれる事になるのよ」
「え?あ、あの……ミセルバ様、お気を確かに」
「気が触れてなどいないのよミク。私は冷静。わかる?」

 目を丸くするミク。そう言われてもいきなり支配してと言われて、はいそうですか、とは思わないだろう。
ミクはじっとミセルバを見た……。顔の表情はいつもとは確かに違う。なにかに憑かれているかのようだ。身体からは汗が噴出している。息が荒い、ツツーっと汗の一滴が首からエロチックな胸の谷間に落ちていく。
 辺りは薄暗くシーンとしている。この異様な雰囲気にはうってつけだ。
「ミセルバ様、お願いです、正気にもどられ……あっ!」
ミセルバがキスを要求した。
唇と唇が激しく重なり合う。
 ――んんっ、どうなってるの?

 動揺するミク。

 怯えるミク。

 ――怖い――

 ――怖い!――

 キスが終わる。

「ミク……お願い。わかって」
「ミ、ミセルバ様」

「私を支配して……私をあなたのモノにして頂戴」
 
 ゾクゾク――

 と悪寒のようなモノがミクの背筋を通過する。頭はもう放心状態だ。なんとかこの場を取り作る事でいっぱいである。ミクはミセルバの両肩に手を掛け、説得しようとする。

「あ、あの……ミセ……ああっ!」
 またもや激しいキスが始まった。ミセルバは考える。どうすればミクが理解してくれるかを。

 ミク、ミク……あなたに……あなたに支配されたい。この想い……どう伝えればいいの?

 ――そう、わたし……わたしが。


 命令……そうよ!


 命令すれば……いい……。


 心の整理がついたらしい・・・逝っていた目が元に戻りつつある。が、今のこの状況が一種異常である事は理解してはいないようだ。もはやミセルバはマジックに魅入られたようになっている。

「ミク、私を支配しなさい」
「ええ?」
「何をためらっているのです、はやく支配しなさい」
呆然とするミク。あなたを支配するわ!ならともかく……。

「ミ、ミセ……ルバ……様」

 鼻息が荒い、興奮状態が続いているミセルバ。
「はやく……はやく私を、お願いよミク」

 ミクが軽く首を横に振る。これが普通の反応だろう。首を素直に縦に振れる人間は少ないと思う。

「お願いよ……ミク……お願い、でないと……わたし……満たされない」
 再びミセルバがミクをきつく抱きしめる。頭をミクの胸の中にうずめ、そのまま両手でミクのかわいい胸を揉み始める。

 ――ああっ!

 胸の奥から快楽を呼び覚ます感情が芽生える。そのままミクの乳首をミセルバは吸い始めた。徐々にミクの息も荒くなる。

 ――はあ〜はあ〜
 乳首を乱暴に吸われながらミクは何かを考えているようだ。

 し……信じられないけど。

 これ……現実……現実よ……ね。

 甘美な感情よりも、妖しい何かがミクの心を支配し始める。

 ミセル……バ……様。 気持ちいい……きもちいい……です。

 ミセルバ……様にも……

 はやく……して……さしあげない……と。

 狂ったようにミクの乳首を吸い続けるミセルバ。と……そのとき。

 ミクが……ミセルバの顔を掴んだ。グイっと掴まれたため、ミセルバが気づく。乳首を吸うのをやめてミクを見る。そこにはけだるい表情でにこやかな笑顔のミクの姿があった。
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