「ふう〜」
 三回戦が終わったラブロック。久しぶりに三回目までしたという気分だ。よほど久しぶりのレイカの味がよかったのだろう。一方のレイカはもうクタクタ。汗だらだら状態。
「もう無理よ」
 もう嫌よ、身体が持たないと言いたいレイカ。それを見てにやっと笑うラブロック。これだけやれれば満足という顔だ。勝ち誇った顔が性格をよくあらわしている。

「ねえ〜あんた、将来ガッツと立場が入れ替わるっていたけど、どうやったらそうなるの?」
「あ〜まだわかんねえのかよ」
「セックスばかりしてたらわからないわよ」
 しつこく聞くレイカ。何かきっかけでもいいからこの男からもうちょっと聞き出そうというのが目的のようだ。レイカは馬鹿ではない。現状はよく知っている。
 でも普段はそんなことまで気にはしていなかった。その目的に素直に答える黒騎士。

「頭が入れ替わったら当然仕えている立場も入れ替わるだろうが」
「本当に入れ替わると思ってるの? 今までだってこれでうまくやってきたんでしょ」
 言い返すレイカ。汗だくだくの身体が妖しく光る。

「先代の領主が亡くなって、今後微妙な方向にいくかもしれないってことだよ。もうアウグス家にまともな人材はいない、そういうことだ」
 いずれは入れ替わる、そう見ているようだ、この男は。事実、庶民達の間でも将来的にはそうなるであろうと噂されていた。
「ツス家の方が、よくもわるくも欲深いってことだ。ギルドやその他の連中を牛耳っている方が最終的には勝つ、わかるか? わからんだろうなあ〜女には」
「あら、言うわね、この男」
 女にはわからんと言われてますます対抗心が出てきたレイカ。まったく引き下がらない。

「……お前がミセルバ様を擁護したくなるのはわかる、立場上メイド長だからな。しかしもう状況は決まっている、そういうことだ」
「ミセルバ様は馬鹿じゃないわ」
 フンという顔のレイカ。この女にもかわいらしいところがあるようだ。
「だったら馬鹿のほうがよかったかもしれねえな」
 まだ飲むらしい。ウイスキーを片手にレイカをじっと見る。そして少しだけしんみりした顔になった。

「人材がいない家柄ってのは最後にはつぶされる……そういうことだ」
「ミセルバ様は馬鹿じゃないわ!」
 裸のまま起き上がって怒鳴るレイカ。しかし、ラブロックは言い返さない。

「……寝る……もうお前も寝ろよ、添い寝してやる」
「帰る!」
 立ち上がるレイカ。自分に仕えている人を馬鹿呼ばわりされて、
 居ても立ってもいられなくなったか?

「聞かなくていいのか? 他にはよ」
「え?」
 立ったまま振り向くレイカ、驚きの目だ。
「お前……聞き込みに来たんだろ? 俺がリリパット卿直属配下の黒騎士の騎士長だから……」
「…………」
 黙っているレイカ。

「今ならチャンスだぞ、酔ってるから妙なことも言うかもしれないぜ」
「……誘ってるの?」
 立ったまま、裸のままラブロックを見る。美しい美乳を見せつけながら……
「乗り換えろよ、将来性あるのは俺の方だ。ガッツより俺の方がツス家とは近い関係だぞ」
「……あんたが嫌だと思うのはそこよそこ!」
「なに?」
 ムッとするラブロック。意外なことを言われたと思った。
「あんたってさあ〜ただイソギンチャクのようにツス家にくっついているだけじゃない!」
「あっ? 何言ってるんだ? どこの騎士も仕えている家に忠誠尽くすのは当たり前だろうが!」
 怒鳴る黒騎士長。こうなるともう言いあいだ。
「だからって何で乗り換えないといけないの? まるで強い方につくのが当たり前みたい」
「……それが普通だろ?」
「私はそんな女じゃないわ!」 
 とうとう切れたレイカ。どうやらカチンときたようだ。ただ強い所に都合よく変わる……それが当たり前だというラブロックの考え方が気に入らない。着替えを怒るようにするレイカ。もうこんな所は御免だという気持ち。

「じゃあね!」
「おい、ちょっと待て!」
 引きとめようとするラブロック。
「待たない!」
「シスアはどうするんだ?」
「え?」
 意外な人物が出てきた。シスア……いま、リリパットの愛人になっている女だ。メイドは休職扱いという微妙な立場になっている女性。

「……あいつもお前の元部下だろう?」
「……だからなに?」
 ラブロックを見るレイカ。立ち止まっている。どうやら引き止めるのには成功したようだ。
「今のうちに引き返すように言ってやれ」
「……それって……リリパットの愛人をやめろってこと?」
「そうだ」
 酔いながらも真剣な目だ。
「個人の自由でしょ、愛人になろうがどうしようが」
 フンという態度のレイカ。
「本人のためだ」
「ふ〜ん」
 ぜんぜん信じていないレイカ。疑いバリバリの目で見ている。

「言える機会があったら言っておけ。このままじゃあ〜あいつ消されるぞ」
「え?」


 消される? 尋常じゃない言葉だ。レイカがビクッとする。

「それってリリパット卿に殺されるってこと?」
「違う違う、リリパット卿は殺すどころか、屋敷まで与えようとしているらしい」
「ええ?」
 目が丸くなるレイカ。

 ――屋敷? どういうことよそれ……

 驚いたレイカ。あのシスアに屋敷?

 ただただ驚くばかりであった。
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