「さびしそうじゃの」 「い、いえ……」 図星を突かれてドキッとするミウ。ラルティーナがにこりと笑う。ガッツはいま、このクローラ地方にはいない。中央で研修中だ。ほとんど一方的な愛のミウだが、そんな片道の愛でも意中の人がいないとさびしいものだ。 「こちらは退屈じゃ」 「……何かお話でもしましょうか?」 赤ワインを飲みながら、椅子に座って暇を持て余しているラルティーナ様に話しかける。今日は、クリーム色の薄いドレスを来ているお嬢様と呼ばれる30過ぎの女性。それがラルティーナだ。 どことなく冷たい美人という雰囲気がある。 「馬車の話か? もうたくさんの者から聞いた。不思議なこともあるものよの」 天高く飛んでいったというのを聞いたらしい。今や街中で話題の噂話だ。 もちろん信じてはいないだろうが。 しかしそれはツス家の屋敷に関係があるとまでは知らないようだ。 「もう有名なのですね、お嬢様の周りでも」 「うむ……この前のお茶会での」 馬車が天に飛んでいくなど信じるはずもないという顔をしている。 ところがミウが神妙な顔をしているので尋ねるお嬢様。 「それがどうかしたのか?」 「いえ……それがどうも……晩餐会と関係があるらしいのです」 「晩餐会? いつのじゃ?」 晩餐会といってもたくさんある。一月に多ければ十回ぐらいあるのだ。中規模の物から大規模のものまで…… 「ミツアーウェル様主催のメイドの晩餐会ですわ」 「ああ……ふふっ、あれか」 メイドの晩餐会と聞いて笑うラルティーナ。 「あの男も物好きよのう〜どこが面白いのか……それが関係あるというのか?」 「はい、その中に人が乗っていたと……」 「人? 天に飛んだ馬車というのはその馬車のことか?」 馬車が天高く飛んでいったとしか知らないお嬢様。 「ええ……」 「ほう〜」 それ以上は興味を示さない。これだけではラルティーナもそれ以上のことはわからないであろう。 「それが……その馬車が……どうやら……」 「……ん?」 「リリパット様の別荘屋敷に入っていったとか……」 ミウは入っていったことを知っていた。実はあの屋敷のメイドが見ていたらしい。当たり前だが、住み込みでいるメイドは多い。大きな屋敷ならなおさらのこと。 リリパットという言葉を聞いて眉が動くお嬢様。 「ほんとうか?」 興味を持ったお嬢様。アウグス家のミセルバ様の御馬車が空を飛んだというのは聞いている。もちろん冗談だろうと思っていた。しかし、その馬車が晩餐会の当日の馬車で、 しかも兄の別荘屋敷に行っていたとすれば…… サッと頭に兄上のことが浮かぶ。 「はい、あちらで住み込みのメイドに聞きました、 結構屋敷内のメイドたちには噂になっているようです」 「…………」 考えるラルティーナ…… ――そういえば……数日前…… 妙に思うお嬢様。 「あれはシスアに対してではなかったのか……」 ぽつりと独り言を言う。 「え?」 「う〜む……」 ワインを片手にスッと立ち上がり、窓の側に行く。外は月夜が出ていてきれいである。そのガラスにラルティーナの考え込む表情が映る。冷たい氷の表情が浮かび上がる。 ――と……すると…… クリーム色の薄いドレスを着こなしたお嬢様が何か考えている。 「馬車が入っていったというのは本当か?」 「はい、確かめたわけではありませんが」 ミウも妙だと思っていた。晩餐会のことは彼女もよく知っている。あのミツアーウェルの御趣味の一つのパーティだからだ。 「本当ならちょっと気になる……」 ラルティーナの顔が少しきつくなった。 ――確かあのような晩餐会でも御馬車を使うはず……その馬車を堂々と屋敷に迎える? メイドが貴族の娘のような格好をしているのを見てどうすると…… 普通では考えられない…… 「その馬車に人が乗っていたのは間違いないのか?」 「はい、そのようです」 考えるお嬢様…… ラルティーナには気になることがあった。数日前にシスアに屋敷を与えるという噂を聞いて、兄に会いに行ったのだ。その時の兄の様子が…… ――あの様子は女を抱いた時の満足感…… だからシスアの心をとうとう射止めたと見たのだが…… シスアはまだ完全に心を開いていないと読んでいたお嬢様。もちろん、あの女がわざとそういう風に持って行っているのもとうにわかっている。あの女の考えることなどお見通しというわけだ。 つかず、離れず……猫のように……リリパット卿の気を引くため。 それがますます気に食わない。 普通ではわからない微妙な兄の心を察知しているラルティーナ。兄であるリリパットには女を心から征服した満足感を得ると、それが顔に出ることがあるのだ。それもただ抱いただけではなく、手に入れたという満足感が得られた時に…… 兄妹ならではだ。だが、その時はシスアの心と肉体が本当に手に入ったという征服感からくるものだと思っていた。 ――違う女……か…… だとすれば、その馬車に入っていた女は…… 一つ目は、ミセルバやアーチェ様のような貴族の娘だ。 夫がいようが妻がいようが恋愛は一応自由。もめるのなら堂々とけんかして言い争えというのが貴族同士の考え方だ。時には果し合いさえする。それで戦争さえすることもある。 しかしこれは考えにくい。ミセルバ様は正直嫌っているし、アーチェ様には兄は興味がないだろう。 二つ目は男が乗っている場合。だが、兄に男色の気はない。 三つ目はメイドが乗っていた場合。 これはありうる。しかし、メイドが御馬車を自由に出来るとは思えない。ミセルバ様か、アーチェ様がお許しになられていたら別だが。 「ミウ……調べてみてくれぬか」 「……はい」 答えるメイド、ミウ。 「そなたはメイドや庶民の方から聞きだしておくれ、私は私の方で探させる」 「わかりました」 「それと……後ろに来るのじゃ……」 「え?」 後ろ? 一瞬ミウがピクッと動く。しかしすぐに悟ったようだ。ゆっくりと窓から外を見ているお嬢様の背後を取る……背後からまるでミウが忍び寄るように。 「う……後ろの……方を……」 ソッとラルティーナはささやいた。 「はい……失礼します」 ゆっくりとお尻を撫で回すミウ……その感触を楽しみ始めるお嬢様。レズではない微妙な主従関係の行為が始まった。クリーム色のドレスの上からゆっくりとお尻を撫でるメイド。触り方まで手馴れている。もう長年仕えているだけはある。今やラルティーナの大事な自慰のお相手だ。 「う……んっ……」 30過ぎの冷徹な女がメイドの手でゆっくりと快感を受けている。ワインを飲んでいい気分になったせいもあるが。ドレスの上から触られるという行為もまたそそるものがあるのかもしれない。するとラルティーナがゆっくりと脚を広げた…… ドレスを着たまま……それが合図だろう。 ドレスの上からお尻の割れ目に向かって指を這わせるミウ。お嬢様の嗜好と、穴のすべてを知り尽くしている指がゆっくりとあそこに潜り込もうとしている。 「う……あっ……」 感じ始めたお嬢様。ワインを片手にミウの愛撫に悶え始めた。オナニー代わりという言葉が良く似合うミウ。 「ミウ……今日は……う……後ろの穴を……」 「……はい」 落ち着いて答えるミウ。 ドレスはロングドレス。床につくくらいのドレスの後ろをまくりあげ、そこから手を入れていくミウ。 ショーツをまさぐってお尻の割れ目の穴をそっと刺激する。 すると…… 「シスアって人は……どうなるのでしょう」 なんとなくミウが聞いてきた。 「あの……女か……」 30過ぎの女の腰がゆっくりと動き出す。 「屋敷を貰い受けるって本当ですか?」 「ふふ……あの馬鹿女の思い通りににはなら……あんっ……」 今やツス家だけでなく、アウグス家の女たちからも文句が出ているシスアの一件。貴族の女性達は徹底的に保守的だ。それが本当かどうか、本当なら思いとどまらせるためにラルティーナは説得に行ったのだ。しかし兄上は本気らしい。 「あの女、辞退しろと……言うたら、それは御当主が……あっ……んんっ……お決めになられることと言い返しよった……わ」 絶妙なお尻の触り方。すぐには穴攻めをせずに周りから焦らすように動く。それがラルティーナにはたまらない。 「このままでは……済まさぬ」 お尻の穴の周りを触られながら、決意を込めて一気にワインを飲み干す。醜い冷徹な美顔がガラス越しに映し出される。シスアの屋敷の件は、今や大問題の件になっている。メイドに本気で屋敷を与えるなんて聞いたことがないからだ。昔なら他の貴族の女性に気を使っているはずのリリパット。年を重ねて周りが見えなくなってきているのかもしれない。 「メイドたちの間でも噂になっております」 「みなに言うておけ、あのような女は報いを受けると……ふうっ……うああっ……」 ミウの指がお尻の穴に侵入してきた。後ろからじっくりとお嬢様の反応を見るミウ。 「はい……心得ております」 ゆっくりとささやくようにミウが答える。 |
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