「リリスです、入ります」 「どうぞ」 リリスが入ってきた。ミセルバの執務室に。リリスと会うのも何日ぶりか。避けてきたミセルバにとってある意味新鮮でもある。 軽く一礼するリリス。 「いつもごくろうさま」 「はい」 かしこまるリリス。 「リリス、あなたに聞きたいことがあります」 「はい」 「メイドとしての心構えを述べてください」 「はい」 リリスは自分の考えを述べる。どこにでもある普通の考え方。主人に尽くす……一言で言えばこういうことだ。 「ありがとう、参考になったわ」 「いえ」 ミセルバはほっとしている。ミクからあのようにされていなかったら今でも顔を会わせていないかもしれないのだ。だが今は普通にリリスを見れる。特別な意識はない。ミクに身体を支配されて……心の変化が現れているのだろうか? ――これで嫌な噂も。まだ無理かな。ところで、ミセルバどうするの?結局リリスにするの? 決めるのはミセルバよ、簡単なこと。だが今、それを躊躇している。自問自答を繰り返す。 ――気に掛かるのだ――最近の側近たちの変化。 「ミセルバさま?」 ハッとする御領主。 「え?」 驚くミセルバ。なんと……いつの間にかミクがいたのだ。きらきらと感動している目。うれしそうな目だ。 おもわず行動に出てしまったのだろう。ミセルバに抱きついてしまった。いや……予定の行動なのかもしれない。 「うれしい〜ミセルバさま」 「ミ、ミク?」 「好きになってくれたのですね」 「え?」 驚くミセルバ。 「じゃあ今日ぐらいいいですか?」 「?」 「今日の夜……地下牢で」 ――え?……!!あっ、ああっ、ああああっ!―― ミセルバの頭がグルグルと駆け巡る。地下牢……ミクとの秘密の場所…… 「リリスお姉さまも快く思ってくださるって・・」 会ってくださいとは……まさか――リ、リリス? その瞬間リリスを見る。ミクに抱きつかれたまま。向こうでリリスが妖しく微笑んでいる。 ――ああっ、そ、そういうこと……そういうことだったの。 ミクがミセルバの大きな胸の中で甘えている。ギュッと抱きしめられるミセルバ。その影響であの地下牢での出来事が頭の中によみがえるのだ。今までのミクとの数々の行為……焦らし…… 愛撫……愛撫……そして……ぎゃ……虐待新書? ――虐待新書。複数プレイ……いま最も興味のあること。 ああっ―― ミクはコピー出来ない…… ミクはコピー出来ない……でも……ミクに、いえ……ミク以上の。 ――人物が。 ここにる。ミセルバの胸に抱きついているかわいい女性の向こうに……今、目の前にいるのだ。 「ミセルバさま、今日の夜ミクと一緒に伺いますわ」 リリスがにっこりと微笑む。ミセルバは放心状態……だ。だが…… すぐに被虐の心が支配を始める。そしてそれは表情にあらわれた。 ――表情に。 リリスはそれを見逃さない。されたい……されたい……という感情がミセルバの顔からにじみ出ている まちがいない。拒否はない。いつか……こう言うときがくるとは……思っていたけど……。 ああっ、リ、リリスが……この……この私の。 ――身体を?―― そう考えただけで、背徳の炎が燃え上がる。 リリス…… ミクが胸の中で甘えている。心臓の音がドキドキ聞こえる。これからのこと…… ミセルバにとって…… ミクにとって…… もう後戻りは出来ないこと。 リリスがそっと近づく。今、この部屋にはこの三人しかいない。ミクを抱きとめて目を丸くして硬直している御領主にリリスが近づいてきた。だが逃げることもできない。しっかりとミクに掴まれている。逃げる気も…ないかもしれない。 リリスはミクからすべてを聞いている。にっこり微笑む子悪魔の顔。25歳になったばかりの女性が18歳の権力者に怪しく近づく。目を見ればもう明らかだ。逃げられない。にげられない……御領主は蛇に睨まれた蛙。今、ミセルバの身体はリリスの愛の毒牙に染まろうとし始めている。だが最後の理性の力がミセルバを目覚めさせようとする。 ――しかし、その時…… ミクがゆっくり……胸を愛撫し始めた。 その愛撫に……理性が……理性が…… ――消えた……消えた。 もう――戻らない。戻らない理性。 理性は奥深くに閉じこもり代わりに被虐の淫らな心が出現した。そっと顔を近づけるリリス。理性が消え背徳感のみがミセルバを支配する。顔をうずめたまま愛撫しているミク。ただ……ただ一点を見つめているミセルバ。そのさきは……リリス……リリスの眼だ。 リリスの唇が、妖艶な唇が、ミセルバの唇に迫る。ミセルバの顔をリリスの両手がやさしく包み込む。 リリスの唇が……唇が。ミセルバはそれを受けるように唇をもっていく。 ――そのとき―― ミセルバは……淫らな愛の毒牙の最初の段階に嵌り始めた。 |
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