ルビア中央へ


「ふう、やれやれだ」
 すこしやつれた顔をした男が一息ついている。なにか大きな荷物を荷車に乗せているらしい。商人のようだ。よく見るとなかなかの男前である。きれいな顔立ちだ。まあ、女にもてそうというわけではないが。
 ここら辺では結構有名な男でもある。理由は二年前に女軍人と結婚したことが大きい。

 彼の名はマグアイヤ。

 妻の名はルビア。
 二人は小さい頃からの幼馴染だった。
 勝気で気の強かったルビアはよくいじめられていたマグアイヤのかわりにけんかしにいったほどである
 マグアイヤは逆に内向的でおとなしい性格。なぜかこの二人は相性がよく。そのまま大きくなって結婚へと至った。この国では都に近い場所なら女軍人はめずらしくはない。道を歩けばちょくちょく見かける。
 だがルビアクラスになれば別だ。

 彼女は中央の王立国家試験を受けて見事に一発で合格した女。才女である。中央の試験は非常にむずかしく、しかしパスすれば将来を女性でも約束されるほどの価値がある。平民から准貴族に、合格した瞬間に身分も変わる。准貴族になれば将来も安泰だ。老後は今で言う年金があり、保障等もしっかりしている。

「はあ〜今日はもう終わろうか……」
 何かを売っているのだろうか?荷車の中は結構重そうなモノが入っているらしい。男は疲れた顔で、すっと屋敷の方を見る。結構な大きさの屋敷だ。どうみてもこの男の収入には合わないような気が……
 屋敷を見てちょっと考え込んでいるようだ。

 ――なんか……いつみても気が重い……嫌だなあ。
 劣等感が出ているらしい。男はそう思いながらも、屋敷へと向かって行った。




「おかえりなさいませ」
「ああどうもヨッカさん」
 ヨッカ。ここのメイド。といってももう60過ぎのおばあさんである。
「ルビアは?」
「まだ今日はお戻りになりませんね」
「そう……」
 ふう〜っとため息をつく。

 ――軍の定例会議かな。

 ――それに比べて俺は。

 全然……売れん。

「湯を沸かしてまいります。お疲れでしょう」
「ああ……お願いします」
 ヨッカがおばあさんらしい足取りでひょこひょこと歩いていく。近くの椅子に腰掛けるマグアイヤ。

 ――俺は……これでいいのだろうか……世間じゃあ俺のことは紐よばわり。

 ――ルビアの稼ぎがなかったら……

 ため息がまた出る。結婚に後悔はない。むしろルビアは軍人なのにとてもやさしい。しかしそれが返ってまた気が重くなる原因でもある。

 ――こういう場合男が軍人っていうのが……ふつうなんだろうけど。俺は……なあ〜はあ〜――

 ますます顔がやつれていくマグアイヤだった。

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