シーンと静まり返った倉庫内……

 誰も見かけ上はいない。もちろん人の気配ありあり。ポポとはまったく動きが違うルビア。さすがは女軍人だ。

「そりゃあああっ!!――」
 突然娘達が飛び掛る! それをサッと交わすルビア。剣を抜いた……

 さらに数人が飛び掛った!――

 だが、ルビアは機敏に反応していく。しかし、ここで不思議に思う。

 ――本気じゃない?

 予感は当たっていた。アイリーンがあらわれた。

「う〜ん、なかなかのものだね」
 ルビアの動きに感心するアイリーン。
「目狐の手の者か! 殿下はどこにいる!」
「殿下はここだよ」
 と言ってサッと後ろのカーテンを開いた。

「殿下!」
 寝ているポポ。どうやらぐっすりと眠らされているらしい。
「それと、私は目狐の一派じゃない。それだけははっきりさせてもらうよ」
「……じゃあ誰だ、お前は!――」
「元……目狐と言っておこうかね。今はもう独立して関係ないから」
 にやっと笑って言うアイリーンに対して、
「ふん、似たようなもんだ。殿下を返してもらおうか!」
「そりゃ無理」
 すると6人ほどの娘達が取り囲む。

「剣、捨てな、理由はもう言わないでもいいだろう」
「…………」
 ルビアがゆっくりと剣を捨てた。最初から殿下を取り返せるとは思ってもいない。
 こういうつもりだったのだ。自分にわざと責任を持たせるつもりだったのだろうか?
「両手をあげてばんざ〜い」
 アイリーンが命令するように言う。従うルビア。結果的にルビアもなにしに来たかはわからない。
 しかし、自分としてはこれが精一杯であった。人質に取られてはなにも出来ない。

 するとバケツを持っていた仲間の娘。そして勢い欲ぶっかけた!

「きゃあああっ!――」
 顔から全身びしょぬれだ。
「そのまま! 手を挙げたままだよ!――」
 アイリーンがサッと釘を刺す。両手を挙げてじっとアイリーンを見るルビア。そしてリーダーは近くの椅子に腰掛ける。

「さて、ルビア。あんたの役目はなんだい?」
「役目?」
「殿下のお守りかい?」
 尋問が始まる。

「答える気はない」
「答えてくれないと、殿下が困ることになるんだけど……」
 いやらしい言い方だ。仕方なく答える。

「ああ、お守りだよ」
「そう……じゃあ、盗賊討伐部隊は誰が責任者だい?」
 質問攻めが続く。
「私だ」
 ルビアは正直に答えた。
「へえ〜あんた出世したねえ〜」
 そう言われた時だ、だんだんバランスが取れなくなってくる。三半規管が狂っているような感覚だ。

 ――う……そういう……ことか……

 ふらつくルビア。とうとう倒れこんだ。

「あらら、もうダウンかい? まあいいさ、後でゆっくり聞こうかね」
 立ち上がるアイリーン。
「よし、ずらかるよ」
 別の場所へ移動だ。

「姉さん、別働隊が来たようです」
「そう〜、どれくらいの数?」
「50名ほどです、これならやれそうです」
 現場の連中はやる気満々だ。
「逃げる時間稼げばそれで十分だから、それだけ稼いでおくれ。無理は禁物だよ」
「はい!」
 そう言ってサッと戻る連絡役。

「さあ〜こちらはこちらで、支度するよ」
 アイリーンが語気を強めた。



 来た来た……

 50名ほどの騎士と軍人たち。しかし、ルビアが戻ってこないことを確認してから動くのではなかったのか?
 実は、ルビアが出て行った後、みなで議論した結果、すぐに領主に報告したのだ。ここの騎士の力を借りようとしたのである。御領主は当然びっくりしてすぐに騎士を差し向けた。

 ジトやクリティーナ達もいる。

「用意はいいかい?」
「OKですよ〜」
 やる気満々の娘達。上から50名ほどの人間を見下ろしている。こちらは30名〜ほど。

「いくよ!」
 リーダー格の娘が笛を吹く!

 ピィ――――――――――!1

 ハッと驚く騎士と軍人。一斉に剣を抜く。
 すると娘達が、土壁の上から弓を持って騎士と軍人に構えた。

「放て!――」
 叫ぶ娘! 一斉に矢が放たれる!

「うわわわっ!――――」
 サッとよける騎士達。だが、これは敵を射る物ではなかった。目標が逃げても関係ないのだ。


 ボンッ!―― ボンボンッ!――――

 次々と矢の先端が爆発する! すごい煙が巻き上がる!
 矢先は、尖っていない。なにやら破裂すような仕掛けの物がついているのだ。判断の鋭い者は、息を止めた。これは間違いなく吸い込むとやばい。

 さらに視界が見えなくなった!――

 娘達は三段構えの戦法で次から次に矢を射る! 
 三列に並んで、絶え間なく矢を射ってくるのだ!

 どこかの戦国時代の戦法だ。

「よし! 次!――」
 今度は上からなにやら液体が詰め込まれた物をみんなで投げつける。おにぎりぐらいの大きさのものだ。娘達が野球のピッチャーのように。
 それが騎士達、軍人達の身体に降りかかった!
 
 顔に掛かる物もあれば、身体に掛かる物もある。軍服の服もびしょびしょになってしみこんでいく。騎士の鎧の隙間にも液体はもぐりこんでいくのだ。

「そりゃ! うりゃ!」
 かわいい顔してやることはみなすごい。

上からくるのはわかっているが、上が見えない……そこからどんどん物が投げられる!

「うう……」
 よろめき始めた騎士と軍人。ルビアと同じ物を与えられているようだ。ふらふらになる。こうなると剣など通用しない。
後ろ ルビアTOP