次々に荷が運ばれて行く。船の中に……

 早朝だ。まだ霧が深い。ルビアたちはもう船内にいる。ここは軍用船。
 バルカン王国の軍紋章が刻まれた帆が王国軍専用船であることを示している。
 その船内の奥に艦長室がある。

 ここにルビアはいた。

「いつ頃出航できそうかしら?」
「水兵たちによりますともうすぐということです」
 水兵たちが、あわだたしく出発の用意をしている。臨時に雇われた者たちばかりだ。大きな船なので二十人ほどが乗っている。この船で大陸を横切ってラルクルという街へ向かうのだ。バルカン王国の王都サラデールから海を隔てて行くのである。もちろん着いた場所もバルカン王国の領土だ。

 バタバタと足音がする。昨日の夜から船内に泊まっているルビア。正直夜はうるさかった。

 ――馬鹿騒ぎするなって言ってやりたかったわ。

 水兵たちは、ルビアのような、エリートではない。酒と海と女が大好きな男たちばかりだ。おかげで寝不足である。

「酔うかしら……船に乗るの初めてなのよね」
 停泊している船では酔わなかったが、動き出すと自身がない女軍人。揺れる、おっぱいの乳ゆれはぜひ見てみたいものだ。

 だが、ちょっとだけ浮き浮きしている。旅行気分でもあるのだ。
「マグ……ちょっとさびしそうだったわね」
 ルビアはマグとの一夜を思い出していた。今日抱いたらしばらくは抱けなくなるという想いが一層ルビアの肉体を欲した。がむしゃらに身体に、おっぱいに乳首に吸い付いたのだ。

 そう考えると……熱くなる……

「では、荷のチェックをしてきます」
「ええ……お願い」
 部下が出て行く。この部下は向こうの大陸につくまでの間、ルビアの副官の役目らしい。
 正式な副官はラルクルについてからだ。

 ――殿下……

 少しだけ殿下のことを思い出す。殿下との禁断の関係……それにしっかりと反応してしまう身体と心。

 ――マグ……ごめんね。
 結果的には裏切った。こういう場合、この国では女を寝取られたら決闘という制度もある。
 しかし、相手が相手だけにマグは知ったとしても手を出せないだろう。まさか、少年皇太子と決闘しようとは思うまい。

「3日……か」
 向こうの大陸に渡るのにははやくても3日はかかる。その間は船旅だ。
「酔いたくはないわね〜」
 髪をクイッとなびかせながら酔うことだけを心配する。眠くなってきたルビア。いよいよ出航だ。


「ラルクルですか?」
「あそこがいいだろう、私にとっても居心地がいいし」
「わあ〜あそこって遊び場が多いいんでしょ?」
 アイリーンにキラキラした目をみせる少女。
「カジノから、闇市、美少年倶楽部なんてのもあったかな?」
 聞かれてアイリーンがちょっと考える。
「へえ〜そういう倶楽部って需要があるんですかね?」
「あるから供給するんだろ?」
 にこっと笑って言い返すアイリーン。

「貴族の奥方様が、お忍びでよく来るところらしい。もっとも、最近は誰でもかれでもお気軽にらしいけど」
 アイリーンはあまり興味がないようだ。ここは、宿屋のようなところ。平民たちがよく利用する泊まり場だ。あれから御一行は、王都から100キロ以上離れた場所を転々としていた。ちょっとした遊び人の集まりといった感じ。次の盗む獲物と、追っ手から逃れるためだ。
 追ってとはもちろん、目狐の盗賊団。みな、もちろん盗賊ですっていうような格好ではない。 ちょっとした遊び人の集まりといった感じだ。

 まんまと横取りに成功したのはいいが、当然付け狙われる立場になったアイリーンたち。だから転々としている。情報によれば、目狐の連中は、必死こいて探しているらしい。
 計画的に作戦を練って得た物をまんまと横取りされたのだ。怒るのも無理はない。

 もっともメンバーたちはあまり怖がっていない。国中にあちこちアジトを変え、転々としているのを慣れている彼女らにとっては、そう怖くはないのかもしれない。遊びまくって財宝は散財しているようだ。 貯めるというよりも使いまくる方がみな好きなのだろう。そういう連中が集まっているのも事実。

「よし、ここで一泊したら、次はラルクルに決定だ」
「うふふ、楽しみです〜」
 かわいい少女のようなタイプの子がわくわくしている。こんなあどけないタイプでも立派な盗賊。
 御一行もラルクルへ向かうようである。
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