リアティーナ王妃……

 女性推進派の筆頭。女性を登用することに反対するものを徹底的に排除しようとしている王妃だ。当然敵も多い。だが、地位が地位だけに誰もそう簡単には手を出せない。キリー・ブラベッシュ王も王妃には頭が上がらないほどだ。と、いうのも王自身も女性の登用には抵抗感がないからである。しかし、現実は……そう簡単には行かない。
「本当に、そなたが狙われているというのか?」
 王妃の部屋の一室で密談が行われている。
「はい」
 ルビアが念を押す。昨日の件、夜の屋敷のことでもう疑惑は確信にまで深まっていた。
「そうか、だがそなたを外すつもりはない」
「し、しかし、それでは殿下に危険が……」
「証拠はあるのか?疑惑だけではのう」
「…………」
 王妃は、ルビアを外したくない。今外せば反対派の思うつぼだ。それだけは避けたい、女軍人でも立派に警護出来るということの証拠を見せたいという思いが強い王妃。昨日も守り抜いたという気持ちが強い
「ルビア、そなたも現実は分かっているであろう」
「……それはわかります、ですが」
「私の意向じゃ、何かあっても責任は私にある」
「し、しかし、殿下の身になにかあってからでは……」
 ルビアが心配そうに王妃を見る。見るのだが、王妃は受け入れない。
「そなたなら守れる、それに今からは当分の間はポポの外出は禁止するつもりじゃ」
 城の中なら安全だというのだろう。それはそうかも知れないが、ルビアにとっては自分が危険の一つなら離れた方がいいと思っているのだ。
「ルビア、今そなたを外すことは出来ぬ」
 これが王妃の答え。結局平行線であった。






 ふう〜まいったわね。私自身が危険だと言うのに……。王妃様の言いたいことも分かるのだけど。ルビアは椅子に腰掛けてじっと考え込んでいた。あれだけ抵抗されるとは思っていなかったのだ。もちろん気持ちはわかるのだが。そのルビアをチラチラと盗むように見ている少年がいる。ポポだ。
 
 ――うわあ、な、なんか違う。

 ポポが驚いているのはルビアの色気が増しているということだ。昨日の小説の影響もあるかも知れないが、確かに何かが違う。何かが……。昨日の屋敷での騒ぎの一件の後何かあったのだろうか?やはりあれから
マグアイヤとなにかしたのだろうか?ルビアの強気の美しさにグイグイ惹かれ始める少年ポポ。
「殿下」
「あ……な、なに?」
 ルビアに声を掛けられドキッとするポポ。
「今日からはこの部屋から許可なく出ることは禁止します」
 ちょっと厳しい口調で言うルビア。
「う〜ん、それってちょっと困る」
「お気持ちはわかりますが……」
「みんなが付いていれば大丈夫だよ、それに部屋に引きこもりたくない」
「…………」
 ルビアも困っている。この育ち盛りの少年が部屋に引きこもって我慢できるはずがない。
「殿下、分かってください」
 今度はまたジトの小言だ。嫌気がさした殿下。ガバッとベッドの倒れこんでシーツを身体にくるむ。抵抗しているサインだ。外出禁止ならまだしも部屋から出るなとはさすがに受け入れられないポポ。
「許可があれば出れます」
「そういうの勝手に決めないでよ!」
 ついに怒ってしまった殿下。完全にむっとしている。

 ふう……困ったわね。

 ルビアとしても部屋に閉じ込めたくはない。しかし疑惑がある以上怖い、というのが正直な気持ちだ。
そういう心配をよそに……ポポはベッドでふてねしている。
 
 ――くそっ……冗談じゃない、そういう気なら……。
 ポポに対抗心が芽生え始めた。

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