特殊女鑑識官・黒川玲子
                         筆者あーくん

 第一章 女特殊捜査官、黒川玲子登場


 東京……日本の首都だ。そして、世界の玄関と言われる都会の一つ。
 そこは欲望と怨念がとぐろを巻いている所。

 魑魅魍魎という言葉がある。人の欲望はまさに 魑魅魍魎かもしれない。
 そして、その欲望が暴走する時、人は狂気になる。

 その狂気は人だけとは限らない……

「またやられたわ」
 ぽっと一人の女がつぶやいた。その女の目の前に、裸の女性が横たわっている。
 死んでいるのではない、逝っているのだ。逝っているというのは、快楽で狂気のようにされている女性の事を指す。
「一ヶ月前に行方不明になった女性よ」
 二人の女性の間には、むなしい雰囲気が漂っていた。それもそのはず、未だにこの事件は後を絶たない、解決しないからだ。ミニスカートの裾をクイと掴み、背の低い方の女性が悔しがる。その気持ちは二島麗華も同じだった。

 二島麗華。特殊捜査官の一人。主に女性の絡んだ凶悪事件を担当している。
 横にいるのは、相棒のラブティーナだ。麗華より年下の捜査官。アメリカ育ちの女性。
 青い目が特徴の美女。

 麗華は被害者の股間を見た。

 その股間は、鮮やかなピンク色になっている。一瞬綺麗に見えるが、これは調教され、捨てられた結果だ。被害者は未だに目が逝っている。未だに悦楽の世界に浸っているのだ。

 これが調教の効果だった。

 そして、股間の中にまたもやいつものふざけた紙切れが……
 それをギュッと握り締める女。
 連絡を済ませたラブティーナ。もうすぐ警察官が来るだろう。

「むかつくわね〜ほんと!」
 取り出した紙切れを握り締める麗華。
 そこには、pleasureと書かれた文字があった……



 pleasure。意味は楽しみ、愉快、喜び。

 相手は、快楽へようこそと言っているらしい。実に憎らしい言葉だった。
 特殊捜査官達は、一年前からこの卑劣な快楽調教事件を追っている。しかし、未だに解決の糸口さえ見つからない。それどころか犠牲者は増えるばかりだった。それが二島麗華には非常に腹立たしいのだった。

「仕方がないわよ」
「それでは済みません!」
 ラブティーナが、上司に一言。
「わかっているのは、一人の少年がかかわっているということだけ。後は紙切れと被害者の山じゃどうしようもないわ……」
 どうしようもない感情は上司にもある。一年前からこの謎の事件は起きた。被害にあった女性はすべて快楽の廃人になっている。しかも、されたことを被害とは思っていないのがたちが悪い。むしろ喜んでいるのだ。SM行為を楽しんでいるというように……

 だが、これは明らかに調教された結果だった。このまま放置していいはずがない。
 わかっているのは、三人目の被害者が出た時、少年がいたこと。そしてその少年が謎の挑戦状を叩きつけたことだ。

「pleasure!」

 微笑ながら闇に消えていった少年。余裕の表情で。後を追った麗華とラブティーナだったが、まるで怪盗ルパンのように消えていった。その顔は今でもはっきりと覚えている。 特殊捜査官の女性達もまったく歯が立たない。それどころか、この捜査官達が、重点のにしている地域をわざと狙って女性達を襲っているのである。

 これは明らかに挑戦だった。

「今度の被害者も同じ手口?」
「ええ……」
 女性達の証言によれば、不思議な部屋で少年に囲まれて、幸せな調教を送っていたというのだ。だが、明らかに目が逝っているような幸せな調教などあるはずがない。
 しかし、被害者はその感覚はない。だから被害届がない。
 その時、麗華の無線にさらなる悲報が飛び込んできた!

「はい……え? 愛子が! あの愛子が!」
「え?」
 顔が青ざめる。

 愛子とは……女捜査官の一人なのだ。
 二島麗華の顔が青ざめていく……



 無残というより敗北という表現が美しい。

 女捜査官愛子がベッドで眠っている。
 じっと見ているのは麗華だ。こぶしをギュッと握り締めて。
 身体が震えている。悔しさがこみ上げているのだ。

 そこに所長が入ってきた。麻生美緒。特殊女捜査官所長。
 特殊女捜査官達のリーダーである。
「麗華、そろそろ休まないと」
「はい」
 もう数時間もずっと側にいる麗華。よほど悔しいのだろう。毎回、怪盗ルパンのように華麗に逃げられているあの少年を、いつまでも捕まえられないのだから。睡眠薬で眠っている女捜査官の愛子。ベッドで眠る前は、必死に男を……少年を求めていたという。

 それも狂ったように……

 ついに部下が……あの狂った表情をすることになるとは!

 しかも本気で喜んでいる!
 それがさらに許せない!
 
 今までも同じようなモノを見てきたが、今回は特に怒りを覚えている。
 仲間をやられたのだから。
「単独で追っていたのね。愛子」
「そうみたいです」
「どうして?」
 所長は疑問だった。この事件は単独で動くなと命令していたのだ。それなのに……

「内部通報者がいるはずです」
「え?」
 驚く所長美緒。
「だから単独で動いたのだと思います」
 内部通報説はちょっと前から噂になっていた。だから他人には知らせずに捜査していたのだろう。それが結果的にアダになった。

「所長、こうなれば組織全体で動くしかないと思います」
「…………」
 所長は黙っている。麗華は全国に散らばっている特殊捜査官をすべて動員したいらしい。 だが、この特殊捜査官は、女性に対して悪質な事件を行う機関。この事件以外にも抱えている案件はいっぱいある。現実的にこの事件だけに関わることはできないのだ。
「捜査官の数を増やすならいいけど……」
「そんな悠長なこと言っていたら、いつまでたっても解決しませんよ!」
 所長に振り向いて抗議する麗華。おおきなおっぱいがプルンと揺れた。バイクのライダーのつなぎのような制服を着ている麗華。身体の線がくっきりと写っている。
 性格は猪突猛進、いわゆるいけいけどんどんタイプだ。強気女戦士のように。
 現場のリーダーにはある意味ふさわしいが。

「落ち着いて麗華」
 諭す所長さん。
 怒りに震える女捜査官。ついに身内に犠牲が出たのだ。これは許しておけない。
「麗華、この事件は注意深くやっていかないといけないと思うの」
「わかっています!」
 怒鳴るように言う。全然わかっていないようだ、麗華は。
「そこでね……」
 所長がある提案をした。

 その提案とは……
 この事件の解決のために……

 鑑識のエースをチームに入れることであった。


 その鑑識のエースというのがこの玲子。
 黒川玲子。特殊鑑識官鑑識長。
 麗華よりも一つ年上の女性。鑑識関係の仕事をしている。だが、ただの鑑識ではない。 特殊鑑識官、鑑識の長というのが彼女の役職だ。最近できた組織らしい。
「この事件、あのピンク色の生物が鍵ね」
「被害者にいつもついているあの妙な生き物のこと?」
「ええ……」

 玲子が説明している。
 
 今回の事件は、ただ女性が襲われて、調教されている事件ではない。
 科学的捜査が必要なのだ。被害者に必ずついているピンク色の生き物。
 こいつが特殊な生き物ということはわかっていた。
 しかし、特殊鑑識官まで引っ張り出すとは思っていなかった麗華。

 特殊鑑識官とは、通常の鑑識とは違って、奇妙な事件や、未解決の事件をもう一度鑑識の立場から捜査する機関である。今回、そこと連携してやろうというのだ。

 麗華の意気込みはハンパじゃない。
 麗華の執念の捜査は続くのだ。

 とはいっても、執念ですぐに解決できるなら、こんなことにはならない。
 解決出来ないから、応援を要請したのだから。

「この生物を調べた方が早いわ」
「もう結果は出てるのだけど」
 別の鑑識課が結果は出している。しかし、メガネをかけた黒川玲子は、首を横に振った。
「生物の詳細は不明……これが結果?」
 ちょっと笑う玲子。こんな報告書でよく通用したものだと思っているからだ。鑑識課も調べたらしいが、ただただうようよと動く生き物という結果しか出せなかったらしい。
 つまり、正体不明で調べは終わっていた。

「心当たりがあるの」
「え?」
 正体不明の生物に心当たりがある?

「ただ……今は詳細は言えないけど……」
「どういうこと?」
 麗華が聞き返す。
「可能性があるということだけ言っておくわ。とにかく、こういう方面は任せてくれるかしら?」
「ええ、もちろんよ」
 正体不明の生物を解明してくれるというなら正直ありがたい。
 鑑識課は、不明生物で終わっていたのだから。
 こうして黒川玲子の物語が始まった。
 しかし、これは……

 玲子にとって、恥辱と、陵辱と屈辱の日々が始まる事を意味するのであった。



 本格的な捜査が始まった。現場で動くリーダーの麗華も必死になって動いている。
 しかし、状況はまったく好転しない。
 だが、特殊鑑識課……こちらでは新たな発見があった。

「なるほど……」
 メガネをかけながら、ロングの髪をなびかせる。その黒川玲子がじっと見つめているモノがある。特殊な培養液に保管されているあの生物だ。
 これは今回、被害者の女性の膣内にあったものだ。過去の物はすべて腐ってしまったらしい。玲子はその腐った物も鑑定している。そして、最後の被害者の物を見ているのだ。 10日前は微量だったのが、手のひらサイズまで大きくなっている。ウニョウニョとした触手のようなものが培養液の中で動いている。

 綺麗なピンク色だ。が、正直気持ち悪い。
 しかし、玲子は半分うれしそうでもある。
 科学者のタイプならこういうのを分析するのは大好きだからだ。

 ――これがたぶん……ペニス様の一部……でしょうね。
 被害者が必ず言う言葉。

 それがペニス様。

 どうやらこの生き物で女体を狂わしているのだ。
 最後にはペニス様と呼ばせているらしい。
 ――これで意のまま……か……やっぱり……あの事件と同じ……
 メガネをクイと動かして、目の前の生き物を分析する玲子。何か考えているようだ。
 まるで過去の出来事を照らし合わせるように……

 うなぎのようにクイクイと動いている生物。培養液に入れたのは正解だった。今までこういう調査はやっていなかったのだ。そして、この生物を装置の中で別の容器に移す。

「あっ!」
 目を丸くする玲子!
 生物の恐るべき変化が始まっていた。
 そしてそれは、女特殊監視官が過去に経験したことでもあった。


 捜査本部に帰ってきた麗華。もちろん収穫はなし。
「あ〜もう!」
 バンッと机を叩く!
 どうやら捜査中に軟派されたらしい。しかもどこかの生意気な少年から。
 今日は、それが今でもむかつく原因になっている。
 機嫌が悪そうだ。成果はなく、軟派されたでは仕方ない。
 そこにラブティーナがあらわれた。

「麗華さん、鑑識室に来てください」
「え?」
「見てほしいのがあるんですって」
 ちょっと驚いているラブティーナ。何かあるらしい。

 早速、麗華は玲子のいる鑑識室に向かった。


「これを見て頂戴」
 培養液に浸っている生物を見るように言う。
「例の生き物でしょ? それがどうかしたの?」
 もう何回見たことか。見ても解決しないのなら意味がないと思っている麗華。
「こいつ……変化するのよ」
「え?」
 培養液から特殊ペンチのようなもので、生き物を取り出す。
 ビクビクと動き回る生き物。ナスのような形をしている。
「いい、よく見ていて」
 なんと、それを投げ捨てた!

「きゃっ!」
 びっくりしたのは麗華だ。いきなりこんなことされたら誰だって驚く。
 すると、床に投げ捨てられた生き物が、ススッと一番近い女である麗華に近づいてきたのだ。
「ちょっと!」
 怒鳴る麗華!
 さらに周りを確認しながらついに脚にまとわりついた!

「きゃあああああっ!――」
「振りほどいて」
 玲子が冷静に言う。
「え? もう!――」
 脚ではじく麗華!
「ちょっと、こんな想いさせないでよ!」
「これからよ、驚くのは」
 玲子が言うと、生物はゆっくりと部屋の隅に行く。隠れているつもりらしい。
 そして……

 なんと……

 ヒモに変化したのだ!

 驚く麗華とラブティーナ。どこぞに落ちている縄のヒモだ。そうとしか見えない。
 ピクリとも動かない。こうやってごまかそうとしているのだ。

「え? ええ?……うそ?……」
 驚くのも無理はない。ピンクのナス状の生き物がヒモに変化するとは誰も思わないだろう。

 そのヒモを手にとって、得意の顔の玲子。三人で一番おおきい胸が誇らしげ。
「どう、これで死んだフリでもしているようね。これなら怪しまれないわね〜」
 こういう手法で女達に近づいていったと推測できるようだ。
 これなら怪しまれずに近づけたりできる。
「麗華、この事件、少年が絡んでいるって言ってたわね」
「ええ……」
「それは一人なの?」
 尋ねる鑑識官。
「今まで現場で見たのは一人の少年らしき人物だけなのよ」

 詳しく話し始める麗華。
 一年前から続いているこの事件。だが、どこで襲われているかはまったくわかっていない。被害者は未だに洗脳状態のため、どこで襲われたのかもわからないためだ。逆に被害者が放置されている場所は決まっていた。

 渋谷だ。突然被害者は渋谷に現れる。
 それも……

 全裸で。

 全裸で放心状態で歩いていれば、誰だって驚くだろう。
 そして幾度となく保護されてきた。これの繰り返し。
 しかし、ここからが問題だった。
 洗脳が解けないため、いつも言うことは……

 ペニス様〜 ペニス様〜

 誰が襲ったのかも、誰が渋谷で放置したかもわからない。わかっているのは少年らしき人物が、一回だけ目撃されているだけ。その目撃者が愛子。
 その愛子もとうとう……被害者に……

「愛子が見たっていう少年ってどんな人物?」
「それはね……」
 麗華がしゃべり始めた。

 それは偶然だった。

 似たようなレイプ事件で、女捜査官愛子はある場所を張っていたのだ。
 その場所は、空き家。
 こちらは熟女を専門に襲っているという事件だった。
 犯人の特徴もわかって、被害者も洗脳されていない。捕まえた獲物をここで犯しているというのが特徴だった。

 だが、そこに現れたのは、少年だった。そして、被害者の女性を連れていたのだ。
 服を着ていた女性がその場で喜んで脱ぎ始める。どうみても嫌がってはいない。
 だが、この時は、愛子にもわからなかった。当然、熟女を襲っている連続レイプ事件の犯人と思ったのだ。
 サッと少年が人の気配に気付く。瞬間、愛子は、拳銃を抜く!

「動くな! 止まると撃つわよ!」
 その声に立ち止まる少年らしき人物。だが、暗闇ではよく見えない。
「あんた、誰?」
 かわいい声が聞こえた。
 この時、少年と判断した愛子。

「あなたを逮捕します」
「警察?」
「特殊捜査官です、抵抗しても無駄よ」
 暗闇の少年は黙っている。だが、笑っている。
「特殊捜査官……聞いたことあるね」
 軽い口調が気に障る。そういう声だ。
「手を上げて」
 瞬間、目の前に何かがぶつかった!

 バシバシと身体中に鞭を打つように……

「きゃあああああっ!――」
 この攻撃は予想できない! たじろいでいると少年が笑いながら言う。

「特殊捜査官か……次は君が獲物だ。覚悟していてね」
 そう言って消えてしまったのだ。すると、鞭さえも同時に消えた。
 そして、被害者が、
「ペニスさま〜 ペニスさま〜」

 現場はこの声だけが響き渡っていたのだった。

 これがただ一回だけの目撃情報。
 しかし、今やその目撃情報者が……

「ペニスさま〜 ペニスさま〜」
 である。

「ふ〜ん、少年か……」
 声が少年だということで少年らしいのだが。本当はかわいい声したおっさんかもしれない。
「鞭で襲われたってこいつのことよ、多分」
 暗闇では何がなんだかわからないだろう。だって、目の前にいるのは間違いなく紐、あるいは縄だ。

「こんなことが出来る奴と私達は……」
「だから、私が呼ばれたんでしょ? 違う?」
 メガネの女が不適に笑う。一番大きいおっぱいが揺れた。
「麗華さん、これは結構奥が深そうよ、気をつけて」
「ええ……」

 特殊な生物で鞭やヒモを操る少年?
 謎だらけ。
 だが、黒川玲子は何か心当たりがあるらしい。

 猪突猛進の麗華はますます闘志を燃やすのだった。

 
 疲れた表情の女鑑識官。熟れた身体をゆっくりとシャワーが揉み解していく……
 汗を流し終わった後、ソファにスッと座った。

 ――まさか……あの事件との絡みは……あるわね。たぶん。
 ちょっと考え込む。しかし、その過去の事件とは正直結び付けたくない。
 あれも忌まわしい事件だった。さらに政治的意図で玲子は不満を持ってしまった事件でもある。

 ――ふう〜
 考えながらゆっくりとバスローブの胸に手をやる。
 わざわざメガネをかけて……オナニーの態勢に入るのだ。目の前には鏡がある。
 自分の表情を見ながら、淫行為を始める玲子。
 これが玲子の夜の楽しみ。

「あふっ……」
 はちきれそうなおっぱいをむき出して、同時に股間に手をしのび寄せる。

 ――あ〜気持ちいい〜
 シャワーを浴びた後はいつもこうだ。これが楽しみの淫乱鑑識官。
 無造作に秘肉をいじる。もう濡れている玲子の股間。
 仕事が忙しくなればなるほど、こういう行為は燃えるものらしい。

「御堂教授に……会ってみる必要が……うふっ……ありそう……ね」
 秘肉をいじめるように嬲る玲子。メガネをかけたままするのがお気に入りのオナニーらしい。時間をかけてゆっくりするのが、玲子のやり方だ。
 こうやって気持ちよくオナニーをしたいく。
 それから数日後が経った。


 玲子は捜査資料室にいた。
 過去の事件を調べているようだ。

「ええ〜っと」
 検索モードで……

 ペニスと入れる。

 ――なんか、恥ずかしいわね〜
 普段、検索にペニスと入れる趣味はない。
 しかし、これは捜査だ。しかし、なぜペニスなのだろう?
 ペニス様と関連がある事件があるのだろうか?

 すると検索にペニス関連の事件がいっぱい出てきた。
 それを片っ端から見ていく玲子。
 するとある事件が引っかかる。

 ――あら……これって……
 白衣でミニスカートのふとももが揺れた。

 手口がそっくりの事件があったのだ。
 それも3年前だ。股間がピンク色。いずれも被害者は、裸で歩き回って保護されている。
 さらに、ペニスさま〜と被害者は叫んでいたというのだ。
 だが、こちらの犯人は数ヵ月後にすぐ捕まっていた。
 そして裁判では、公判の維持が出来ずに、精神疾患で病院送りになっている。
 その後死亡とある。

「ペニスさま〜か……」
 思わずペニスという言葉をつぶやいてしまった黒川玲子。こちらもペニスさまと呼んでいる点はそっくりだ。しかし、テレビやニュースでは大きく取り上げられなかったらしい。
 玲子ももちろん知らない。
 これをもっと詳しく見るには、直接紙の捜査資料集を見る必要がある。
 
 玲子は、資料室へ向かった。


 その頃、麗華とラブティーナ達は、必死に捜査を続けている。
 そこに、思わぬチャンスがあらわれたのだ。

「これを渡すように言われたのですね」
「はい」
 気味が悪い表情で、麗華を見ている。女性は20代前半。少年からこれを預かったというのだ。それも無理やりだったらしい。
「渡さないと……犯すと」
「そうですか」
 渡された紙に書いてある言葉が挑戦的だ。

 ――特殊捜査官は、pleasure!

 これは次のターゲットはあなたたちだと言っているようなもの。
 苦虫を潰した顔になる麗華。

 ――挑戦状か……
 ギュッと握りしめたいが、大事な証拠だ。
「顔は見ましたか?」
「いえ、帽子を深くかぶっていて」
 さらに、衝撃の証言がきた。

「鞭のようなもので?」
「はい」

 この女性が言うには、少年の後ろから鞭のようなものが飛び出して、スカートの中をまさぐったというのだ。それで恐怖にかられて渡されたものを警察に届けにきたというわけ。
「鞭か……」

 玲子が言っていたあの生物がまさしく絡んでいる。
 いよいよ、自ら尻尾を出してきた少年であった。


 資料室で情報収集が終わった特殊鑑識官。
 その内容でだいたいがわかった。

 まず、犯人はもう死んでいる。
 つまり、今回の犯人はこの男ではないということ。中年男の犯行だったが、精神病院で死亡したとあるのだ。
 それと被害者は確かに洗脳されたが、すぐに回復して、犯行までの経緯や、犯人の特徴もしゃべっている。それと、ペニス。

 このペニスが凄い。

 被害者が言うには、ペニスが長くなったとか、クネクネ動いた、挙句の果てには二本になったというのだ。
 だが、それは調教されているうちに恐怖で幻覚だから見たということになっている。
 実際、死亡した犯人を検死しても犯人は、通常のペニス持ちだったらしい。

「ペニスが2本……」
 気になる玲子。被害者のこのペニスが2本ということが気になっている。

 ――嫌ね……ペニスのことばっかり。
 腕を組む玲子。今日は一日ペニスだらけだ。ふと、目の前にある培養液に満たされた生物を見る。相変わらず、培養液ではピンク色のナス型の生物が動いている。それをなんとなく見ていると、

「挑戦状がきたらしいわ」
 部屋の外から捜査官の声がする。

 ――何が動きがあったようね。
 玲子はいそいそと部屋を出て行った。


 会議で決まったこと。
 犯人はおそらく少年。かわいい声が特徴。武器はこの特殊生物だと断定した。
 だが、潜伏場所等は一切わからない。犯人は挑戦的で、挑発的。
 これからは必ず単独行動は取らないようにと厳命された。
 玲子が見つけた資料も参考になった。
 この3年前の事件との関連性も調べることになった。

 だが、せいぜいわかったことはそこまで。会議が終わり、また捜査はいつものように再開。あの不敵な挑戦状を突きつけられて大人しく黙っている特殊捜査官ではない。麗華たちは総動員で捜査にあたっていた。

 一方の玲子は、精神病院へ。

 3年前のあの事件の犯人の最後を調べている。
「これがカルテです」
 渡されたカルテ。
 精神病で措置入院になった犯人。そのまま数ヶ月の治療ののち死亡とある。
 症状は、意味不明なうわ言を繰り返していたの書かれていた。
 その内容に注目した玲子。

 ――俺は世界中の女を、これでモノにする男なのだ!

 ――世界の女は俺のペニスでみなが狂う時代がくる!

 まあ、なんと自分勝手な犯人だろう。まさに自意識過剰である。
 ふう〜っと一息つく。
 玲子は思う。やっぱり男とはこういうものかと。

 ――ん?
 玲子がカルテの内容である事に気付く。ペニスに異物のようなモノがついていたと記述があった。これはおそらく先天性変異と思われると書かれている。

 ――先天性変異? ようは、おっぱいが4ついて生まれてきた奇形というような状態のこと?

 そう判断されたようだ。記述にあるのはそれだけ。異物がどんなものかまでは書いていない。と、いうことは、やっぱりダブルペニスだったのだろうか?
「う〜ん」
 座ってカルテを見ている玲子。白衣のミニスカートからくるチラリズムが美しい。

 ――奇形か……
 考え込む玲子。しかし、その時、現場では大変なことが起ころうとしていた。


 第2章 現れた犯人

「あいつよ!」
 麗華とラブティーナが追いかける!
 現れたのだ、あの少年が。それもいきなりだった。聞き込みをしている時に、いきなり目の前にあらわれ、

「僕をお探し?」
 と言い放った!
 深く帽子をかぶり目は見えない。誰だと麗華が問い詰めた瞬間、逃げたのだ。

「待ちなさい!」
 逃げる少年を追う二人。無線で仲間を呼ぶ。帽子をかぶったままの少年の足は速い。
 どうやら、市街の外れの神社の方に向かっているようだ。これは明らかに誘っている。
 それはもうわかっている特殊捜査官たち。だけど、その誘いに乗らないと事件は解決しない。

 少年は神社の階段を一気に上がっていった……


 表向きは追い詰められた少年。神社は行き止まりにふさわしい場所。神社の内部に入った。それを見て、拳銃を抜く麗華たち。仲間がきた。全部で8人はいる。少年一人に8人の女。
「探しましょう、ただし、ペアで」
「はい!」
 捜査官たちが、慎重になる。境内の中に入る。この神社、今は廃墟なのだ。薄暗い境内の中。麗華とラブティーナがある部屋に入る。

 そこにひょうひょうと少年はいた。中年男が可愛い声を出しているのではない。
 明らかに少年だ。
「あなたね……事件の首謀者は」
「うん」
 素直に返事をした少年。さらに、帽子をクイと上げる。そこには綺麗な目をした鋭い眼光があった。髪は金髪のようだ。帽子の脇から金色の髪が見える。
「あなたを逮捕します」
「それより、みんなを集めてよ、物色するからさ」
 なんという言葉。
「な、なに?」

 物色? 

 物色ですって?

 なんて言い草だ!

「ふざけないで!」
「君はリーダーなんだろう? そういう地位にいる人は、最後に調教する方が味があるんだよ」
 なんという言い草。
「あなた……」
「こいつ!」
 ラブティーナも拳銃を抜く! これほど生意気な少年もめずらしい〜
 仲間が集まってきた合計8人。

「手をあげて、でないと撃つわよ!」
「無抵抗の人間を撃つの?」
 いやらしい切り替えしだ。
「嫌なら手を上げなさい」
 スッと手をあげる。しかし、片手だけ。ふざけてる。
「両手よ!」
 あまりのおふざけに怒った麗華!

 その瞬間!――

 少年の後ろからいきなり襲い掛かるモノが走る!
 それはあの縄だ!
 縄が鞭を打つように……

「きゃああああああっ!――」
 麗華がたじろいだ! いきなりの攻撃にさらされた! 鞭がうなるように麗華以外も襲っていく。少年の後ろから操るように鞭が暴れまわる!

「いやあああっ!」
「きゃあああああっ!――」
 あまりのスピードに拳銃など意味がない。あっという間に鞭に縛られてしまった。

「あはははっ!」
 かわいい声で笑う少年。まるで予測していた通りだ。そして帽子をスッと外した。
 そこには金髪の髪を持った微笑があった。

 美しい顔立ち。まさに芸術品のように……
 しかし、やっていることは超悪質。

「離せ!」
「やだね」
 クスッと笑う。憎たらしい。
「さて、どれにしようかな?」
 物色を始めた。どれから犯すか考えているようだ。
「お前! 何者だ!」
「僕の名は木見太陽。もうすぐ世界中の女を手に入れるんだ」
 なんという思想。なんという勘違い。
「お、お前……」
 麗華が暴れる。スリットつきのスカートが揺れる。ふとももがくねくねと動く。
「君にしよう」
 8人のうちの一人が、縛られた鞭で引き寄せられる。その他の女達は、拘束されたままだ。そして他の女たちの鞭を意志で切った。
 少年から独立した鞭だが、しっかりと、縛られているのは変わらない。
 
「この女だけ貰っていくよ。麗華、君は最後の獲物に置いておく」
「なんだと! おい! こらああっ!」
 怒る麗華! もう少年とは見ていない。ただの犯罪者!

「じゃあね、また来るよ」
 少年の手から新たな鞭が出てきた。それを天井の引っ掛ける部分に撒きつけて、移動していく。一人の特殊捜査官を引きずりながら。
「離せ! 離せええええええええええっ!」 
 部下の一人が連れて行かれてしまう。が、麗華達は何もできない。

「麗華さん、いい身体しているね、いずれ辱めてあげるよ。また会おう」
 かっこよく捨て台詞を言って、境内から出て行く木見太陽。

 こうして一人の女捜査官は拉致されてしまった。
 それも堂々と、麗華達の目の前で。


 拉致された報告を聞いたのは次の日。
 それを踏まえて玲子は、何か考えている。

「これも……同じ」
 培養液に浸すと鞭があの生物に変わったのだ。ピンク色の生物に……

 ――自由自在に動かした……か……
 考えている玲子。この生物を巧みに操っている少年。これは脅威と感じている鑑識官。 そこへ麗華がやってきた。少し表情が暗い。
「拳銃じゃ駄目ってこと?」
「そうよ」
 冷静に答える玲子。玲子は拳銃なんてこの生物には効かないことを言っていた。
「だったら、どうすればいいのかしら?」
「こっちに来て頂戴」

 案内されたのは横にある別室。そこにはある武器が置いてある。
「はい、これが特殊弾丸」
「え?」
 渡されたのは対特殊生物用のもの。これならあの鞭と戦えるというのか?

「これは知ってるわ。でもね、これを拳銃で撃つ暇がないのよ」
「それならこっちも携帯したらいいわ」
 今度は手榴弾形式のものだ。

「…………」
 確かにこれなら鞭で拘束されてもまだ反撃のチャンスはあるが。
「試してみて、じゃあ実戦よ」
「え?」

 いきなり実戦?

 ふと見ると、玲子が向こう側で培養液の中からあの生物を取り出している。そして、何をするのかと思っていたら、そいつを部屋の中央に投げ捨てた!

「さ、実戦開始、そいつ、あなたに襲い掛かってくるわよ」
「ええ?」
 さすがは理系タイプの玲子。いきなり実戦だ。何の予告もなく。ブルブルッとナス状の生物が、コブラのように変化していく。ピンク色のまま……

「ちょ、ちょっと!」
 さすがにびっくりの麗華。確かに本番に備えるにはいいかもしれないが。生物は、蛇のような形になって、麗華に向かってくる!

 とっさに銃を構えるが、拳銃の中は通常弾丸だ。
「入れ替えるのよ」
 冷静に言う玲子。いきなり本番を平気でやらせるのが、この女性の性格らしい。
 麗華が弾丸を入れ替える。そして装填した!

 サッと身を翻し、蛇のようになった生物に、弾丸を撃った!
 瞬間、弾丸は、180度に広がっていく!
 細かいクモの糸が、四方八方に散らばっていくのだ。それは、蛇の肉体につきまとい、次第にめり込み……

 なんと、蛇を粉砕したのだ。

 ――す、すごい!
 感嘆した麗華。これならあの鞭とも戦える。
「それとこいつはね……」
 と言って玲子が、なんと、麗華向かって発砲した!

「きゃあああああああッ!」
 同じようにクモの糸が一斉に麗華に絡む。しかし、それだけ。
 ただ、クモの糸がまとわりついているだけだ。自由に動くこともできる。
「わかる? 人間には無力ってことよ」
「んもう!」
 こういう教え方は嫌いな麗華。
「これなら前回とは違った方法で戦えるでしょう?」
 にっこり微笑む黒川玲子。こういう対策も特殊鑑識官の役目のようだ。
 ちょっと驚いたが、これなら他人には無害。使えそうだ。
「ありがとう」
 麗華は部下を二人も拉致された。今度の拉致も場所はまったくの不明。

 今頃は……

 そう思うだけで怒りがこみ上げるのだ。

「捕まえてみせるわ。今度こそ!」
 語気を強める特殊捜査官。
「がんばってね」
 玲子はにっこりと微笑んだのだった。



 密室と言うのにふさわしい部屋かもしれない。
 女捜査官が連れ込まれた場所だ。あの事件から一日経っている。
 しかし、まだ何もされていない。

 毎日、妙な液体を飲まされている以外は……

 身体は自由。だけど、外には出られない。ただじっと、監禁状態のまま。定期的に生物から伸びる触手が無理やり口に突っ込まれ、液体を飲ませているのだ。
 身体の異変を感じてはいない女捜査官。そこへあの少年がやってきた。

「おはよう」
「…………」
 睨む捜査官。背は麗華と同じぐらいのタイプ。ふくよかなおっぱいを持っている。
 むっちりタイプだ。無造作に少年が近づいていく。
「おおおおおおおおっ!――」
 捕まえにかかった!

 しかし、後ろから触手がワッと出現して、押さえつけた捜査官をグルグル巻きにしていく。
「うぐっ!――」
 首を絞められた捜査官の女。
「体力あるなあ〜 よしよし、これなら楽しめそうだ」
 余裕の少年、木見太陽。金髪の美少年だ。にしても、全身タイツに身を染めている。
 男子バレエのような格好。すごくよく似合う。

「無駄よ、こんなもの飲ませても」
「もう終わりだよ、これからは調教さ」
 不敵に笑う。触手に絡まれながら、それを聞くのは非常に辛い。

「このガキ! どうしてこんなことするの!」
「説教かい? 年上の女の人ってみんな同じだなあ〜」
 まったく平気。にしても、この触手を操っているとは……

「特殊捜査官のコスチュームってそそるんだよねえ〜」
 制服は非常にエロい。どこの趣味だろうかと思うほど。ミニスカートでタイツ。昔の婦人警官に似ている。腕だけ拘束された捜査官。美乳をグイと掴む少年。

 まるで陵辱されるために着ているような格好だ。

「あぐっ!――」
 信じられない刺激が襲う。捜査官の顔が少し赤くなった。
「どう? 気持ちいいでしょ?」
 鷲掴みにしただけで、快感がきた。飲まされたモノのせいだ。続けて乳首を服の上からつねられる。
「あうっ!――」
 ビクンビクンと快感が募る。これは結構効く。
「でかい乳首だね〜」
 立ったままの拘束状態。その時蹴りが少年に来た!

「うわ!」
 思わず手で受ける少年。これは予想していたらしいが……
「ふふふ」
 ちょっと痛かったようだ。
「元気もいいね〜これなら楽しめそうだ」
 太陽君は服の上からおっぱいを舐め始める。クイクイと乳首をつねりながら。

 少年のお姉さんへの攻めが始まった。


 丁寧に服の上からおっぱいを陵辱していく太陽君。乳首を噛まれるとどうしても声が出てしまう。定期的に飲まされた淫薬が効いているのだ。興奮したくなくても、興奮してしまう女捜査官の身体。

「うぐっ……あはんっ!――」
 なんて悩ましい声を出すのかと思う。こんなことをされても、身体が淫欲で満ちているのだ。

「や、やめ……て……」
 触られて、あっという間にエロの感覚に取り込まれた女捜査官。
 もはや抵抗は皆無。
 その無抵抗女に、少年のペニスがグイとぶち込まれた!

「あひゃあああああああああああああっ!――――」
 一撃で絶頂へ導かれる!
 凄まじい衝撃が、女捜査官を襲うのだ!
 後ろからのバック攻めに狂いうつ女!

 ――だめええええええええええっ!――

 もう目が逝っている。もう、快楽の虜だ。それほど飲まされた淫薬効果は大きい。
 ペニスは巨根だ。えぐるように膣に潜り込み、出し入れが繰り返される!

 こうして一時間ほどが過ぎた。

「さて……本来なら君も洗脳するところなんだけど……」
 散々犯しぬいた後に、冷静に言う太陽君。

「君には、今回の僕の行為を情報として報告してほしいんだ」
「あっ……え?」
 息も絶え絶えの女捜査官。
 じっくりと身体中を開発されたその後に、言われる言葉。
「記憶も消さない、洗脳もしない」
 クスッと笑う。
 あえて情報を出して、向こうの出方を見ようというのだ。

 いやらしい攻撃でもある。

 こうしてこの女捜査官は、このまま解放されたのだった。


 女捜査官がわざと解放されている頃……

 黒川玲子は、鑑識の立場から捜査を続けていた。
 犯人が死亡した精神病院にきているのだ。

「これです」
 と、カルテと報告書を渡す医者。

 名前は峰条勉。ほうじょうつとむと読む。
 連続レイプ犯の男だった。逮捕されて、精神疾患と判断され、この病院に。
 そして数ヵ月後に死亡。

 カルテには、奇形状態になったペニスのことが書いてあった。

「これって、奇形なんでしょうか?」
「ええ……先天性と書いてありますね」
 このカルテを作ったのは、この医師ではない。そう書いてありますねしかいえない。

「こういうことってあるのでしょうか?」
「絶対にないとは言い切れませんが……」
 と言って、お茶を濁す。正直、説明つかないので、適当に書いたというのが本音だろう。

 ――適当に書いたとしても……よ。

 玲子は、適当だったとしても、ペニスが二つに見えたということに注目している。
 峰条のペニスに異物がついていたということは、間違いないはずだ。

 ――はあ〜異物ね。

 ちょっとため息をつく玲子。知的なメガネがピクッと動く。

 さらにこちらにはカルテ以外の詳細な資料も保存してあった。
 今度は資料室へ。

 ここは、精神病院の資料室。
 さまざまな患者の資料がここに保管されている。ほとんど、犯罪者の患者だ。
 この病院は、裁判で精神疾患により、無罪や減刑された者を、更正させる目的の病院なのだ。

「これ……」

 玲子が目に留めたのは、ある文章。
 患者である峰条は、毎日のように俺は生まれ変わると叫び続けていたとある。
 そして、亡くなる前日に、

「俺は生まれ変わったんだ!」
 と一日中叫びまくっていたとある。

 ――生まれ変わったか……

 どうやらこれが気にかかるようだ、玲子は。
 白衣の上からこぼれそうな胸がピクッと動く。

 そして次の日、あっけなく死亡。
 死因は、不明。ようは突然死とある。
 
 考え込む玲子。

 ――やっぱり、一度会うべきよね……教授に……

 なにやら心当たりがあるらしい。
 玲子はじっくりと資料を見ながら考えていた。


 玲子が、特殊鑑識室へ戻ると、麗華がいる。
「進展があったわ」
「え?」

 ちょっと驚く玲子。
「捕まった捜査官が、解放されたのよ。それも記憶ばっちりで」
「なんですって?」
 これはチャンスだ。

「どうやらわざとらしいけど」
「……そう」
 解放されたとはいえ、陵辱されたことには間違いない。
 麗華が怒りに燃えている様子がよくわかる。

「犯人は少年たった一人。そして、特殊な生物を操る持ち主」
「ふんふん」
 聞き入っている。
「名前は太陽っていうらしいわ」
 むかついている麗華。犯人に対してだろう。

「本当に一人なの?」
「ええ、捜査官の話によればね」

 ――そうか……
 ちょっと考え込む鑑識官。犯人は少年一人。そしてあのピンク色の生物を操る。
 死んだ峰条勉は、ペニスに奇形……

「そっちはどうなの? 何か進展はあった?」
「ちょっと気になる事を結び付けたいと思ってるの?」
「気になる事?」

 気になる事と言われるとますます麗華は気になる。
「明日にでも、出かけてくるわ」
「え?」
「調べたいことがあるのよ、いえ……確かめたいの」
 玲子は何かとつながりがあると思っているらしい。

 これで……もしつながっていれば……対策もやりやすいわ。


 記憶つきで解放された捜査官から一夜。
 黒川玲子は、ある場所に来ていた。

「こんにちは」
「おお、よくきた」
 うれしそうにしているのはじいさんだ。
 どこにでもいる爺さんと言う感じの人物。

「実は、お聞きしたいことがあって……」
「わしに会いたかったのじゃな? よい心がけじゃ」
「あ……いえ……」
 またいつものが始まったと思う玲子。

「相変わらずいい体しとるのう〜」
「それ、思いっきりセクハラですよ」
 普通、赤の他人からこんなことを言われたら、今の女性は黙っていないだろう。
 だが、玲子は笑っている。それだけ心を許せる存在なのだろうか?

「ほほほ、さあさあ〜入ってくれ」
 じいさんに案内される特殊鑑識官。ここはどうやら大学のようである。
 大学の先生だろうか?
 二人は、研究室へ入っていった。
 研究室には、学生がある。
 その奥が教授の個室だ。

「話は聞いた……正直驚いているわい」
「ええ……私もです」
「また、あの事件の繰り返しかの〜」
 神妙な顔になる爺さん。二人は、応接室のような所で話し込んでいる。

「おじさまはどう思います?」
「手口はそっくりじゃ……しかし……」
 はっきりとは言い切れないという顔だ。

 二人は、数年前のある事件を思い出していた。
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