第3章


 数年前……
 ここは観光立国として有名なA国。

 国土の80%が原生林という国である。そして、首都以外に、原住民がこの原生林で暮らしていた。ここに、おじさまと呼ばれる助教授、御堂総一郎がいる。

 その助手が……黒川玲子。
 そう、彼女はおじさまの助手だったのだ。

 派遣された特殊鑑識官であり、御堂助教授の助手。
 それが黒川玲子の立場だった。特殊鑑識官は、任命される前に、必ず海外派遣をされる。
 場所はアメリカや欧米などであったが、希望すれば、この国にも派遣が可能だった。
 玲子は、A国の御堂助教授の文字通り叔父にあたる人物だったのだ。
 昔からこの叔父とは親しくしていた玲子。だからこのA国に派遣を希望した。

 ところがそこで、ある事件に巻き込まれる。
 それは、この国の連続レイプ事件だったのだ。

「ふむ、そのピンク色の生物が、あの悪魔の肉塊と似ていると言いたいのじゃな?」
「そうです」
 玲子は、今回の事件と、A国で起きた事件を結びつけてもいたのだ。

 悪魔の肉塊……
 そう呼ばれていたのが、このピンク色の生物とそっくりなのである。

 当時、最初は現地の警察が捜査を開始していた。ところが調べていくと被害者から妙な事実が浮かび上がった。それは、男に犯されたのではなく、肉球から出る触手に犯されたというのだ。信じられない警察関係者達だったが、事実とわかると、現地にいた御堂助教授に極秘協力を依頼。

 依頼を受けて、調べた結果……

 肉球とは、昔から原生林に住み着いていた特殊生物と判明したのだ。
 その生物は、たまに現れては、周囲いから悪魔の生き物として恐れられていた。
 森林伐採が進み、それが原因で、原生林奥地でひっそりと生きていた特殊生物が、
 女性達を襲い始めたのが原因だった。

「あれは、男が特殊生物に食いつかれてから起こった事件じゃったな」
「ええ……」
「確か……ペニスの上に食いついた……ではなかったか?」
 ペニスと言われると、ちょっと恥ずかしい玲子。
「そうですわ」

 これが、3年前の死亡した峰条勉と何か関連があると思っているのだ。
「なるほどのう〜」
 納得しているおじさま。

「おじさま、グリーン教授とコンタクト取れませんか?」
「無理じゃろう〜 わしらは追放されたも同然の身じゃぞ?」

 この事件を解決したのは、グリーン教授という現地の教授と、御堂助教授、黒川玲子だった。

 ところがだ……

 事件が解決したら、この事は口止め。つまり、ただのレイプ事件で、犯人は射殺されたことになったのだ。特殊生物や触手のことは一切報道されなかった。観光立国のA国としては、この事件の風評が一番都合が悪かったのである。

 つまり……

 レイプ犯は死んだ、ああよかっためでたしめでたし……これで終わらせたかったのだ。
 さらに、口止めでは終わらなかった。

「この報道に文句を言ったら、追放同然の処分じゃ、本当に思い出すたびに頭にくるわい」
 結局二人は、表向きA国の不適格者として国外追放になったのだ。

 協力したというのに……

「仕方ありませんわ」
 玲子は、帰国後、警察の上層部に理由を聞かれ、すべて話した。
 上層部は理解した。が、結局口外しないようにということだった。
 おそらく政府の上層部とA国の上層部でそう決まったのだろう。

 そして、皮肉にも、その事件での活躍が……特殊鑑識官の所長就任という原因になったのだ。
 
「しかし、あの事件は3年前ではない、6年前じゃ。しかも別の国。その精神病院で死んだ犯人と関係あるのかのう〜」
 そういう雑談をしていた時、

「え?」
 玲子が驚く。

 麗華からの携帯電話だった。内容は……

 襲われた女捜査官が病院で安静にしていた場所に……
 
 不気味な生物が現れたというのだ。
 玲子はすぐさま現場に向かうのだった。



 玲子が到着。
 メガネとおっぱいが、妖しく揺れていく。
 麗華がいた。事情を聞くと……

「そう……わかったわ」
 5人の女看護師が、餌食にされた。
 それも、コンセントのヒモの部分で……

「紐……ね」
 おそらくコンセントに変化して、襲い掛かったのだろう。
 さらに、妙なことがある。

 なぜか、女捜査官は襲われなかったという。
 目の前で看護師だけがやられたというのだ。

「ふざけてる!」
 怒る麗華。わざと女捜査官は襲わなかった……
 そう、見ているのだ。

 ――でも、どうしてここが……
 女捜査官は、この場所、この病院は知らない。
 拉致されていて、犯人が聞き出すことも不可能だ。

 ――まさか……

 嫌な予感がした玲子。
「麗華、捜査官の子に合わせてくれない?」
「え? 捜査官?」
 襲われた看護師ではなく、捜査官?

 不思議に思う麗華。
 

 特殊鑑識官玲子の質問が終わったようだ。
 女捜査官がいる部屋から出てきた玲子。
「麗華、悪いけど……あの捜査官の身体を……洗わせてくれない?」
「ええ?」

 洗う?

「おそらく……身体にあの生物の欠片とがが、付着している可能性があるの」
「それがどうしたの?」
「それが原因よ」
 意味がわからない麗華。

 逆にはっきり言った玲子。
 もう確信しているのだろう。

「その付着物から……この場所を特定されていると思うの」
「なんですって?」
 そんなことがあるのかと思う麗華。

 だが、本当だったらそれは大変なことだ!

 黒川玲子は、すぐに麗華の協力を取り付けたのだった。

 すぐに女捜査官の身体を調べ始めた玲子。
 身体の洗浄が始まった。といっても、普通に洗うだけだが。
 違うのは、洗ったモノをすべてバケツのような容器に回収していることだ。
 シャワー室で石鹸で流されたモノは、すべてバケツの容器に入れていく。

 ――ふう〜 一苦労ね。
 警察の病院だから、こういう事ができる。一般病院なら無理だろう。

 ――さて……

「悪いけど……鼻の穴、耳の穴……口……お尻やあそこ……それと尿の穴も洗うわよ」
「え?」
 お尻やあそこ……

「穴の中も全部よ……あなたのためなの」
 説得する玲子。特殊鑑識の読みは当たっていると思っている。
 あの生物に襲われたのなら、あらゆる穴という穴も怪しいのだ。
 なんとか理解してくれたようだが、これからが大変だった。

「も、もう……」
「もうちょっと我慢して」
 
 尿道の穴を洗浄……
 
 さらに……

 浣腸器で浣腸中……

 ここまでしないといけないのかと思う女捜査官。
 なぜ玲子はここまでするのか?

 それは、過去の経験が生きている。
 玲子は、あの事件での事を思い出していた。



「どうじゃ?」
「はい、先生の言うとおりでした」
「やっぱりのう〜」
 爺さんが誇らしげに言う。
 被害者は、身体に付着物がついていて、それが場所を察知している原因だと突き止めたのだ。ここはA国。この、未知との生物の戦いがクライマックスを迎えている頃のことだった。

「鼻の穴などの……あらゆる所にも、付着している模様です」
「どこが一番、付着しておった?」
「そ、それは……」
 ちょっと恥ずかしい黒川玲子助手。

「ほほほっ、言わんでもよい。後で報告書に書いておいてくれ」


 あの時の思い出が浮かぶ玲子。思い出すと恥ずかしいものだが。

「もうだめ……」
「出していいわ」

 浣腸液を出す女捜査官。それをすべてバケツに出させる。
 こんな恥辱と思うかも知れないが、これをやっておくのは間違いない方法なのだ。

 ――結果を見てからだけど……後は消毒ね。
 次のことを考えている。

「あっ!――」
 玲子が、何かに気がついた。

 ――あのピンク色の生物。

 培養液に入れてあるあの生物のことだ。
 もちろんアレも……

 当然……場所を……

 すぐに電話を入れようとした玲子。しかし、逆に……

「玲子、特殊鑑識課の施設に!――」

 嫌な予感が当たったのだった……


 病院での女捜査官の身体の洗浄が終わると、すぐに玲子は、現場へ向かった。
 現場では、無残にも犯された特殊鑑識の女性達が、横たわっていた。
 5人ほどやられたのだ。

 唇を噛み締める黒川玲子。
 もっとはやくあの培養液にいるピンク色の生物が、
 居場所を教えていると判断できたら……

 思い当たるふしはあった。が、それだけでは、この証拠生物が現場を教えているとは決め付けることも出来なかった。A国で起きていたことをそのまますぐには当てはめたくなかったのだ。だが、疑惑が強まったので、爺さんの所へ行き、この病院の事件が起きてからやっと……確信したのだから。

 それでも自分を責める玲子。特殊鑑識長の立場もある。
 玲子たちは被害者を病院へ移送する。

 同じ洗浄をやるために……



 落ち込む玲子。
「気にしないで!」
 二島麗華が、肩をポンと叩く。
 それでも落ち込んでいる特殊鑑識官。

「わかっているわ」
 落ち込みながらも、次の事は考えているらしい。

 あれから、洗浄した液体を調べた結果、案の定、付着物が検出された。
 これが皮肉にも居場所を教えてしまったことになる。そしてピンク色の生物も……

 これによって、A国で起きた事件との関連性はますます強くなった。

 ――間違いない……

 こうなると、A国で起きた事件が経験となる。
 退治方法もだ。普通なら、A国での資料もほしくなるだろう。

 しかし……それならなぜ……
 玲子がこの事件を担当する前から、襲ってこなかったのか?

 おそらく……いつでもやれば出来る状態だったのだろう。
 だが、あえてやらなかった。
 そうならなおさら憎らしい!

「鑑識長、あのピンク色の生物も処分しました」
「ごくろうさま」

 玲子の言うとおりに処分したらしい。処分方法は簡単。焼却か、日にちが経つと、付着物は、信号や匂いを送らなくなる。だが、もう居場所は知れているはずだ。

「それにしても、付着物が……」
 麗華には未だに信じられない。
 が、警察関連施設である特殊鑑識課が襲われた以上、玲子の予測は当たっていると思っている。対生物用の銃は、麗華達、数人が持っているだけ。それも、敵に会わなかったのでは意味がない。

 麻生美緒がやってきた。
「状況は聞いたわ」
「お騒がせしています」
 申し訳なさそうな玲子。

「玲子さん、あなた過去に似たような事件を経験しているとか」
「ええ、一応機密情報だったのですが」
「その機密情報の許可は上層部から貰いました。全部話して頂戴。すべて参考にしたいの」
「はい」

 こうして玲子は、A国の件を、特殊捜査官所長、麻生美緒にも話すことになる。


 会議が始まる。
 口止めされていた情報をすべて開放した玲子。
 美緒以下、麗華やラブティーナ達は一応に驚いた。

 あの気味の悪い生物が、A国で存在していたこと、それを国の判断で口止め、封印されたこと。政府もそういう方に動いたこと。
 これを聞けば誰だって驚く。

 そこで、会議で決まったことは、対生物用銃や兵器を作って対抗し、犯人を逮捕する。
 これが、はっきりと目標となった。

 あれから5日が経った。
 いずれ必ず犯人は、また襲ってくるはずだ。


 場所はもうわかっている。だが、向こうは対生物用銃などの存在は知らない。

 それよりも、耳寄りな情報が入った。女捜査官が監禁されていた場所が特定できたのだ。
 今回は記憶があるから特定できた。

 もう、捜索は入っている。もちろん……
 もぬけの殻だったが。
 対生物用銃は、すべての女捜査官に持たせている。だが、実戦に使ったのは、麗華だけ。

 訓練用のピンク色の生物は、あの場所の特定をされるため処分。
 そこで、シミュレーション動画を使って訓練中。

 特殊鑑識官として出来ることはやっている玲子。
 それでも……気になるのだろう。

 と、その時!
 
「きゃああああああああああっ!――――」

 麗華の悲鳴だ!

 来た!
 きたのだ!――

 ――来たわね!
 グッと対生物用銃を握り締める!

 再び襲ってきたのだ。
 あの淫生物が……肉塊が……


「こ、こいつが肉塊?」
 顔ぐらいの大きさの肉球が、5〜6個浮いている。
 麗華の目の前に……

 薄気味の悪いピンク色だ。ここから変形可能の触手を出して襲ってくるらしい。
 しかし、今までこの肉球は見たことがなかった。
 玲子からA国の情報で聞いただけ。

 今まで襲われた被害者からも、前回の戦いでもこれは始めてだった。

 みな、一応に驚いている。とうとう本腰で攻めてきたというわけか?
 今までのように紐や縄ではなく、いきなり本性をあらわして……

 肉球の真ん中には、目玉がある。キョロキョロと周りを見ている。
 なんて気味の悪い目玉だろう。

「撃って!」
 麗華が対生物用銃を放った!

 ズゴーンッ!

 細かいクモの糸が、肉球にまとわりつく。だが、それを無視して、触手を物凄い勢いで出してきた!

 しかし、すぐに異変が起こる。クモの糸が、肉球にめり込んでいくのだ。
 異変に気付いた肉球の目玉が、ブルブルと震えだした。

「グエエッ!――」
 奇怪な音を出して、悶える肉球の目。苦しみ始めた。そして、緑色の液体を飛び散らせながら……

 粉砕されていった……
 
「やった!」
 麗華が歓喜の声をあげる。憎い憎いこの生物をやっつけたのだ。
 玲子の実験台のピンク色の生物以外で始めてだった。

「あっ!」
 別の部屋で悲鳴が聞こえる。
 すぐに麗華は向かった!

「きゃああああああああっ!――」
 女捜査官と何人かの特殊鑑識官が肉球に捕まっていた。両腕を縛られ、股間をまさぐられている! 

 そこに、黒川玲子が、一発ぶっ放した!

「グエエッ!――」
 肉球が糸によって粉砕されていく!

「くっ!」
 後ろから来た肉球に絡まれる玲子!
 すばやく玲子の両腕を掴み、胸をぐるぐる巻きにされる!
 口を噛み締めて悶える。豊満な胸を無造作に犯される!

「こ、この!」
 もがくが、そうこうするうちに、下半身のスカートがめくられていく!
 思わずキュッと太ももを閉めるが、そんなことは無視するかのように、股間の奥へと侵入して行こうとする!

「グヘエエッ!――」
 肉球が苦しんだ。だが、蜘蛛の糸によって目の玉に亀裂が入る!

 粉砕されていく肉球……

 麗華だった。

「大丈夫?」
 玲子を助ける麗華。そして周りを見る。

「情けない! なんで銃を撃たないの?」
 他の女捜査官に怒鳴る麗華。他にも対生物銃は与えてあるのだ。しかし、今回初めてこんな不気味なモノを見せられたのだ。恐怖と焦りでみな動転していたのだろう。

「ふう〜」
 黒川玲子が起き上がった。
「麗華さん。初めての実戦だし、仕方ないわよ」
 玲子がなだめる。

「にしても……今回が初めてじゃない? こんなの」
「そうね」

 今までは必ず鞭や紐に化けていたのだが、今回は違った。
 まさしく本性を現したといってよい。

「いよいよ本格的に……ってことかしら?}

 ――う〜ん……
 玲子もなぜ、今頃本性をあらわすような攻撃をしてきたのかと疑問に思っている。

 と……

「うわっ!」

 部屋の外から異様な目玉がこちらを見ているではないか!
 この部屋の外は、特殊捜査課の地下駐車場だった。そこに、巨大な肉球が目玉をこちらへ向けているのだ。大きさは、直径1メートルはある。

 ――こいつが大元?

 玲子はそう思った。
 これが子肉球を操っている親肉球だろう。
 どうやら、子肉球がやられたので様子を見に来たらしい。

「みんな! 撃って!」
 麗華が叫ぶ!

 一斉に対生物用銃を打ち込む!
 巨大目玉肉球は、あっという間に粉砕された!

 あっという間……あっけなく。

「やったああああっ!――」
 麗華が喜んだ。今までやられっぱなしだったのだ。こんなにうれしいことはない!
「やったわね」
 鑑識官玲子もにっこり。

 ――にしても……どうしてこう堂々と……
 それだけが玲子は引っかかっていた。


 第四章 少年

 震える唇。
 震える拳……

 少年の戸惑いは……
 凄まじい!

 ――どういうことだ?

 ――僕の分身が……

「やられたというのか? ありえない! ありえないことだ!」
 金髪の少年はこの異常事態に対処できない。今まで好き勝手にやってきた太陽君。
 そこへこんな仕打ちが起きたのだ。
 椅子に座って考え込む。
 その様子はイケメンにふさわしい格好だ。

 ――僕の油断か?

 今回、堂々と肉塊という肉球の姿を見せ付けたのにはわけがある。簡単にいえば、驚かしてやろうということだった。もう、隠れてこそこそが退屈になったのだ。
 そして複数の女捜査官を一気に拉致したかった。

 もちろん、最後はゆっくりと麗華を…

 肉球を見せたところで、相手は何も出来ないと思っていたからだ。

 ところが……まさしく大誤算……

 ――あの肉球を倒せるはずがない……しかし……
 大元の肉球さえ生命反応がないのだ。まさしくやられたと判断するしかない。

 ――なぜだ……

 考える。
 肉球を操る金髪少年。だが、考えてもわからない。
 
 ――肉塊を退治できる方法を見つけたというのか? 馬鹿な……そんなはずない。

 ――だが、出来るとすれば……誰が……

 知りたい、知りたい太陽君。
 すぐに作業に向かう。

 その作業とは……

 パソコンであった。


 太陽君がパソコンで何か打っている。
 すると、どっかのページが開く。

 なんと、画面から暗証番号を聞かれている。
 それをなんなくキーボードで打ち込む少年。

 すると……

 特殊警察組織体系資料と書かれているページが開く。

 これは……

 ハッキングだ。

「ふん、まったく対抗策なしか。ちょろいもんだ」
 まるでセキュリティなど最初からなかったような雰囲気で画面を見る太陽君。
 この少年、天才ハッカークラスだろう。

 このハッカー行為は、初めてではない。
 過去にも警察組織へ何回もアタックしたことがある。
 そこで特殊捜査官の事も知ったのだ。

 ――さて……まずは……

 前回見た特殊捜査官のリストを見ている。
 まずは所長、麻生美緒のプロフィールがある。
 顔写真、全体写真、現在の配属や性格なども記載されている。
 前回と同じだ。ここで特殊捜査官の人数や、やっている事、現在扱っている事件が手に取るようにわかる。

 もちろん、本来ならすべて極秘リスト。

 二島麗華のスリーサイズまで書いてある。
 次々と特殊女捜査官のファイルを見ている少年。

 ――う〜ん……

 特に対抗策を打ち出せるようなメンバーが増えたわけでもないようだ。
 前回のハッキングと同じメンバー。地方に配属されていた女捜査官がこの事件のために増員されたのが前回と違う所ぐらい。
 こいつらで今回の事を成し遂げたとは考えにくい。
 なんせ一年近く無能で追いかけているだけなのだから。

 と、思っていると……

 ――ん?

 麻生美緒のプロフィールに、現在、特殊女捜査官は、特殊鑑識課と協力体制にあると書かれている。

 ――特殊鑑識課だと?

 前にハッキングした時には、こんな記載はなかった。
 なるほどと思う少年。

 次に、特殊鑑識課の組織図を開く。
 そこで見たのは……

 特殊鑑識課……科学的な捜査及び、現代では考えられない特殊な事件を扱う組織とある。
 
 ――特殊鑑識課か……

 そこのリーダーを閲覧。

 特殊鑑識官のリーダーは……黒川玲子とある。
 さらにプロフィールを開く。

 顔写真、プロフィールからスリーサイズ。
 
 特に胸がでかいことがこと細かく詳細に書かれて……
 いや、さすがにそれは書いていなかった。
 
 ――現在、謎の連続レイプ事件の犯人逮捕向けて、特殊捜査官と協力中……

「なるほど……」
 だんだんやられたわけが分かってきたようだ。

 黒川玲子。

 この特殊鑑識官は、過去にA国で似たような事件を取り扱っており、
 今回、この任務にあたっている。現在、対生物用銃を開発中と書かれている。

 ――対生物用銃? へえ〜なるほどね……

 なんと、すべて筒抜け。

「それに……過去の事件?」
 さすがの太陽君もそれは知らないようだ。
「ふふふ……」
 笑う太陽君。こいつは面白いと思ったのだろう。

 ――そうか……僕の肉塊対策はあるというわけか……

「僕の驕りが今回のことを招いてしまったらしいな」
 自嘲気味に理解した。そしてさらに笑う。きれいな少年だが、笑うととたんに醜くなる。

「なら、その対生物銃とやらを、こちらで潰してやろう」
 面白くなってきた太陽君。

「それと……」

「ターゲットも変えるか……」
 
 ターゲット?

 ――僕は今まで二島麗華を最後の獲物にしようと思っていたけど……

「この黒川玲子の方がよっぽど堕としがいがありそうだ」
 黒川玲子の表情を見る太陽君。パソコンの画像を食い入るように見る。
 メガネをかけた知的美人という顔立ちの黒川玲子。

 スタイルも申し分ない。特に豊満なおっぱいは最高のモノだ。
 特にこのメガネがいい。

 これを徐々に追い詰めて……

 こういうのが大好きな金髪美少年。

 こうして太陽君のターゲットは、
 二島麗華から鑑識の黒川玲子に代わっていったのだった……



 強力な銃である対生物用銃。
 これさえあれば、あの肉球をも退けることができる。
 特殊鑑識の玲子の本領発揮といったところだ。

 だが、いつ再戦してくるかもわからない。
 油断は禁物。その点もぬかりない玲子。
 この対生物用銃を、さらにバージョンアップさせようとしているらしい。

 それが出来たのは爺さんである御堂教授のおかげだ。

 実は最初、玲子は、この事件がA国の事件と似ているので、A国の捜査資料の協力を取り付けたいと上層部に進言しようとしていた。
 しかし、それでもし拒否されたらそれで終わり。A国はまず拒否するだろう。
 政府を通じてやって拒否されたら、道は閉ざされる。

 そこで爺さんに頼み込み、A国のグリーン教授から、独自の資料を秘密裏に手に入れたのだ。グリーン教授は、最後まで爺さんと玲子の追放に近い処分には反対してくれた理解者だった。だいたい協力してくれとA国から言われたのに、都合が悪くなると追放では、誰だって同情する。

 今やネットの時代。情報はあっという間だった。

 A国では、御堂と黒川玲子は、捜査資料はすべて取り上げられ、何の資料も研究成果も報告できないまま、日本に強制送還されたのだ。グリーン教授にも資料の提出を迫られ、取り上げられた。

 が、そこは学者さん。命よりも大事な研究資料をむざむざ渡すわけがない。
 ひそかにコピーをして保存していたのだ。
 それを爺さんの所まで送ってくれた。

 それを元に、さらに強力な銃と、探知機を作った。
 探知機は、あの肉球に反応するすぐれもの。
 こいつは、A国でも大活躍した代物なのだ。

「これを施設のあらゆる場所に置いて」
「はい」
 部下の特殊鑑識官に渡す。
 丸い火災報知機のような物体だ。

 そして、もう一つ持っているものがある。
「玲子さん、これらはなんですか?」
「これは、探知機、それと携帯型探知機よ」
 探知機とは、触手生物を探知する装置らしい。数キロメートル先から相手がわかるという優れもの。
「こいつがあれば、やられる前にこっちがやれるのよ」
 A国でこれは非常に役に立った探知機なのだ。これの製作工程も、グリーン教授からひそかに送って貰った。
「なるほど」
「とにかく、これで守りは固められるはず」
 これ以上、犠牲者は増やしたくない。

 ――問題は……相手の居場所を突き止めることね。アレが完成すれば……

 今後の課題はこれだった。
 そして……おそらく……

 数日中に少年は再戦を仕掛けてくるはずだ。



 数日後……予感は的中していた。
 突然、探知機が作動!

「きた!」
 麗華が叫ぶ! 周りが慌しくなった。これから再戦である!
 徐々に探知機のサイレンの音が早くなる。近づいている証拠だ!

「構えて!」
 麗華が部下に指示を出す! この数日の訓練が生かされる時がきた。

 ガシャーンッ!――

 窓ガラスが割られた!
 ぶっとい触手が何本も迫ってくる!

 もう、こそこそではない、堂々とだ。
 人海戦術のように群がっている!

「撃って!」
 次から次に銃を撃ち放つ!

 触手たちは、糸が絡まるとそれが食い込み、粉砕されていく!
 だが、次から次にひっきりなしに来る触手群!
 今回の少年の作戦は物量作戦なのだろうか?

 その物量作戦をあざ笑うかのように、女捜査官達が、触手を退治!
 それでも次から次に無限のようにやってくる。

 が、窓ガラスから来た触手が引っ込み始めた。
 ウニョウニョと退散行動を開始?

「追うのよ!」
 ここで根元の本体を潰そうとする麗華たち!
 ここで玲子も参加!

 窓ガラスの外は庭だ。
 そこにうじゃうじゃ、いるいる!

 ものすごい数だ。護衛の警察官はあわてふためいている。

「撃て!」
 恨みを込めるかのように撃ちまくる麗華たち!
 帰国子女のラブティーナも懸命だ!

 何十本もある触手。うにゃうにゃと襲い掛かってくる。
 しかし、今の麗華達には怖くない!

 対生物銃の威力は抜群!

 ところが……次々とやられていく触手郡の後方に、なにやらじっと見ているような生物がいる。地中から潜望鏡のように飛び出ているのだ。攻撃はしない。

 司令塔だろうか?

 地中と色が似ていて、麗華達は気付かないようだ。
 じーっと見ているように見える。

 不気味だ。

 すると、麗華達が触手群をほぼ壊滅させ始めた。
 それに対抗するように、本体が地中から出てきたのだ。

 例の肉球である。
 前回と同じ大きさの巨大なモノ。こいつが、今回の親玉だ。

「撃てエエエエエエッ!――」
 怒りを込めて撃ちまくる麗華達!

「ギキャアアアッ!――――」

 本体はあっという間に粉砕……

 同時に……
 例の地面に似た色の潜望鏡は、地中に潜っていった……
 まるで潜水艦。

「やったわね」
 玲子が戦果を祝福する。予想通りの効果だった。
 探知機もしっかり作動。

「これなら怖くないわ」
「でも、これでは防御しているだけ。相手の居場所を突き止めないと……」
 篭城だけしていても、勝利はない。

 だが、今回は探知機の成果もあった。
 女捜査官と女鑑識官達は、勝利を味わっていた。



 一方……

 こちらは太陽君。

「なるほどね」
 モニターに映し出される今回の戦闘シーン。
 少年の前には、パソコンがあり、横には……

 あの例の潜望鏡生物がいる。
 こいつをパソコンにつなげて、映像を見ているのだ。

 こんな事が出来るとは……まるで生物機械である。

「アレが対生物用銃か……」
 次から次に、自分の分身が、無残に粉砕されていくのを冷静に見ている。
 ここまでは想定内なのだろう。

 ――アレが二島麗華だな。相変わらず筋肉馬鹿だね。
 勢いで行く二島麗華。筋肉隆々の女戦士タイプ。
 少年には馬鹿に見えるらしい。

 ――こいつか……

 次に黒川玲子が映った……
 機敏に動く、巨乳の知的女性。タイトミニがよく似合っている。
 メガネが非常に似合う。ハッキングしてパソコンで見た映像とは一味違う。

 ――ますます……気に入ったよ。
 完全にターゲットは移動したといっていい。

「こうなれば……物量で行くのも手だな。それと……」
 映像を見ながら対策を考える。

「よし、次はこの僕自ら出向いてやろう」
 次の戦いでは、太陽君も直々に出陣するらしい。
 今度はどうするのであろうか?

 その頃……黒川玲子は、新たな防御対策のクスリを作っていた……



 その一つ目はワクチンだった。
 これで洗脳を防ぎ、身体の洗浄も不要になるらしい。
 触手の出す特殊な液の効果が無効になるわけだ。

 そして二つ目が、対生物用防御液だった。

「本当、役に立つわ」
 A国の資料を元に作っているのだ。グリーン教授は、ひそかにコピーしていたらしい。
 これは本来軍事秘密にされてしまっている代物。

 こいつは、身体に巻きついた触手が逆に溶けてしまうというすぐれもの。
 言い換えれば対生物銃の効果が身体中にあるという状態になるものだ。
 薄い粘液状のもので、服の上から身体中に吹きかけると、24時間は持続効果がある。
 対生物用銃の弾の成分が濃縮されているものなのだ。
 これならたとえ、触手に捜査官が巻かれても意味はなくなる。

「最後はコレ」
 対生物用銃で使う新たな特殊弾丸だった。

「これを撃ち込めば……居場所はわかるはず」
 強い決意で次の戦いに望む女鑑識官。

 今度は相手の居場所を突き止め、王手をかけようというわけ。

 少年は、必ずまた攻めに来る。
 いよいよ次の戦いが始まる。


 戦いは次の日だった。
 少年の反撃は早い。

 探知機が警報を鳴らす。
 即座に女捜査官達は身構える。

 今回は、触手退治だけではない。相手の居場所を探ることも目的だ。
 黒川玲子が、対生物用銃よりも一回り大きい銃を持っている。
 こいつが、居場所を教える弾丸を撃つ銃らしい。

 今回は、肉球の本体を少年の元へ逃げるように誘導したいのが本音だった。
 居場所を突き止めたいからだ。だが、そのチャンスは幸運にもすぐにやってきた。

 それも本人の登場で。
 太陽君自ら参戦してきたのだ。

「う……撃て!」
 あまりの堂々とした態度に驚く捜査官達。
 特殊捜査官の建物の入り口に堂々と立っている少年。
 その少年に対し、対生物用銃が撃たれる!

 瞬間、少年の後ろから無数の触手群が数百となって襲い掛かってきた!
 次々と銃で撃っていく!
 少年には、大蛇のような触手がグルグルと巻きつき、少年を守り、その周りを中ぐらいの大きさの触手がさらに保護するように動いている。先鋒の触手だけが、女捜査官に襲い掛かる!

 ――中々やるね。
 先鋒の触手群を見事に銃で退治していく捜査官達。
 訓練の効果は絶大だった。

 ――ならば……これはどうかな?
 触手の先端が口を開き……

 ブシャッ!――

 粘液を直接吐いてきたのだ!
 何十匹の触手群が一斉に粘液を吐く!
 これは想定外!

「うわっ!――」
 捜査官達が、次から次に、身体に粘液を吹きかけられていく……
 太陽君はにやりと笑った。

 粘液が固形になり、ミニ触手に変身していく!
 これで巻きついて拘束しようという手だ。

 しかし……

 ――あっ……
 太陽君の表情が変わる。

「な、なんだと?」
 驚きの表情になる少年。
 ミニ触手になった粘液が……糸に絡まりことごとく粉砕されていくではないか!

 これは考えていなかった太陽君。
 これさえも対策済みだったとは。
 粘液は無効だ。それどころか捜査官の数が十人以上になり、一斉に太陽君を守っている中堅触手も殺されていく!

「お、おのれ!」
 大蛇の触手を増やし、守りを固める!
 その大蛇の触手にも銃弾が撃たれた!

「うおっ!――」
 引き下がる少年!

 このままでは捕まってしまう!――

 とっさに触手の数を増やし、壁を作る。
 厚い厚い壁を……

 その向こうで様子を見ることにしたようだ。
 すると、麗華とラブティーナがやってきた!

「なんとしても捕まえるのよ!――」
 犯人が目の前にいるのだ。ここで引導を渡し、逮捕したいのは当然。
 それで事件は解決する!――

 だが、1メートル異常の分厚い壁を触手で作られた。
 こうなると壁を壊すのに時間がかかる。が、太陽君は逃げようとはしない。
 
 ――粘液対策もしていた……
 考える太陽君。

 ――しかし、このまま尻尾を巻いて逃げろというのか?

 プライドが許さないようだ。

 この触手の壁は、マジックミラーのようになっており、太陽君からは女捜査官が見えるが、女捜査官からは全く見えない。

 その時、黒川玲子がやってきた。
 状況を冷静に判断。
 一回り大きい銃を構えた。
 特殊なスコープも頭につけている。どうやら、壁の向こうが見渡せるらしい。
 こういうのも過去に経験済みなのだ。

「あっ……」
 少年がそれに気付く!

 だが、一瞬遅かった。狙い済ましたように、玲子から放たれた特殊弾丸が、少年の額に直撃!
 どうやら、触手の壁を貫通できるすぐれものらしい。

「くわっ!――」
 なにやら液体のようだ。当たった瞬間、霧の噴射のように身体中に散っていく!

 ――な、なんだ?
 動揺する太陽君。いったい何が起こったのかと思う。
 サッともう一度目の前を見る。捜査官達が必死に壁を銃で撃っている。
 その後方に黒川玲子がいた。

 ――あっ……

 笑っている?

 ほんのわずかだが、笑みがこぼれているのだ。
 それは明らかに……

 余裕だった。しかし、その余裕の表情が少年の心に火をつける!

 ――おのれえええっ!

 怒る太陽!
 侮辱されたと思ったのだ。
 今まで思い通りになっていた、好き勝手に陵辱していた太陽君の行動が、劣勢に立たされている!
 だが、ジリ貧だ。いずれは壁は壊れる。それに体力もなくなってきた。触手は身体から産み出されるのだが、それは体力を膨大に奪っていくのだ。

「うおおおおおおっ!――」
 少年が叫ぶ!
 金髪の髪が揺れる!

「よくも!――」
 黒川玲子のほんのわずかの笑みが、相当気に入らなかったらしい。
 プライドを崩された怒りが凄い!

 だが、ここは逃げるべきと判断。そうしなければ、本当に逮捕される可能性もあるのだ。
 少年は、栄誉ある撤退を決めた。

 壁をさらに厚くして、逃走を始めた少年、木見太陽。

「追え!――」
 麗華が部下に声を張り上げる!
 一斉に壁を壊した部下達が、追跡を始めた。

「玲子、追跡は可能?」
「今からパソコンでチェックしてみるわ」
 うまくいくはずなら、あの付着した液体が、居場所を教えてくれるのだ。
 にしても、太陽君自らが来てくれたのは、都合がよかった。

 少年への追跡が始まる。



 ――はあ〜はあ〜

 心の中で、残酷な敗北感を味わっている太陽君。あの特殊鑑識官、黒川玲子にやられたと感じているのだ。やっとの事で秘密のアジトになんとか帰れた。
 そして、極限の腹ペコ状態。触手を産み出すのは非常に体力を消耗するらしい。
 冷蔵庫の牛乳を一気飲み! さらに、おもむろにハンバーガーに食らいつく!
 いつもなら、レンジでチンするのだが、もうそれどころではないという表情だった。

 まだ、気が治まらないのだ。
 あの表情が……黒川玲子の勝ち誇った表情が……
 
 気に入らない!――

「くそっ……ふざけやがって」
 机にこぶしで怒りをぶつける!
 女に翻弄された。この力を身につけてから、初めての屈辱だった。
 今までは女を翻弄していたのだから。
 太陽君がこの力を身につけたのは、数年前。

 ふとしたことで、身体を生物にのっとられた。
 それも男に……

 みじめに犯された後のことだった……
 最初は、絶望感さえ出ていた。同性に犯され、こんな不気味なモノに……

 犯されたのだから。

 だが、今では……それを自分の意識で操っている。
 
「あの女……」
 憂さ晴らしに、女を狩ってこようかとも思ったが、それさえも逃げで仕方なく他の女性を……という気持ちが強い。今日は、女捜査官を2〜3人拉致するつもりだったのだ。

 ――こうなりゃなんとしてでも……
 意地がある。一般の女性を拉致することは簡単だ。

 が、それでは太陽君のプライドは傷つく。

 心に決めた太陽君。
 一般の女性は拉致せずに、なんとしてでも女捜査官達だけにこだわる……
 そして、あの黒川玲子を突き落とすことだけに……

 集中する!――

 バクバクと3個目のハンバーガーを食っている。
 その時……

 ――ん?

 アジトの外が騒がしい。

 ――なんだ?

 外で見覚えのある声が……

 ――え?

「まさか!――」
 思わずドアを開ける!

「いたぞ!」
 麗華が叫んだ!

 アパートの下で女捜査官達が騒いでいる!

 ――なっ?
 驚く太陽君!
 そりゃ、いきなり女捜査官達が、ここに来たら驚く!

 ――どういうことだ!
 わけがわからない。なぜ、この場所がわかったのか?

 慌てる少年。金髪の髪を乱しながら、どうするかを考える。
 ここは逃げるだけだが……

 完全に頭が真っ白になった。
 この場所を特定されるとは思ってもみなかったのだ、そりゃあ動揺する!
 逃げる事は決めたが、ここにはパソコンや私物がある。

 が、それを持っていく暇などない!――

「なぜだ!」
 認めたくない現実が一気に少年を襲う!
 
「開けろ!」
 麗華達が目の前までやってきている。この部屋のドアをこじ開けようとしているのだ!
 触手でドアを開かないようにしている。

「おっ……おおおおおおおおおっ!――――」
 怒り狂う太陽君!
 予想外の事に動揺し、憤慨しているのだ!

 扉が強引に壊された!――

 少年は大蛇を身にまとい、麗華にそれをぶつけた!

「ぐわっ!――」
 女捜査官が2〜人倒れる!
 次から次に触手を出して女達を拘束しようとするが……

 やっぱり駄目だ。触れたとたんに、粘液糸が絡まり触手は粉砕されていく!
 太陽君は天井を見た。

 即座に天井に触手が突っ込む!
 ぶち破ったのだ、天井を!
 ここは3階。上はない。
 このアジトを天井から脱出するつもりだ。触手の大蛇の上に乗り、天井の上へ向かう金髪少年。

「逃がすな!」
 二島麗華が、声を張り上げる!
「追えええええっ!――」

 天井の上にいる少年。次に手から触手を出して、隣の屋根にそれを食いつかせる!
 そして触手自身を巻きつけて、瞬時に移動した!

 こういう芸当も出来るらしい。
「逃がすな!」
 下から追いかける女捜査官達。
 
 鬼ごっこが始まった。


「右へ2キロの方向よ」
 黒川玲子が、少年の居場所を教えている。パソコンには、赤い印がある。
 それが少年の位置情報だ。あの特殊弾丸から出た液体は、少年の居場所を的確に教えているのだ。少年の行動は、包み隠さず丸見え。

「了解!」
 無線で連絡を受けた女捜査官達が、追跡を続けている。
 麗華とラブティーナの目が鋭い。もう、追い詰めたような目をしている。

 ――今日こそ、必ず!――
 麗華は心に誓っていた!

 逃げ回る金髪……
 逃げるしかないのだ。
 精神的に追い詰められている。

 が、なぜ追跡が可能かは理解し始めていた。悔しがっている暇はない。
 なんとかして、この液体の効果を無効にしないといけない。
 だが、その方法がわからないのだ。

 ――洗えばいいのか?
 逃げながら考えてはいるが、そんなことで可能なのだろうか?
 それと効果の時間も知りたい。

「あっ!――」
 パトカーで先回りされている。少年は、ずっと屋根を伝わって移動中。
 まるでねずみ小僧。さらに、この先は……

 平地だ。少年は引き返す。平地に降りるのは危険。

「南に向かっているわ」
「了解」
 パソコンで丸見え状態。これでは逃げる事はまず不可能だった。
 モニターを見ている黒川玲子。メガネをクィと動かす。

 ――これで逮捕できれば……解決ね。

 今までやられた女捜査官や女鑑識官、それと民間の女性達の敵もうてる。
 黒川玲子は、じっとモニターを見つめていた。



 汗が出てきたようだ。もう体力は限界に近い。

「くっ……」
 身体が栄養を欲している。牛乳一本と、バーガー3個の体力はもう消えた。
 大蛇のような触手を何本も動かすには、並みの体力じゃない。
 身体から産み出すのにも、体力はいるし、動かすのにもいる。

「あっ……」
 目の前に山が見える。


 ――山……か……

 何かを感じたのだろうか?
 少年は大蛇と一緒に山へ向かっていった……



 追い詰められたといっていいだろう。
 一応山へ逃げ込んだのだが。だが、何か考えがあるらしい。

「了解」
 麗華が声を張り上げた!

「山狩りよ!」
 太陽君を追い詰めた麗華達。
 周りを一般の警察官で固め、自分達は一斉に玲子の指示の元へ向かっていく。

 ――あのガキッ! これで終わりにしてあげるわ!
 肉体派の二島麗華が、心で誓う!


 一方の少年。
 よく見ると大蛇がいない。
 まるで無防備だ。どうしたのだろうか?

 しかし、彼は微笑んでいる。疲れはかなりあるが。
 向こうから女捜査官の声が聞こえる。逃げないのだろうか?
 黙ってこのまま捕獲されるつもりなのだろうか?

 いや、そんな少年ではないはずだ。

「いたわ!――」
 逃げずにいる少年に大勢の女捜査官が近づく。

「もう逃げられないわよ!」
「それはどうかな?」
 丸裸状態の少年。服は着ていても、触手がないのは負けに等しい。
 相手の身体は触手を寄せ付けない。さらにワクチンで洗脳も不可能だ。

 囲まれた……
 だが、逃げない少年。
 じりじりと女捜査官が迫る。捜査官も、触手で弾き飛ばされる可能性はある。
 もちろん、使った触手は触れたとたんに、糸で粉砕されるだろうが。

「構えて!」
 麗華が、拳銃で威嚇するように指示。こっちの銃は、人を殺せる銃だ。
 もちろん、少年にも通用する。

「殺したら殺人罪だぞ」
「殺されたくなければ、手を上げなさい!」
 
 素直に従った……なぜか従った……
 一瞬、驚く麗華。

 ――あっ?
 麗華が足元を気にする。

「きゃあああああああああっ!――――」
 麗華の足元に……

 地面がない!

「いやあああああああああっ!――――」
 巨大なあり地獄のようになった少年の周り!

 これは陥没だ!
 太陽君は、地下に穴を掘らせていたのだ!

「わはははっ!――」
 自らも穴に落ちていく!

 こうして特殊女捜査官と太陽君達は、あり地獄の奥へ消えていったのだった……



「何が起こったの?」
 黒川玲子が、生き残った女捜査官の一人に無線で叫んでいる!
 予想外の出来事だった!

「巨大な穴が出来ています!」
「穴?」

 意味が分からない玲子。

「犯人が作ったものかと……」
「作った?」

 ようやくわかってきたようだ。

 ――触手に穴を掘らせたのね……

 そんな手があったと今にして思う。
「突入できない?」
「無理です、崖のようになって危険です」

 ――やってくれるわね……
 ここまで来てといいう感じだ。パソコンを見ると、少年は動いていない。
 相当深い穴なのだろう。

 じっとしていたのは罠。そして体力回復だったのだ。

「特殊機動隊なら、突入できるかしら?」
「出来ると思います、崖の上り下りとかは専門のはずですから」
「わかったわ、協力を要請するわ」

 こうして黒川玲子は、特殊機動隊に連絡を取ったのだった。



 倒れている麗華達。
 特殊女捜査官の20〜30人ほどが、この巨大な穴の下に落ちたのだ。

「う〜」
「う〜ん」
 女捜査官達が、目を覚ます。

「お目覚めかい?」
 目の前にいるのは、例の犯人少年。

「きさま!」
 女捜査官の一人が、対生物用銃を構えようとする。

 ――あっ!

 ない……

「ふふふ、僕がそんなミスをすると思うのかい?」
 とっくにすべて没収済み。
 こうなると攻撃手段はない。が、少年も攻撃は出来ないのだ。
 触手は、通用しないからだ。

「このガキャッ!――」
 麗華が叫ぶ!

「君は相変わらずうるさいね」
 麗華の声は、よく響く。

 この洞窟状態にはさらに。
 どうやら穴を彫って洞窟のようなものを作らせたらしい。
 そこに少年と捜査官がいるのだ。
 触手に囲まれた少年を囲む女捜査官達。
 だが、手が出せない両者。

 ――さて……どうするか……

 少年も迷っている。
 このまま逃げるのも手なのだが……

 拉致もせずに逃げるのは嫌なのだろう。
 その少年に天の声が聞こえてくるのは、数分後であった。



「24時間よ。それで効果が切れてしまうの」
「はい……」
 女捜査官と特殊鑑識官が話をしている。

「大丈夫、洗脳はされないわ、ワクチンが効いているから」
 これでペニスさま〜ペニスさま〜状態になることはない。

「後、犯人につけた特殊染料は、数週間は持つわ」
 次から次に詳細を述べる玲子。

 ――犯人の居場所はほとんど動いていないのに……

 目の前にいる犯人を逮捕できないという理不尽。
 もちろん、相手は地下だが。

「じゃあ、触手ガードの方は、後10時間ほどで切れてしまうのですね」
「ええ、それまでに捕まえないと、逆に触手に強襲されてしまうわ」
「わかりました」
 地上にい女捜査官達が、話をしている。機動隊がやってきた。
 が、奥底は、しっかりと塞がれている。
 シャベルカーか、掘削機でもないとこれ以上、掘ることは無理だ。

 ああでもない、こうでもないと話をしている。
 それを……

 潜望鏡タイプの触手は……

 しっかりと聞いていたのだ……
 地中に潜って……
 そして、情報を少年に送っている。



 少年を取り囲み、対峙している女捜査官達。
 そこに少年の笑みがこぼれた。

 ――いい事を聞いたよ。くくくっ……

 潜望鏡からの報告は筒抜けだった。ワクチンの効果は相当長い効果がある。
 特殊染料は数週間。

 が、触手ガードは……24時間。
 これで方針は決まった。
 一か八かの穴掘り戦法は、成功だったようだ。

「ワハハハハッ!――」
 あざ笑うように笑う太陽君!

 少年が触手を一斉に三百六十度に放つ!
 そしてゆっくりと、作った独自の部屋に入っていく……

 女捜査官達が、触手を次々と掴む。しかし、いくら粉砕していってもきりがない。
 少年に触れることも出来ない。

 そのまま、作った部屋に入っていく。
 そして、触手を使って、壁を崩し、土で埋めてしまった。

「くそっ!」
 これでは手のうちようがない。
 少年は待つことに決めたのだ。

 そう……

 強襲できるその時まで……
 冬眠のように……


 地上ではシャベルカーと掘削機が到着。
 慎重に穴掘り。まさか、山の穴を掘るとは思ってもみなかった女捜査官達。
 だが、この様子はすべて潜望鏡触手によって、筒抜けだった。

 その時、玲子から女捜査官達に連絡が入る!
「コンビニが触手に襲われたそうよ」
「ええ?」
 考えていない事だった。



「うまい」
 牛乳を飲む太陽君。コンビニからパクッてきたらしい。
 もちろん、触手に、コンビニを襲わせ運ばせたのだ。
 今頃、コンビニはパニックだろう。

 食料と弁当を襲うタコの触手なんて聞いたことがない。

 目の前には弁当が10個ほどある。
 これをすべてたいらげるのだ。普通なら食いすぎだが、パワーによって触手を動かすには、必要なカロリーだった。
 どうやら、穴を掘って触手が持ってきたらしい。
 便利な強盗道具である。

 体力を回復していく太陽君。
 隣では、鬱憤が溜まっている女捜査官達がいる。
 ご丁寧に、ちゃんと空気も送りこんでいる。
 ということは、殺すつもりはまったくないということだ。

 あれからもう6時間は経った……

「ふう〜おなかいっぱいだ」
 いよいよ、少年の反撃が始まろうとしている。


 ――もうすぐ……効果が切れる…… 
 黒川玲子が案じている。だが、地下に落とされた女捜査官達の救出はすぐには無理だった。さらに太陽君は、状況を常に把握。玲子たちがどういう状況で何をしているかすべて筒抜け。

 その事は黒川玲子も知らない。
 モニターを見つめる玲子。

 場所がわかっているのに、踏み込めないというのは、悔しいものだ。
 ただひたすら敗北の時間を待つ玲子達だった。



「きゃああああああああっ!――」
 
 ついに触手に襲われる状態になった女捜査官達!
 捜査官達も、それはわかっていた。この状況なら待っているというのは察しがつく。
 だが、どうやってそれを知ったのかはわからない。

 次から次に触手に拘束される女捜査官達。
 そこに少年がゆっくりと出てきた。

 タイトスカートの股間をぱっくりと見せ付けている麗華達。
「いい、格好だ」
「やりたいなら……さっさとやれ!」
 二島麗華が強きで言う!

「いや……君達には道具になってもらう。気が変わったんだ」
「なに?」

 フッと笑う太陽君。

「え?」
 触手が何か運んできた。

「眠ってもらうよ」
 催眠スプレーだ。コレの対策はない。
 どこから手に入れたのだろうか?

 女捜査官達がみんな眠っていく……

 すると、一本の触手が、一回だけ胎内に入っては出て行く。
 快楽を楽しんでいるわけでもない。
 一回挿入したら終わり。次の捜査官も同じ行動だ。
 決して犯そうとしない。
 これはどういうことか?

 ――これからが面白くなるんだよ。なあ、黒川玲子。

「君を……奈落の底に落としてあげるよ。僕を侮辱した罰だ」
 あの笑みが忘れられない。

 あのメガネをかけた生意気な女の笑みが……

 少年は事が済むと、自らは女達に挿入さえもせずに……
 去っていったのだった。



 それから一週間経った。
 追跡は続いている。マーキングされた少年は、居場所はばっちり。
 だが、すべて地中にいるため、手が出せないというジレンマ。
 まるでモグラのように……

 あれから、麗華達は触手によって地上に出された。
 なんという皮肉。もちろん、触手はその場で退治されたが。
 その余裕ともいえる行動は、不敵でもあった。

 そして、身体の洗浄も終わった。
 これで一安心でもある。

 毎日対策会議がされているが、移動しながら地中にいる犯人を捕まえるのは容易ではない。さらに、周りでは、食料品等の触手による強盗事件が多発。
 しかし、警察は、生き物による犯行とは発表していない。
 あくまでも人間がやった強盗事件と扱っている。
 ワイドショーは連日この報道でいっぱいだったのだが、ある日突然報道規制が入った。
 ピタリとタコの強盗事件の報道は消えたのだ。

 その間にもああでもない、こうでもない。無駄に会議は過ぎていく。
 そして、ハッキングされていた事も重大な議題になっていた。
 押収したパソコンから発覚したのだ。

 ここの所、マンションに戻っていない玲子。
 連日、署内のモニターに釘付けだった。
 だが、見ているだけ。さすがに部下に操作方法を教え、任せることにした。

 何かあれば、すぐに連絡をしてというわけだ。
 襲ってきても対策はすべてしてある。このこう着状態はまだまだ続く。
 本来なら休暇をもらえる所だが、すべてこの事件でなくなった。
 疲れてマンションに帰った玲子。

 ――お風呂に入ろう……
 署内のシャワーでは物足りない。
 考えても仕方ないのだ。御堂教授にも相談したが、これにはお手上げ状態。
 A国では、地中にずっと潜っている事はなかった。一時的にはあったが、結局退治は成功した。
 しかし、移動されると掘削機とかで掘っても意味はない。

 ――どうすればいい?
 お風呂に、美乳を溶け込ませながら、考える玲子。
 しかし、考えると癒されないものだ。せっかく自宅のフロに入っているのに……
 ここはゆっくりしようと思った時……

「え?」

 風呂場の扉が開いた……
 ここは5階のマンションだ。

 開けたのは……


 触手の生き物……蛇のような生き物!

「ええっ?」
 ガバッと浴槽から起き上がる玲子!
 美乳が揺れる!

 いったいどういうこと?
 そう思っている。触手が小躍りしている。まるで裸を見れたと喜んでいるように……

 無防備の玲子。
 走った!

 風呂場を抜けて、対生物用銃を取りに行く!
 バスタオルに身体を巻いて、銃を持った!

「くっ!――」
 見ると、風呂場にのん気に踊っている蛇型の触手!
 なんという大胆不敵!
 即座に打ち込む!

 バンッ! 
 バンッ!

 粉砕される触手!

 ――ど、どうして……

 するとだ、向こうから……
 別の触手が手招きしている!

「なっ!」
 構える玲子!

 触手は引っ込んだ!
 引っ込んだ先は、パソコンがある部屋だ。
 警察への無線等もそこにある。
 慎重に近づく玲子。

 美乳を隠しながら……

 銃を構えて入る!

「うわっ!――」
 うようよいるのだ!

 次から次に撃ちこんでいく!

 ――どうして……?
 きりがない。そう思っていると……

「黒川玲子、もうやめたほうがいいよ」
 少年の声だ。なぜ、ここに少年が……

 いや、違う。声を出しているのは……

 パソコンの目の前にいる奴だった。
 ピンク色の生物から発している!
 まるで拡声器だ。

「君に見てほしいのがあるんだ」
「なに?」
 そのパソコンの前にいるピンク色の生き物に銃を構える!

「おっと、こいつは壊さないでほしいな。見てくれなければ……仲間が死ぬことになるよ」
「え?」

 一瞬、たじろぐ。通信で声を聞けるらしい。
 こういう事が出来るとは知らなかった玲子。
 前回の事件では、ここまでは出来なかった。

「見るんだ。黒川玲子。君は見る義務がある」
「…………」
 
 すると……だ。ピンク色の生き物が、小さな装置を吐き出した。
 なにやら通信機器のようだが。

 じっと緊張して見ている玲子。バスタオルのまま。

「それを、パソコンにセットしろ。usbメモリーでつなぐんだ」
 だが、そう言われてはいそうですかとはならない。

「仕方ないな」
 太陽君の声がそう言うと、生物が、自らパソコンの電源を入れ、usb接続で接続。
 器用に動いている。

 ――こんなことまで……
 ある意味感心している。

 モニターが映った。
 デスクトップになにやら「黒川玲子調教快楽の入り口」と書かれたショートカットがある。
 そしてマウスをあてて、クリックする生き物。

「あっ……」

 なんと!
 モニターに金髪少年があらわれた!
 大蛇を椅子代わりにして座っている。

「君は、疑り深い」
 当たり前だろう。

 銃を構えたまま、パソコンに向かって対峙している特殊女鑑識官。
 だが、撃ってもモニターが壊れるだけだ。

「これ、なにか知ってる?」
 なにやら犯人は、片手に持っているものがある……

 それは、カエルだった。
「え?」
 一瞬、玲子は、驚く。

「君が従わないと……女捜査官達は……こうなる」
「なんですって?」
 意味が分からない。

「こうなるのさ!」
 そう言った瞬間だった。みるみるうちカエルの腹が……

 膨らんで……

 爆発した!――
 無残におなか飛び散る!

 ――ま、まさか!

「察しがついたようだね。君が逆らうなら、捜査官達はこうなる運命だということさ」
「あ、あなた……」

 脅迫……だ。

「僕に捕まった時に、仕込んでおいた。洗浄してもアレは取れないよ」
「…………」

「仲間の腹を爆発されたくないなら、僕の指示に従ってもらおう」
「なんですって?」
 バスタオル姿の黒川玲子が叫ぶ!

「嫌なら、20人ほどの捜査官は即死だ」
「…………」

 なんて卑怯な手。

「だが、僕は彼女達を殺したくはない。今まで女は一人も殺していないのは、事実としてわかっているだろう?」
 世界中の女を手に入れると思っている少年だ。壊したくはないのだろう。

「僕の言うことを聞くと誓え!」
「あなた……自分が言っていることわかっている? この卑怯者!」
「なんとでもどうぞ」
 にやついている金髪。

 こうして黒川玲子は、いいなりになっていく……


 義憤に燃える玲子。
 だが、それをあざ笑う木見太陽。
「まずは……明日、僕の追跡装置を狂わせて貰おうか」
 玲子なら、それはすぐにでも出来る。
「悟られるなよ。位置情報をでたらめに表示させればいいのさ」
 まさか犯人にこう言われるとは……

「返事はどうした」
「わかったわ」
 観念した玲子。

「よしよし、いい子だね。それと……君の今の姿は実にいい」
「…………」
「バスタオルをまとったまま、オナニーしてもらう」
「え?」

 オナニー?

「するんだ。でないと、触手に襲わせるぞ」
「……あなた……」
 唇を噛む玲子。悔しい。

「さ、始めるんだ。君が普段どんなオナニーをしているか、僕は興味がある。じっくり見せてもらおう」

 少年の辱めが始まる……


 
「バスタオルを取って制服に着替えて貰おうか。それとメガネをかけてね」
 モニターの向こうの金髪少年が命令する。

 ――制服に?……メガネもですって?
 憎らしい声だが、どうにもならない。こぼれそうな胸をかろうじて隠しているバスタオル姿のまま、メガネをかける玲子。それでも恥ずかしいのは当たり前。

「パソコンの目の前に椅子を置きな。そして、こいつを割れ目の目の前に置くんだ」

 ピンク色の映像転送用触手生物がいる。
 こいつをあそこの目の前に置けという。

 ――くっ……

 なんて恥辱だろう。これでは割れ目をいじる時に、じっくりと見られてしまう。
 いつも着ている特殊鑑識官の白衣と制服に着替える。
 いよいよ、ミニスカートに手を入れて……となるのだ。

 とりあえず椅子に座った黒川玲子。キュッと股間を締めている。

「白衣まで着たんだね。防御の心がそうさせたのかな?」
 たしかに白衣を着るまではなかっただろう。自然とそうなったのかもしれない。

「さ、始めるんだ」
「…………」
 そう言われて、すぐに出来るものではない。
 映像転送用生物が、玲子の太ももの秘密の三角形の辺りに来ている。
 そこを開けば、白いショーツが見えるのだ。

「あそこを開いて始めるんだ!」
 少年が強気で言う。玲子があそこを開く……

 白いショーツが現れた。
 そのの目の前に監視カメラのように生物が近づく。開いたあそこの目の前にいる触手。
 身体を嘗め回すようにいる触手生物。様々だ。手をあてた玲子。

 が、その先が恥ずかしくてたまらない。思わず手でスカートの奥を塞ぐ。
「指でショーツをなぞって、割れ目の形見せてよ」
 モニターの向こうで笑いながら言う太陽君。見ると、下半身が勃起状態。
 手コキの最中。
 ゆっくりと手をどけていく玲子。

 こんな少年のおもちゃにされているという事実が、玲子の屈辱を煽っている。
 白いショーツを撫でる玲子だが、割れ目を作るまでは強く押せない。
「玲子、割れ目を作るんだ。出ないと、触手で君の身体を犯す!」

 割れ目を強くなぞった。その映像は、新たなアジトでモニターを見ている少年に転送されている。本当に、触手は便利。

 といっても、地中深くだが。
 その上では、女捜査官達や、警官が、厳戒態勢なのだ。
 だが、地中深くでは手は出せない。

「いいね、くっきりと見えるのがたまらないね」
 ゆっくりと手コキする少年。自らのペニスを慰め、玲子のしぐさに見入っている。
 次はショーツを脱げと命令。立ち上がって、ショーツを脱いでいく。もちろん、生中継だ。脱ぐ時に、ミニスカートを通り過ぎ、ふとももからすり落ちていくのが、なんとも悩ましい〜

 ちょっとだけあそこを開くのをためらった玲子だったが……
 ついに秘密をさらけ出した。
「すばらしいね」
 ドアップと全体像の二種類で動画を楽しむ太陽君。時間をかけて恥辱に落としていく気である。次に、指でオナニーを要求した。
 指を入れてなぞる玲子。あそこは濡れてはいない。口を震わせている。こんなことになるとはと思っていなかった。そのまま5分くらいその行為が続く。
 相手が、刺激をさらに強くと要求。

 それも5分ぐらい。
 目を細め、大きい胸を隠しながら。
 胸は見せろとは言っていないが、服の上からでもこぼれ落ちるほどだ。少年はイクことを要求した。

 ――無理よ……
 玲子に今の状況でイクのは無理だ。そこらへんは太陽君もわかっている。

「だったら、僕の言うことを復唱しな。それで今日は許してやる」
「復唱?」

 自分が発した言葉をその通りに言えと要求。

「黒川玲子は、どんな命令にも素直に従います」
「黒川玲子は……どんな命令にも……素直に従います」

「恥ずかしい要求にも、卑劣な手でされる行為にも」
「は、恥ずかしい要求にも……卑劣な手でされる行為に……も」

 卑劣という言葉が非常に気になる玲子。
 この言葉がすごく嫌。

「我慢と恥辱の限界に、耐えに耐えてみせますわ」
「が、我慢と恥辱の限界に……耐えに耐えてみせますわ」
 
 画面の向こうで少年がにやりと笑う。

「じゃあ、今日はここまでだ。明日はやってもらうことがある。恥辱じゃないけどね」
 そう言って少年は、逆らえば女捜査官達の命はないと念を押して映像を切った。

 大変な事になった黒川玲子。
 周りには監視用の触手生物がうようよ状態。
 これが現実である。
 その夜、玲子は寝ることが出来なかった。



 次の日。
 朝一番に……さっそく実行に移す。

「交代しましょう」
「はい、でも……」
 特殊鑑識官の一人に声をかける玲子。だが、明らかに一睡もしていない目だ。
 それを心配するのは部下として当たり前でもある。
「大丈夫よ、ちょっと疲れているだけ」
 平静を装う玲子。だが、心の奥底では葛藤が続いている。
 モニターでは、バッチリ少年を監視中。もっとも、地下にいるのでただ見ているだけだが。
 鑑識官が去っていくと、ため息をつく。

 ――こんなことになるなんて……
 命令されたのは、エッチ行為ではなく居場所をかく乱させることだった。
 簡単にいえば、この監視機能を不能にすることだ。

 だからといって、いきなり使えませんですでは、逆に疑問に思われる。
 そこで……

 ――これでいいわ。
 嫌々ながらも、プログラムを変更。これで居場所はわざとでたらめ。
 正確にいえば、徐々にだ。徐々に、精度を下げて、使い物にならないようにしていく。

 これが少年の命令。
 まずは、居場所を探られないようにすること。


 今日はこれで終わり。
 後は自由時間と言われた玲子。
 自由時間というのもおかしいが。
 が、自由は自由でも、監視つき。

 実は……

「あっ!――」
 パソコンの設定が終わった瞬間だった。
 あそこが振動する!

 そう……玲子の秘密の肉には……
 生物がへばりついているのだ。



「こ、これを……?」
「そう、監視用さ」

 10cmほどの大きさのピンク色のミミズ型。
 こいつを膣に入れろと言うのだ。

「綺麗な色だろう? それなら抵抗がないと思ってね」
 抵抗はある。
 しかし、逆らっても無駄。

 少年がモニター越しで見ている前で、生物をミニスカートの奥へ突っ込む。
 すると、ショーツの上から、そいつは中へ潜り込んでいったのだ。
 そして、膣の入り口から中へ入り、途中で止まる。

 ちょうど、セックス行為なら、ペニスの出し入れがされる部分。

「こいつは、高性能な集音機能がある。君がしゃべっている事は筒抜けだ。妙なまねはしない方がいい」

 こうして、署内まで、来てしまった玲子。
 こいつをつけている限り……

 少年に気付かれずに、対策を練るのも不可能になった。

 その生き物が膣内で震えている。

 呼び出しだった。出れる状況の時にはコンタクトをしろという命令だ。
 すぐさまトイレに駆け込む玲子。

「何?」
 小声で股間に聞く。ショーツを脱いだ格好で。
 
「セットはOKのようだね」
「ええ……」
「よくやった」

「あ、あの……」
「ん?」
 少年が聞く。
「震えているの……なんとかして」
「ああ……いいぜ」
 膣で震えている振動が、快感になりかけている玲子。
 それがおぞましいほど嫌なのだ。
 止めてくれたようだ。

「今日の夜はマンションに帰れるよな?」
「ええ……」
「夜にかわいがってあげるから、そのつもりで」
 そう言って通信は終わり。

 ――はあ〜
 ため息ばかりつく玲子。
 自慢の胸もしょんぼりだ。
 まさか犯人の少年にいいようにされるとは思ってもみなかった玲子。

 ――これからどうすれば……

 なんとかこの状況から抜け出したいのだが、方法がわからない。
 そうこうするうちに夜が来るのであった。


 夜が来た。
 黒川玲子が自宅のマンションに帰ってきた。
 署内では、少年はゆっくりと南東に移動しているので、それを地上でパトカーとかが監視するように追っている。

 が、これはデタラメ。
 パソコンに映っている移動の印はもうあてにならないのだ
 それを知っているのは黒川玲子ただ一人……

 仲間を騙しているという事実が重い。が、それは仲間を守るためでもあるのだが。

「おかえりなさい」
 にこやかにモニターで答える太陽君。まったくとんでもない少年だ。
 その表情に困惑する玲子。
「おかげで地上にうざいパトカーも捜査官もいなくなったよ」
「そう、よかったわね」
 そう言うしかない。
「これで僕も地上に出てのんびり出来る。もうモグラの生活は嫌だったからね」
「…………」
 まさか自分が犯罪者の手助けをすることになろうとは……

「さて、今日こそオナニーを見せてもらおう……と思ったけど、イクまでは無理のようだね」
「イクわけないでしょ」
「ふふふ、だったら面白い遊びをしよう」
「え?」

 遊び?

「まずはお風呂に入って食事しよう。そしてテレビを見よう」
 
 ――なに言っているの?

 ありきたりな生活の一部だ。
「ただし、今日つけているそいつをつけっぱなしでね」
 膣肉の入り口奥深くに食いついている生物を、入れっぱなしで風呂や食事をしろというのだろう。

 早速、玲子はお風呂に入ることにした。もちろん、乗り気ではないけど。
 ゆっくりと制服を脱いで、裸になる玲子。美しい乳が、脱衣所であらわれる。
 膣にはなんとなく違和感があるのだが、もう慣れていた。
 そのまま湯船につかる。

 すると……

「あっ!」
 突然、生物が暴れだしたのだ! 思わず顔が赤くなる!
 その様子を別の触手生物が、テレビカメラのように撮影している。それを少年の元へ送っているのだ。一瞬たりとも黒川玲子の痴態を逃さないように……

 思わず股間を締める玲子。ふとももをキュッと閉める。
 わずかだが快感が募る。

 それが許せない特殊鑑識官。

 膣内の触手がうねうねと動き回り、玲子の恥辱を誘っている。
 風呂の中で悶え始めた玲子。正面に撮影用の触手が、大きな口を開けて映像を送っている。サッと目を逸らして、顔を横に向けた。
 が、その方向にサッとカメラも移動する。

「かわいいなあ〜」
 地下の洞窟でパスタを食べながら、優雅にその様子を見ている太陽君。
 どうやらコンビニのパスタだ。もちろん、触手が盗んできたのだが。
 さらに、下半身丸出しで、ペニスが勃起中。
 食欲と淫欲を同時に満たしている。

 ――堕としてやるよ。徹底的にね。
 少年の目がキラリと光る。

 撮影用の触手生物の大きな口の部分から、湯船から出て、身体を洗えとの命令が来た。
 顔が赤い鑑識官。
 石鹸で身体を洗い始める。乳首が勃起している。

「勃起しているよね、乳首」
 少年の声が聞こえた。

 無視。

「固くなっているんだろう?」
 さらに追求。

 無視。

 すると、

「あぐっ!――」
 微振動だった、膣内の生き物が、強震に変わったのだ!

 これはかなりの快感に繋がる。今日一日中、軽く動いたりしていたピンクの生き物。
 ずっと中にいる間、膣にわずかに刺激を与えていた。
 それがここに来て、効いている。

 ――こ、こんな……やり方。

 予想していた玲子だったが、やっぱり恥ずかしい。
 さらに、少年の声が、撮影用兼監視用触手から聞こえるのだ。
 モニターがここにないのがまだ救い。

「イキそう?」
「な、なに言って……?」
 イクという事に抵抗がある。こんな仕打ちでイキたいはずがない。

「いい表情だね、最高に楽しんでるよ」
 クスクスと笑いながら言う少年の声がむかつく。

 ――お、覚えていなさい……

 このままで済むはずがない。いずれは少年を逮捕して、しかるべき裁判にかけたい玲子。
 だが、今はこの羞恥攻めに悶えている。
 身体を洗いながら玲子は、羞恥に打ち震えるのだった。



 風呂は終わった。服に着替える玲子。
 その服まで指定された。上半身は胸の谷間強調の服。
 スカートはミニスカート。いずれも自分が持っていた服だ。

「いずれ、もっとエッチな服買ってもらうよ」
 太陽君がパソコンのモニターで微笑んでいる。

 お次は台所。命令されたのは、ハンバーグを作って食べろ。それと、スープ等。
 野菜から切るように言われる。

 何が目的かすぐにわかった玲子だったが、素直に従う。

「うっ……」
 バイブのように、生物がうねる!
 膣内はもう濡れている。それを認めたくない女鑑識官。
 必死に耐えている玲子。その様子を撮影用生物がバッチリ少年の元へ転送。

「感じているなあ〜」
「…………」
 今度は黙っている。心の奥底で、快楽を認めてしまっている。

「イキそう?」
「…………」
 やはり黙る。

「耐えているその姿、最高だよ」
 なんという屈辱。

 こうして、食事の用意をする間、ひたすら言われ続けたのだった。


 椅子に座って夕食を食べ始める。微振動はずっと続いている。
「あふっ!――」
 ご飯に手をつけようとした時だ、また恥辱の攻めが始まった。
 目をつぶってこの羞恥攻めに耐える玲子。

 ――なんて……やり方。
 こう思うだけで精一杯。そしてまた同じような言葉攻めが始まった。
 繰り返される羞恥。

 食事が終わると……

「テレビ見ようよ。僕のことでもちきりだろう?」
 今、ワイドショーでは、謎のタコが、コンビニで盗みを繰り返しているという噂でもちきり。犯人はもちろん、太陽君だ。
 が、警察はこの事実を発表していない。あくまで人間のコンビニ強盗にしたいらしい。

 顔が赤くなりながら、テレビを見る黒川玲子。
 身体がもうすぐ来る強震に構えている。

「脚を組んでよ」
「え?」

 脚を組めというご命令。
「チラリズムを楽しみたいんだ」

 ――このガキ……
 ガキなんていう言葉は使わないし、思わないタイプの玲子だったが、
 あまりのフェチさにムッとしたようだ。ソファに座ったまま、脚をわざと組んだ。
 幸い、パソコンのモニターがある部屋は別室だ。
 金髪少年のにやついた顔は見なくてすむ。

「うぐっ!――」
 振動が始まった。思わず股間を締める。
 脚を組んだままだ。

 ――いいね、最高の姿だ。
 ゆっくりと自分の股間を慰めながら言う少年。快楽でコントロールして、羞恥の表情を楽しむ。これ以上の面白いものはない。口が軽く開いた玲子。
 20代後半のむっちりした身体が、少年の罠で狂わされていく。

 とても、テレビなどまともに見れない。その時、ニュースが始まった。
 ニュースではコンビニ強盗の話題でもちきりだ。
 謎のタコ足のコンビニ強盗という感じで報道されている。
 タコ足が、物を奪っていくというのだから、ネタにはなるのも無理はない。

 ――仕方ない……わよ……あはっ!――

 感じながらこの報道を見る。目を険しくする玲子。左前方にしっかりと撮影用生物が、玲子の表情のすべてを撮っている。

「あっ!――」
 大きな声をあげた。そして思わず脚を組んでいる股間に手を、あてようとする。

 振動が凄い。最強になったのだ。強震で高められた快楽のその上をいく!
 膣肉の内部で、淫肉を狂わせていく淫生物に、玲子の身体が恥辱にまみれていく。

 ――やだっ……こんな……

 的確にツボを刺激されるような感覚だった。実は、ずっと微震や強震を繰り返しているこの淫生物は、玲子の肉の弱点を覚えこませているのだ。

「はうっ!――」
 顔がビクンと上がった女鑑識官!
 ミニスカートが震えている。
「その顔の表情じゃ、相当きているみたいだね」
 口を震わせながらこの恥辱に耐える玲子。

「たまらないだろう? もっと狂うんだ。もっと、もっとだ……」
 暗示のように撮影用淫生物から声が出る。それをひたすら聞いている玲子。

 ――あはっ!――

 軽い絶頂が……きた!
 絶頂という表情を隠そうとする!
 それを太陽君は見逃さない!

「イッたね」
「ち、違う!」
 図星を突かれ、焦る!
「ふふふ」
 顔を真っ赤にして目の前にいる淫生物に睨む女鑑識官。

 ――こんな奴の思い通りにさせるもんですか!
 メガネが揺れてうっすらと汗が出ているのは、絶頂がきた証拠だ。

 こうして二時間近く玲子は、悶えながらテレビを見続けたのだった。



 次の日。
 いつものように出勤。もちろん、あそこに淫生物つきだ。微振動がずっと続いている。
 これが結構効くのだ。昨日までは、そうでもなかったのだが。
 昨日の羞恥攻めで、肉が喜びを覚えたのかもしれない。だが、気にしていても仕方がない。
 決して外すことは出来ないのだから。

 車を運転しながらも、あそこが気になってしまう。
 そういう身体になりつつある。
 署内についた。

「どう?」
 わざとらしく聞くのも辛い。
「少しずつ動いているようです」
 でたらめの表示を示しているパソコンのモニター。
 それを頼りに女捜査官は地上で動いているのだ。
 ある意味非常に悲しい。

 ――どうすれば……あっ!

 強震に変わった!

「どうしました?」
 部下が聞く。
「い、いえ……なんでもないのよ」
 淫生物が動いたのだ。膣内で暴れている。それが淫の快楽を誘う。

 ――くっ……
 立ったままふとももをくっつけて耐える玲子。その姿は最高だ。

 ――本当に……どうすれば……いいの……
 それしか考えられない。そして玲子はトイレに直行であった。


「お願いよ、もうやめて」
「感じていると認めるね」
 膣内から小声が聞こえる。
「ええ……」

 認めざるえない。

「君が淫乱だという証拠だ」
 膣内にこんなもの入れられたら、誰だって……と思う玲子。
「淫乱な君には調教が必要だ。そう思うだろう?」
「…………」
 返す言葉がない。

「調教してくださいと言いな」
「ええ?」
 トイレでしゃがみながら驚く玲子。調教という言葉が憎らしい。

「調教してくださいと言うんだ」
 命令口調の太陽君。
「ちょ……調教してください」
 素直に従う。だが、心は怒りでいっぱい。卑劣な手で脅迫さえされていなければ……
「うふふ、いい子だね〜」
 なんて嫌な性格だろう。さらに年下なので、非常にムッとくる。
 その上、犯人だ。
「じゃあ、今日からクリトリス調教してと言ってよ。そうしたら振動をやめてあげる」

 ――なんですって?

 クリトリスを調教してと言えという。
 どうしてわたしがそんな事をと思いたいが、この状況では素直に従うしかない。
 仲間の命がかかっているのだ。
「ク……クリトリス調教して……」
 瞬間、振動が止んだ。

 ――と、止まった……

 こうして玲子は、クリトリス調教の許可を与えてしまったのだった。



 約束どおり、あれから振動は来なかった。もちろん、淫生物は、しっかりと膣内に住みついているが。逆に悶々とした一日でもあった。振動が来ないといっても、本当かわからなかったからだ。だから、常に身構えてしまう。

 それがもどかしさを増幅させてしまう。

 マンションに帰って、パソコンのスイッチを入れる。
 周りには監視用のピンクの生物がうろうろしている。
 まさに異常な部屋だ。

「こんばんは」
 モニター越しに少年が微笑む。
「ん? 物足りない顔していない?」
「え?」
「振動が来なくて、あそこが暇だったでしょ?」
 
 何てことを言うのかと思う玲子。

「じゃあ、早速……股間見せてよ」
「ええ……」
 いそいそとミニスカートをつけたまま、ショーツを脱ぐ。
 ぐっしょりと濡れたショーツ。膣内生物の効果だ。ぱっくりとあそこを犯人に御開帳。

「取り出しな」
「え?」
「取っていいよ。変わりに違うのをつけて貰う」
 ひょこっと目の前に現れたのは、別の淫生物だ。こいつをクリにつけろという。
 素直に従う女鑑識官。自らの胎内の淫生物を取り出した。

「そいつを自分の顔に近づけてみな」
 代わりの淫生物を手にとって近づける。小さい手のひらサイズ。今までの淫生物よりもさらに小さい。

 すると、そいつが口をカパッと開いたのだ。
 その奥には細かいギザギザの歯が並んでいる。

 ――な、なによ……これ?

 こいつで狂わそうというわけだ。

「その細かい歯が、君のクリトリスを狂わせるんだ」
「…………」
 平然と言われても困るのは玲子だ。

「そいつはね、クリトリスの周りの肉ごと掴んで、引っ張りあげる。そしてむき出しになった淫クリにしつこく刺激を与えていくんだよ」

 ――こ、この……
 モニター越しにせせら笑うように言う太陽君の声が憎らしくてたまらない。

「さあ〜言いな。どんな事があってもクリトリスからこいつを外さないと誓います」

「ど、どんな……事があっても……」

「クリトリスから……クリトリスからこいつを外さないと誓います」
 こんな屈辱の言葉を復唱される女鑑識官。

「こいつの口の奥の歯で、淫クリをむしゃぶるようにしゃぶってください」

「こいつの……口の奥の……歯で……」

「淫クリを……」

 むしゃぶるという言葉に抵抗を覚える。

「むしゃぶるように……しゃぶってください」

「私の淫らな肉の、周りの肉ごと食らいついて……」

「わ、私の……淫らな……肉の……」
「ま、周りの肉ごと食らいついて……」

「強制的にむき出しにしたクリトリスを」
 クスクスと笑いながら言う少年。なんとも憎らしい。

「強制的に……むき出しにした……クリトリスを」

「しつこく、徹底的に容赦なく」

「しつこく……徹底的に容赦なく」

「お願いですから、私が狂うほど嬲りつくしてください」

「お願いですから……」

「私が狂うほど……嬲りつくしてください」

「私はひたすらこの容赦ない羞恥攻めに、耐えに耐え抜いて、
「耐え偲び、平静を装い、冷静に生活することを誓います」

「わ……私は……ひたすらこの容赦ない羞恥攻めに……耐えに耐え抜いて……」

「耐え偲び……平静を装い……冷静に生活することを誓います」

 プルプルと身体が震える玲子。ここまで徹底しているとは……

「よく言えたね。それじゃあちゃんと守ってもらうからね」
 もはや諦めの境地の玲子。

「クリトリスにつけるんだ」
 少年が命令した。


 つけた瞬間。
 淫生物の口が、クリトリスとその周りの肉に食らいつく!

「くわっ!」
 顔をしかめて悶える黒川玲子。
 クリトリスをこんな風に攻められたのはもちろん初めてだった。即座に微振動が始まる。
 歯からの細かい振動が、淫豆を狂わせていく……

 口を噛み締めて……耐える!――

「いい表情だ。君は調教のしがいがある」
 なんて言い草だ。

「さて、汗びっしょりだろう? シャワー浴びなよ」
 モニター越しに少年が言った。

「え?」
「シャワーだよ。もちろんそれをつけたままさ」

 さっそく調教が始まった。
 玲子は素直に服を脱いで、シャワーを浴びることにした。


 クリにはこれをつけたままだ。振動はひっきりなしに続いている。
 クリトリスに与えられる振動。淫生物の歯にむき出しにされた豆がひっきりなしに振動に犯されている。
 耐えながらシャワーを浴びている玲子。
 乳首が勃起して、そこをシャワーの水が流れる。

 シャワーで洗い流す。汚れと汗が消えていく。が、あそこからの蜜液だけは止まることがない。細かい振動がクリからひっきりなしに伝わってくるからだ。見られながらシャワーを浴びるだけでも恥ずかしいのに、さらにクリ攻め。細かい歯での淫振動は、玲子の理性を狂わせていく。

 ――うっ……うぐっ……

 この数日であそこは敏感になっていた。この状況でのクリ攻めは、とてもたまらないものがあるのだ。バスルームにはピンク色の淫生物が数匹いる。そいつらが、このシャワーを浴びる玲子をばっちり少年に映像を送っている。

「乳首を揉むんだ」
 淫生物からの少年の声。要求に応じる特殊鑑識官。流れていく水ごと乳首をつまむ。

 ――か、感じる……
 もう、触るだけで勃起がすごい。クリ攻めされる前は、膣穴に淫生物いれていたのだ。
 秘肉はじゅうぶん狂っている。思わずつまむのを強くした。

 自ら快感を受け入れたくなっているのだ。

 その様子を、ペニスをしごきながら少年は見ている。
 隠れアジトで、ゆったりとオナニータイム。

 なんていいご身分。

 ――ほんとに……いい女だ。ふふふっ……とことん堕ちてもらうからね。
 悶えながらシャワーを浴びる女鑑識官を見ながら、射精をする太陽君であった。

 淫生物の攻めは本当にしつこい。執拗に歯を立て、クリを翻弄する。
 根元からしっかりとクリ全体に食いつき、嬲るように刺激を与え続けていく……

 さらに、決して同じ攻めはしない。
 ある時は弱く、ある時は非常に荒々しく攻め立てる。
 そのたびに思わず口を開いてしまう。

 そうでもしないとこの断続的にくる快感に耐えられないのだ。
 シャワーを浴びた後も、ひたすらその攻めは続いた。

 料理を作る間……

 テレビを見る間も……

 絶え間なく、ひたすらクリトリスを犯され続ける。
 ソファに座り、脚を組んでテレビを見ろとご命令。
 表情を変えるなというご指導だ。
 冷静な大人の女を無理やり演じさせる太陽君。その間にもクリ攻めはしつこく続いた。 目をつぶったり口を軽く開けたりして、テレビを見ながら耐える玲子。

 クリの振動に羞恥を覚え、腰をピクピクと動かす。
 普段どおりに服を着て耐えている姿は、非常に美しい。

 もちろん、メガネをかけている。
 知的な顔が、屈辱でゆがんでいくのだ。

 その様子を陵辱少年はじっくりと堪能する。

 こんなことがいつまで続くのかと思いながら……

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