放課後。練習が終わり、学園の外に出る。

 夕方6時。
 今日は何事もなく終了。優実は相変わらずだったが。
 買い物に出かける翔子お嬢様。

 一人暮らしなので、当然自炊だ。
 だが、嫌いではないらしい。どうやら顔に似合わず料理が好きなようだ。
 商店街にいけば、食事は済ますこともできる。コンビニもある。

 ――あら……

 ふと見ると、お昼に優実ともめた女学生、それと後三人……

「あいつか……たちが悪いんだよね」
 ボーイッシュの髪型をした女学生が、優実と揉めた女と話している。
「むかついてます」
「まあ、いいじゃん。言わせておけば」
 どうやらメスボスというのはこの方らしい。
 筋肉質の体型だ。スポーツで鍛えてある証拠。腰のくびれもいい。女戦士という言葉がよく似合う身体だ。メスボスと言われたことは、とっくに知っている。

 だが、動じない。

「あっ……」
「どうした?」

 翔子と優実のもめた女の子の目があった。
 運命の出会い……


「こんにちは」
 微笑む翔子。なんとなく微笑み返す女の子。

「私、如月翔子といいます、よろしく」
「あ、はい……え〜と、転校生の人?」
「ええ……」
 にこやかに答える翔子。

 きっかけは早い。
 こうして話しがはずんでいった。


 お昼に優実と揉めた女学生の名は、工藤 繭。
 そして、メスボスと呼ばれたショート髪の三回生は、三藤綺羅という。
 身体ががっしりしているタイプだ。どうやら、亜津子とは対立しているらしい。

「まあ、そうなんですか」
「元気にしてる? テニス部の亜津子」
「ええ、とても元気ですわ」
 すっかり仲良くなったようだ。息が合う翔子。

「ねえ〜優実と仲いいの?」
 今後の付き合いに重要な話題だ。
「え? うふふ」
 笑う翔子。

 馬鹿なことを言わないでといった表情。
 敏感に三藤綺羅はそれを感じ取った。

「どうやら、いろいろあるみたいね」
「ええ……」
 さらににこやかに答える。これでもうわかったようだ。

「翔子、気をつけてね。あの女、結構怖いから」
 工藤 繭が気にする。
「安心して、あんな裏表女に屈したりはしないわ」
「いい、根性ね〜」
 三藤綺羅も今の言葉に共鳴したようだ。

「ねえ〜 うちの部に準部員として入部しない?」
「え?」
 準部員?

「準部員っていうのは、部員とは違って、気軽に入部していつでも気軽にやめれるの」

 準部員…

 部活では予算がいる。部員を増やさないと部費がつかないのだ。資本主義の一面がここでも出ている。部費がつかないと、いろいろな道具も買ってもらえないのだ。
 どこも人がほしいのである。三藤綺羅は水泳部。

 そしてキャプテン。筋肉質の身体がその証拠。
 太いフトモモもその証。

「水泳なら……いいわね」
 翔子もその気があるようだ。スタイル抜群の翔子。見せつけても損はない。

 だが……見せる男はいないが。

「でも、先輩、翔子さんは……」
「ちなみにさ、水泳部の私と、亜津子はすっごく……仲悪いのよね」
 にやっと笑う、キャプテン。
「ふむふむ」
 動じない翔子。予定済みか。

 ちょっと驚いたのは綺羅の方だった。

「あなたが、準部員でも入るとなると……」
「亜津子は黙っちゃいないと……」
 冷静だ。余裕。
「そう、それでもいいのかしら?」

 わざと翔子を勧誘して、準部員にするつもりだ。揉め事のきっかけ作り。

「いいの?」
 心配そうな繭。
「……いいわよ。入りましょう。せっかく綺羅さんが誘ってくださるのだから」
 平然と言う翔子お嬢様。

 これで話は決まった。


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