「大丈夫?……」
 マイカが心配そうにやられた騎士たちを見ている。

「う……ううっ……」
 20人ほどいた騎士の大半は不意打ちを食らって倒れている。
 あれから不気味な黒い服を着た男達とこぜりあい。といってもほとんどが目が見えないために散々な結果だ。

 しかし男達はリリスとミク以外のメイドである女の誰一人も奪っては行かなかった。
 こういうときだいたい他の女も連れて行かれてしまうのが普通なのだ。
 どうやら時間稼ぎだけされたらしい。

「ちくしょう……やられたぜ」
 ようやく目が見えるようになってきた。
「リリスさんとミクの馬車が……馬車がないのよ!」
 マイカが心配そうに言う。

「なに? ということは……」
 あたりを見る騎士たち。

「どうしよう……」
 エンヤも心配でたまらない。モーラたちその他のメイドたちも一体何が起こったのかと思っている。

 

 ――ちくしょう……まだ目がしみるぜ。
 あの文句ばかり言っていた騎士がやっと立ち上がった。

「騎士長殿は?」
「追いかけていったようです!」
「よし、おれらも追うぞ! 半分ついて来い! 後の者は残った馬車とメイド達を城に連れて行け!」
 酔っていながらも叫ぶ騎士。
「わかりました」

 


 ――くそッ……どうなってやがるんだ……

 信じられない……なぜ……?

 文句ばっかり言っていた騎士はこの状況をまだ認めたくない……


 ――失態だ……へたすりゃ減俸だな……それで済むか? 


 ……うう……それにしても……
 本物のアウグス家の方が乗っていたら……
 そう思うとぞっとする……

 そう思いながら足跡を頼りに追いかける騎士たちだった。
 

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