愛撫
 ミクはミセルバの正面に正座のように座り、手を泡だらけの桶に突っ込んだ。その桶の中は泡のローションタイプのような液体で満たされている。ミクは胸がドキドキだ。それもそうだろう、あこがれの方の体を洗えるのだ。そして今日が初めてなのである。胸の高まりは最高潮だ。また恥ずかしいという気持ちも高まっている。
 ミセルバも本来ならばこんなことはあまりさせたくはない。

 だが自らの体を自分の手で洗うという行為は貴族の間では恥じる行為なのだ。洗うとは汚れを落とすこと。そのようなことは使用人を使えば良いことであり、アカを落とす行為を自らすることは許されないというのが上流階級の間では当然の事であった。

 ミセルバはじっと目を瞑っている。手にたっぷりとローションをつけたミクだが、一向に乳房には触れようとしなかった。どうやらうっとりと御領主の顔を見つめているらしい。見かねたもう一人のメイドがポンポンと背中を叩くと、ハッとして彼女は我に返った。顔は真っ赤だ。もう一人のメイドは首をかしげながらクスッと笑っている。他のメイドたちもやさしく微笑んでいるように見える。

 ミクはそっと乳房に手を添えた。
あこがれのミセルバ様の乳房だ。自分のモノとは月とすっぽんのような違いである。彼女自身乳には悩まされているのだ。胸もそうは大きくなく、他の女性達の胸を見ると、悲しくなる時がある。ローションのたっぷりと付いた布を手にとって、彼女はやさしく乳房の周りを洗い始める。その間ミセルバは、昼間の来客者の一人一人を思い浮かべていた。
 あれは嫌なタイプ、ああ・・あの男はちょっと好み、などと物思いにふけるミセルバ。実はこれはわざとであった。
 最近、体を洗われるたびに、心の奥底から、小さな官能の炎が芽生え始めるからだ。他の事に集中していないと、思わず声が出そうになったこともあった。まさかメイドに洗われて感じてしまうような事は認めたはくない。だがこの独特の雰囲気は自分も嫌いではないし、魅力的でもある。
 昔はかなり違和感があったが、もう今はそうは感じていない。

 ――が、その時心の中でミセルバがつぶやいた。

 ――あ、あんっ!

 ミクが乳首を触り始めたからである。ゆっくりとやさしく布で乳首の周りを左右に振りながら、洗っていく
決して愛撫を加えているのではない。だが結果的には御領主様には愛撫になってしまっている。
 はあ……気持ちが……いい〜。
 不思議な感覚にミセルバは支配されそうになる。一方ミクはというと、今は我に返って役目を一生懸命勤めていた。
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