「あ〜もう、なんでこんな時に……」
 めがねをかけた一人のうら若き女医であり医学博士であるミルミが馬車に揺られて文句を言っている。髪はショートタイプの髪、ちょっとインテリ風の顔立ちの女の子といった感じだ。しかし乳は結構でかい。白衣を着ているので腰のくびれまではよく見えないが、なかなかの身体の持ち主のようだ。

 だが少々不機嫌。

「でもあのばあさんに頼まれると嫌と言えないのよ〜」
 どうやら何か弱みでも握られているのだろうか? 横に医療バッグを置いてあのばあさんの家に到着するのを待っている。
「う〜ん、ついてないわ、猿に実験するつもりだったのに……予定狂うわね」
 スッと足を組んで苛立ちを収めようとする。ショートパンツがよく似合う10代ってところ。しかし白衣にショートパンツというのはある意味悩ましい。さらけだされたふとももがエロチックに見え、めがねの似合うかわいい顔がさらにそれを引き立てる。そして美人系で生意気そうだ。ライザと比べたら子供のタイプだ。しかし身体はしっかり大人。

「あ〜めんどくさいわね動物実験は、はやく人に使ってみたい、アイラでも実験台になってもらおうかしら?」
 なんかすごいことを言っている。アイラの知り合いのようだミルミは。
「無理ね、あれは淫乱になれないわ、淫乱になりそうな女に使わないと意味ないのよ」
 妙なことを言うめがねの女医。

「まあいいわ、天才には試練が必要ね」
 

 天才? だれのことか?

「あの薬はまちがいなく天才にしか作れないもの、うんうん」
 どうやら自分は天才と言っているらしい。こういうタイプにろくなのはいない。
「ふわあ〜眠いなあ〜」
 もうちょっと馬車がおばあさんのところに来るには時間がかかるようである。生意気そうでいい加減な女医はちょっと一眠りを始めた。




「ミク……」
 眠っているミクをじっとみつめているリリス。ベッドの上で静かに眠っているミク。だが悲しそうに寝ているように見える。それがリリスに後悔の念を与える。
 貸してもらっている服の胸元をキュッとつかむリリス。
「私のせいで……私のせいで……」
 リリスが泣き始めた。おばあさんはただただだまっている。

 ――ミク……なにも……されていなわよね、されていなわよね

 知りたいのはここだ、リリスとしてはここが聞きたい、しかしミクは……寝ている。

「あなた、アウグス家のお方?」
 おばあさんがなんとなく聞く。
「え?」
 ハッとするするリリス。どうやらアウグス家の人間と思われているようだ。
「あ……いえ……私は……メイドです」
 ちょっと心なし悲しそうに言うリリス。
「メイド?」
 意味が分からないようだおばあさんは。メイドがなんでこんな貴族のような格好をしているのかという疑問があるのだろう。ミクやリリスの格好を見ればそう思われても仕方ない。
 特にリリスの上半身は裸同然だったのだが、なぜか下半身は着せられていた。
 ある意味情けというべきか……
 
 じっとミクを見ているリリス。目が覚めたときミクの身に何も起きなかったという証明がほしいリリス。
 それをじっと見ているオードリーおばあさん。

 ――リリスと言ったねこの人、そして向こうはミク……う〜んアウグス家の方にそんな名前の人はたしかに……いないわね。

 おばあさんが考えている。でもこのミクやリリスの下半身だけの衣装、そしてあの馬車ははなんだと思っているのだろう。するともう一台の別の馬車が来たようだ。

「あら、来たね……やっぱりこっちが早かったか、またじいさんがうるさいかねえ〜」
 ぶつぶつ何か言いながら女医さんを迎えにいくオードリーばあさんだった。




「なによどういうこと?」
 御馬車を見るミルミ。

 ――なんでこんなところに御馬車が……
 ――このクラスの御馬車はアウグス家でもかなりの地位の人に限られるはずだわ……

 さっと考え込む自称天才女医。

 ……これはチャンスよ!!


 そう! チャンス!!

 いっぱい研究費を稼げるチャンス!!――

 研究費? 研究費とはなんだろうか?

 じっと馬車を確認するミルミ。誰の者か特定したいというところなのか? するとじいさんがやってきた。
「おお、元気にしてたか?」
 と……いきなりめがね女医の肩を揉み始めたじいさん……

「え、ええ……元気よ、あ……あはは」
 嫌な顔をするミルミ。しかしあまりはねつけようとはしない。やはりなんかあるようだ。
「いやあ〜健康的でいいのう〜ほっほっほっ……」
 現代なら立派なセクハラじじいだ。
「じいさん!」
 オードリーばあさんがやってきた。やれやれといった様子だ。いつものことなのだろう。
「こんにちは、オードリーおばあさん」
 肩を揉まれながらおばあさんにあいさつする。
「さっそくじゃけど、女性二人なんじゃ」
「ふむふむ」 

 ――女性の方か、これはまずお近づきのチャンスと見たわ――
 研究費のことが頭によぎる……医療バッグを持ってミルミは、 言われるまま家に入りリリスとミクのところに向かった。


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