その夜。
 ライザが昼間に訪問したお屋敷。その屋敷の中で一人の女性にマッサージが施されている。メイドが二人いる。エロチックな服装だ。短いスカート付きの服。胸も大きくはだけさせている。あたりは大理石で囲まれた豪勢なお部屋。なんともいえない雰囲気をかもし出すのに最適。このドレスのような服はマッサージの時に使用する服装だろうか?それにしては身体が透けて見える。メイドの一人が、うつむきに豪華な模様の大理石の上でねそべている女の肩を揉んでいる。
 背中が美しい……そして美しい肉体の一部である乳房。大理石に押しつぶされたその乳の形には見覚えがある。そう、ラルティーナだ。
 周りは石鹸の泡だろうか?ぬるぬるしているようである。大理石の高さはちょうどメイドたちが立ったままマッサージを施せるようになっている。
「ふう〜いい気持ち……あなた上手ね」
「あ、はい」
 緊張しているメイド。どうやら新入りのようだ。昼間にミクに似たタイプの女の子……その娘らしい。
 背中を二人のメイドがさすったり揉んだりしている。特にミクのタイプとは別の女性はある意味手馴れている。手つきがなんとなくいやらしい。

「そういえば……兄上が……御領主のメイドに御執心とはまことか?」
「あ、はい、どうやらお熱のようで」
「まったく……兄上は」
 どうやらお嬢様はなにか気に入らないようだ。
「なにやら、そのメイドの人事に口添えをされているとか」
「なに?」
 ピクッと30過ぎたお嬢様と呼ばれる女の眉が動く。

 ――口添え……御領主の所のメイドの人事にか?

「そのようなことをすれば不快感であろうの御領主は」
「まだはっきりとはミセルバさまはよくおわかりになってはおられないとか」
「ほう、誰がそのようなことを?」
「あ、は、はい……あの」
もう一人のメイドは黙ってしまった。



「ガッツか?」
「あ、は、はい」
 ポッと顔が赤くなる女。それを見てにこっとミクタイプの女性が笑う。どうやら女はガッツに……らしい。

「あの男はよせ」
「え?」
 ラルティーナが女の顔を見る。肩を揉みながらもビックリしている女。年は30近くだろうか?若作りしているようだ。ミクタイプの女性と比べると明らかに年増である。この年齢で未だにメイドをしているのもめずらしい。だいたい結婚をしているか、水商売をするのがこの世界の一般の女性の生き方だからだ。

「私はあの男は好かぬ」
「…………」
「そなたのために言っておるのだ。兄上は力を認めているようだが」
「は、はい」
 ちょっと下を向いてしまった年増に見える女性。名はミウ……ごく普通のどこにでもいるようなタイプ。
 平凡でも幸せな人生を送ればいいというような考え方の持ち主。
「他にいい男なぞこの世にはいくらでもいる」
 よく聞く言葉だ。だが現実はこれで相手は納得することはまずない。筆者もそれを体験している。
「はい」
 納得はしていない……当然だろう。かなり惚れ込んでいる様だ。ラルティーナはミウを見ている。長くメイドを務めてくれているミウ。それだけに信頼も厚ければその身を心配してくれている。なかなかたかがメイドと思っている人物では出来ないことだ。この屋敷では最年長だ。ある意味心配してくれている。
 だがなかば諦めたような表情になった後、
「ではいつものように……お願い」
「はい」
 ミウはいつものようにお尻のマッサージを始めた。




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