ふう〜まいったわね今日は。明日から部下になる男とひと悶着。あれから向こうがすべて謝ることで場を治めたルビア。しかし、いきなりこんな形では相手の印象も最悪である。
 でも、ジト……顔はごついけど人柄はよさそう。筋肉質のごつごつした身体……マグアイヤの体つきとは大違い。実は個人的にはジトのような体つきの方がルビアは好み。

 ――明日からがまた大変そうね。

 そう思いながらワイングラスを片手に寝る前のひとときを楽しんでいるルビア。するとノックの音がする

「はい?誰」
「あの……さきほどのお礼が言いたくて」
「あら、気にしないでいいのよ、もうおそいから今日はゆっくりおやすみ」
「あっ、は、はい、ありがとうございます」
 扉の向こうで会釈してさきほど助けられたメイドの一人が去っていく。

 ――さっきもありがとうって言ってたのに。わざわざ……またくるなんて律儀なものね。

 さっぱりタイプのルビアにとって何回も重ねて言われるのは嫌のようだ。

 ――それにしても言い返してたメイドの子……なんていう子だっけ?

まだメイドの名前をすべて覚えていないルビア。名前と顔が一致しない。

 ――ああ、思い出したわ。あの子……結構気が強そう。見えない扉の前でぺこぺこおじぎするさっきの女性とは大違いのタイプ。ああいうタイプって軍人向きよねえ〜

 なんてことを思いながらグラスをクルクルと回していく。あと数日で夫が来る。さすがにさびしいという気持ちがある。だがいざとなったら軍人は国のために、王侯貴族のために身をささげなければならない。
 
 ――わたしの場合はまずあの殿下にささげないとね。

 といっても身体をささげるわけではないが。

 ――それにしても殿下って。たまに私を避けてるような気がする。嫌われているのかしら?
 もしかして……

 そんなことはない。嫌われているどころか、気になってしようがないのが今のポポ。
 そのポポは……もう自分の部屋に戻っていた。





 ――う〜ん……う〜ん。

 なんといったらよいのだろう……信じられないモノを見て、いや聞いてしまった。本来なら今日は楽しい一夜になるはずのモノが……。
 結局ラミレスも今日は気をきかせて、終了ということで解散したのだ。まだまだメイドの部屋等をどんどん物色するつもりだったのだが。

 頭にあのいつも嫌味な声が。喘ぎ声に変わっていく……もしかして……聞き間違い。
 いやいや、そんなことないって。

 はあ〜明日からどうやって顔をあわせたら……朝食取りたくないな。

 真剣に悩んでいる殿下。眠れない。どきどきしている……興奮している……。
 と、その時なぜかルビアのあの声が……そう、あのオナニーの声までもが。
 よみがえる……。直後に反応する息子。ダブルの女性の喘ぎ声が殿下のペニスを襲う。

 ――ううっ、勃ってきたよ。反応のよい息子だ。このぐらいの年齢は本当に活発である。頭は悩んでいるのに下半身は喜んでいる。こういうのも困る。

 ――寝よう……。
 ガバッとシーツを身体にくるませ忘れようとするポポ。とても自慰などする気分ではないのだが、下は欲求に正直だ。

 ――眠れないよ〜ううっ。あれは偽者だって……姉上じゃ。

 言い聞かせるポポ。が、いつも聞いている声だ、間違えるはずはない。

 ――お芝居だ、芝居だったんだよ。

 勝手に芝居にして逃避しようとしているポポ。だがあんな芝居をなぜあそこでする必要があるのか。
 自分の姉上はマゾですなんて認められない。あの気の強いメルティーナ姉上が……あの声……そしてメイドたち……思い出しただけでも。

 ――ああっ、や……やばっ。
 自分の姉の喘ぎ声で勃起したペニス。ルビアの声までなぜか思い出して。ますます嫌悪感が頭を支配する。だが嫌悪感は下半身を沈めてはくれない……むしろ爆発寸前だ。
 悶々とした空気があたりを支配する。殿下の表情に赤みが指してきた。美形の童顔がポッと赤くなる。
 もう今日は寝れないだろう。この夜殿下は一睡も出来なかった。

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