もう何時間経っただろうか?おそらく街は明るい日光が差しているはずだ。
「起きてる? セイキン」
「はい」
 起き上がって返事する少年騎士。
「どうしよかな、向こうは何も言ってこないわね」
「ええ……あっ?」
 すると真っ暗な穴の奥から10人ほどの女エルフが出て来た。鉄格子の向こうからだ。

「おはよう、女騎士とそのいそぎんちゃくさん」
 クスクスと笑っている女エルフ達。
「僕はいそぎんちゃくじゃない!」
 言い返すセイキン。
「今から別の場所に行ってもらうわ」
「別の場所?」
 マレイアスが聞く。
「そう、奴隷になる場所よ」
 言い放つ女エルフ。あのミシェルンだ。どうやら女エルフのリーダ格らしい。
「ふざけるな! それよりお嬢様は無事なんだろうな?」
「無事よ、確認させてもいいけどね」
「言う事聞けっていうのか?」
 マレイアスの怒鳴り声だ。洞窟に響く大きな声。
「あなた達が反抗しないならお嬢様には何もしないわ」
「…………」
 じっと女エルフたちを見るマレイアスとセイキン。
 信用はしていないが、ここはどうしようもないというところだ。

「どうするの? 言う事聞くかしら? 聞かなければサルンの餌食よ、あのお嬢様」
「貴様! ただでは済まないぞ、そんなことして見ろ、街の人々は黙っていない!」
 必死に言い返すセイキン。相当むかついている。確かに街の人はこのままでは終わらないだろう。  このダークエルフだけでなく、他の地元エルフも追い出される……あるいは……。
 しかし平気でせせら笑う女エルフ達。 今のこの状況はどうあがいてもマレイアス側が不利なの見えているからだ。
「どうするの? マレイアス」
 ミシェルンが再度尋ねる。マレイアスに。
「わかった」
 返事を素直にするマレイアス。騎士は主を救うのが役目だ。
「いい子ね、サルンの後で私もたっぷりかわいがってあげるわよ」
 ペロッと舌を出すミシェルン。どうやらレズ気もあるらしい。その表情を見てちょとだけゾクッとするマレイアス。こんなダークエルフに……というところだろう。サルンの後……その意味はもうマレイアスもわかってはいる。

 ――あんなダークエルフの少年に……クッ……。
 怒りを覚えるマレイアス。もう何をされるかはわかっている。
「武器を捨てなさい」
 ダークエルフの女が命令する。
 二人は黙って武器を捨てた。
「ちょっと、もう! 返してよ!」
 向こうで声がする……あの声は……。

「お嬢様!」
「あ〜!」
 お嬢様を見るマレイアスとセイキン。マメリアお嬢様もこちらを見た。といっても……拘束状態だが。
「馬鹿あ〜捕まっちゃ意味ないじゃない!」
 ぷう〜と膨れているお嬢様。どうやら元気らしい。
 なんかかわいい笑顔とは対照的に楽天家のようだ。あまり怖さがないのだろうか?
「も、申し訳ありません」
「もう……」
 怒ったところで仕方がない……だいたい悪いのは捕まえたエルフ達だ。
 鉄格子が上に上がる。しかしお嬢様を助けるのは無理だ。しっかりと数人の女ダークエルフと触手に絡まれているからだ。

「さあ、こっちに来て」
 誘導する前に再びミシェルンの触手に拘束される二人。この触手がやっかいなのだ。自由自在の大きさに変えられる、また違った事にも……使うらしい。
 今のところはもうお手上げ状態の二人。
 二人はサルンの所に案内させられた。



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