「ねえ〜」
 女ダークエルフの一人が甘えた声を出す。ダークエルフでは男型はサルンしかここにはいない。この女ダークエルフ達はすべてサルンの女だ。
「駄目だ、僕のペニスはね、今日一日手一杯なんだよ、いやしばらくかもしれないな」
「あの人間の女に使うの?」
「……ああ」
 にこりと答えるサルン。
「もう……やだあ〜」
 甘える女エルフ。相当サルンの虜なのだろう。
 あのペニス状のモノが虜の大部分を占めるのだろうか?
 椅子に座っているサルン。何か飲んでいる。ワインのようなお酒だろうか?
 椅子には妙な雰囲気の紋章が刻まれている。
 蛇女のような美しい女性……これはエルフ特有の紋章だ。
 伝説ではエルフは蛇女から生まれたという事らしい。

「わがままはよくないな、もうしてあげないよ」
「あ〜ん、もっとやだああ〜」
 ますます甘える女ダークエルフ。するとミシェルンたちがやって来た。お嬢様も一緒だ。
「来たね」
 座りながらにやりと笑うサルン。不適に笑う悪の美少年。

「…………」
 黙っているマレイアス。サルンがマレイアスをじっと見つめている。身体全体を見ているようだ。
 しかし、いやらしい視線ではない。むしろ甘い危険な視線といった方がいい。この流し目にも魅力がある。女エルフがたまらないのもこの目からわかる。
 

 だいたい悪人には結構モテルタイプが多いのだ。


「そこに置いて」
 まるでモノ扱いだ。そしてお嬢様は離れた所に置かれた。
 こつこつと気の強い女騎士マレイアスにう近づくサルン。ショートカットの女の表情が険しくなった。
 覚悟を決めているのだろう。

「あのお嬢様は君達が言う事を聞いてくれれば身の保障はするよ」
「本当だろうな?」
 念を押す女騎士。横では少年騎士も睨んでいる。
「ああ、僕もダークエルフの誇りがある。エルフの女神に誓おう」
 あの蛇女がエルフの女神である。
「……わかった」
 触手で拘束されたままうなずくマレイアス。しかしセイキンは納得していない。

 (冗談じゃない! なんで……なんで……マレイアスが……)
 怒りに震えるセイキン……好きでたまらないマレイアスが……こんなエルフの男に……。

「やめろ! 卑怯者!」
「ん? 僕の事かな?」
 セイキンに罵倒され振り向くサルン。
「君は威勢がいいな、ふ〜ん……よく見ると……うちの女エルフにも人気が出そうだね」
「?」
「丁度いい……僕がこの女騎士の相手をしている間、君は女エルフの相手をしてもらおうか」
「ふざけるな!」
 拘束されている身体をガチャガチャと動かす。しかし、鎧の音がするだけでむなしいものだ。

「マメリアを向こうにやってくれ」
「ええ……」
 数人の女エルフがお嬢様を別の場所に連れて行く。これで視界からお嬢様は消えていった。
「じゃあ、本気かどうかためさせてもらう」
 再び椅子に座って今度は真剣な顔で言う。
「…………」
 女騎士は黙っている。だいたい言われる事はわかる。

「お嬢様の代わりに一生懸命ご奉仕しますって言ってくれる?」
「……言えばいいのか?」
 マレイアスがサルンを見る。
「ああ、そうだよ」
「お嬢様の代わりに一生懸命ご奉仕します」
「さすがだ、素直だね。じゃあ次は……この触手の縄を解いてくださいって……言って」
 スッと立ち上がり、ワインのような飲み物を飲みながらマレイアスに近づいていく。
「この……触手を解いてください」
 素直なマレイアス。
「わかった」
 手でピンッとはじくとミシェルンの触手が外れていく。ただしマレイアスだけだ。

「おい、俺は!」
「君はまだだ、もっとも僕のおもちゃにはしないから僕には権限がない」
「はあ? なに言ってんだよ!」
 怒鳴るセイキン。おもちゃ扱いされたらむかつくのは当然!
「解いてほしけりゃミシェルンにでも頼みな」
 と言って自由になったマレイアスにさらに近づく。抵抗しないマレイアス。お嬢様を人質に取られている以上、よっぽどの事がない限り争わないだろう。

 クイッとマレイアスのあごを掴むサルン。美しい妖しい目で女騎士の表情を見る。睨み返すマレイアス。
「いいな、その睨む顔が背徳の笑顔に変わるまでゆっくりと攻め立ててあげるよ」
「……さっさとやれ」
 きりっと睨む。その目がまたいい。
「じゃあ、次は……」

「キスしてと言ってくれないか?」
 一瞬顔が真っ赤になるマレイアス。
「やめろ! 卑怯者!」
 セイキンが再び怒鳴る。もがくセイキン。
「君はうるさいね……でもそれも一興かな。わめきながら堕ちて行く女騎士を見てくれたまえ」
「きさまああああっ!!」
 さらに怒鳴るセイキン。

 


 わめく、怒鳴る! 



「マレイアス、どうする?」
「…………」
 わかっていた事……しかしいざとなれば躊躇する。

「やめろ! この人でなし!」
「僕はダークエルフだ、人じゃない」
 言い返すサルン。馬鹿にした言い方だ。よけい頭に来るセイキン。
「セイキン、黙ってなって」
 マレイアスが諭す。
「いや、黙らせなくて結構だよ、それよりわめきまくっても無駄だと言う事を頭に叩き込んでもらうには丁度いい、どんどんわめいてくれる?」
 嫌な性格だ。ダークエルフはこんなのばっかりか?

 ――こいつ……。
 これは相当いやなタイプと見たマレイアス。予想は当たっていた。

「畜生!ふざけるなよ!」
 セイキンは術中に嵌ってしまった。こうなるともうどうしようもない。だがセイキンの気持ちもわかる。

「さあ〜言ってよ、じゃないと始められない」
「……キス……キスして」
 


 とうとう言った……。



「わかった」
 ゆっくりマレイアスに近づく。

「やめろ! やめろ!」
 後ろでわめいている少年騎士。

 ――心地よい、わめき声だ。

 そして唇に……女騎士の唇に近づいた時、
「そうそう、身体の心配はしなくていいよ、例えば残虐な行為とかはね」
「…………」
 目をそらして聞いている女騎士。
「身体の保障はしてあげる、僕もそういうの大嫌いだから……でも……」
「快楽地獄の保障は出来ないけどね」
 あごを持ったまま鑑賞しているサルン。
「ところで……どこにキスしてほしい?」
「なに?」
 キスする場所を要求するサルン。まったくなんという性格だ。こうやって徐々に追い詰めていくのだろうか?
「場所、言ってくれないと始まらないよ」
「……どこと言えばいい」
 下を向いたまま言い返すマレイアス。
「君が決めてよ」
 あごを撫でながら決めさせる事を要求する。
「…………」
 黙っている……黙っているマレイアス。

「くそ! やめろってえええええ!」
 セイキンのむなしいわめき声だ。
「さすがにうるさいね、黙らせてよ」
 するとセイキンを縛っていた女エルフの触手が枝分かれして少年の口の中に入り込む。

「んぐ! んぐ!」
 これでもうモノも言えない。

「じゃあ……手」
 静かになったところで女騎士が言った。吐いて捨てたような言い方だ。
 相手が望む部分はわかっている。が、今は抵抗したい。
 
「手か……OK、でも鎧をとってもらわないとね」
 鎧は手、腕ほとんどを覆っている。
「…………」
「とってもらえる?」
 丁寧な言い方だ。それがよけいに鼻につく。
 マレイアスは自由な身だいつでも取ろうと思えば取れる。
「はやくしなさいよ!」
 女エルフの一人が文句を言った。しかしサルンが、
「静かにして……お願いだから」
 諭すサルン。軽く女エルフを振り向いて睨む。この雰囲気を徹底的に楽しむつもりらしい。
 それで女エルフも黙ってしまった。

 手袋と手の甲の鎧の部分を自ら脱ぐ。
「手を差し出して」
 言われたとおりに手を差し出した女騎士。瞬間……

 サルンがキスをした……手に。

 ここから始まるのだ……サルンの淫らな調教が……。
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