「王族どもを蹴散らし、または仲間に引き入れた後、僕らは本国へ向かう」
 サルディーニ、いやサルンがミシェルンたちと何か話している。

「そこである程度、敵と味方を見分け、国を掌握した後は、他のエルフの国家に進軍する」
 サルンが力強く言い放つ。ラゼを解放した時よりも、少し筋肉がついているようだ。ラゼのパワーをもらったおかげらしい。

「すご〜い、本気なんだ〜」
「当たり前だ、僕は嘘は言わない」
 インリ対してにこっと笑った。すると、ミシェルンが不満そうに言う。

「ねえ〜マレイアスは……どうするの?」
「后として迎えるつもりだ。文句は言わせないぞ」
 はっきり断言するサルン。
「君も、第二の后にしたい」
「第二?」
 うれしくない言い方だ。ちょっと前は、ラゼも后にすると言っていたサルン。だが、第一の后は、マレイアスで動かないらしい。
「不満を言うな、これでも大事にしているつもりだ」
「うん……」
 まったく納得していないミシェルン。今まで、サルンに尽くしてきたのはなんだったのかとさえ思う。

 
 ――何年も尽くしてきた女よりも、数週間前に気に入った人間の女の方がいいというの?


「君達を無碍にはしない。約束する」
 ダークエルフの娘たちに対し、説得するサルン。
 その表情は、未来の王には確かにふさわしくもある。

「みんな、いずれ忙しくなる。そのつもりでな」
 にっと笑うサルン。そして、クイッとワインを飲み干した。
 新たな状況に対応しようとするサルン。勢力を本気で拡大する気になったようだ。


 気は熟した……そう判断した少年王。

 こうして、話し合いは終わった……

 だが、ミシェルンだけ残された。そのミシェルンを諭すように言う。
「僕にも感情というものがある。わかってほしい」
 めずらしい、サルンがこのようなことを言うとは……今度は、説得工作か?

「……うん」
 まだ納得していないミシェルン。そりゃそうだろう。
「マレイアスは人間の女の后だ。君は、エルフの后だ」
 面白い表現だ。それで納得させるのか? 詐欺師の男がよく使う手だ。

「場合によっては、将来……君が最初の后になるかもしれないな」
 ミシェルンの目を見て、やさしく語りかける。これもよくある手だ。だが、これに人の心はだまされる。

 いや、エルフだった……

「ほんと?」
「本当だ、僕は嘘は言わない」
 恋愛ムードが高まってきた。なんとなく不満が消えて、すっきりしてきたらしいミシェルン。

 作戦成功ということか?

「ねえ〜サルン……」
「ん?」
「愛してる?」
「もちろんさ……」
 笑うサルン。やさしい目だ。うまくいったらしい。たいした少年だ。

「マレイアスも愛しているんでしょう?」
「ああ、もちろんだよ」
 しっかりと目で見て言うサルン。
「どっちが上なの?」
「マレイアスだ」
 きっぱりと言うサルン。さすがは嘘は言わない少年。
 だが、それはミシェルンには厳しい結果である。

 不満はある。だけど、今はサルンにとって大事な時期だ。ミシェルンはサルンを応援している。盗賊と言う立場。散々日陰者だった、ミシェルンたち……

 サルンがダークエルフの王になれば、立場は逆転するのだ!
 ここは、我慢だろう。いずれサルンが、あの女騎士に飽きれば……


 自分が第一の后である。


「抱いて……サルン」
「いいだろう、嫌と言うほど抱いてやるよ」
 サルンは、ミシェルンを激しく抱き始めた……
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