「成功のはずだ」 語気を強める少年先生。部屋で引きこもっている。 「成功だ、後は……どこまで……生きられるか」 にやにやと笑う。結構イケメンの顔立ちだが、笑うと不気味。 「ふふふ、クククッ……ふはははははッ!――」 笑いが止まらない少年。 「どうだい? これで俺が天才と認められた!――」 叫ぶ少年、いきなり情緒不安定。 「あの馬鹿女や馬鹿者どもに見返してやる!――」 机をドンッと叩く。怒りに任せて叩く少年! ――まだまだ……これからだぞ……ふふふ 狂気にも似た目。少年の目が異常に熱い! 「先生……いいですか?」 「ん? ああ……」 ライファンが入ってきた。一気に醒めてしまった。 「しばらくは、ここに?」 「いや、あの調子ならもう研究室に戻るつもりだ」 「そうですか……」 何か言いたそうなライファン。 「戻ったら、次の実験をやる。そうすればはっきりと意識も戻るだろう」 「はい」 コクッとうなずいた。どうやら助手さんのようだ、ライファンは。 そしてまた何も言わず出て行く。 ――先生…… なにやら思いつめている。心配しているお姉さんといった感じか。 「クククッ……みていろ〜」 また笑う少年、いきなり不気味モード。 「あの女が、驚く姿が目に見えるぜ、いや、その他の連中もだ。見返してやる!――」 「おれは……天才なんだ! その現実を受け入れさせてやる!――」 「あはははははっ!――――」 目の前の壁に向かって笑う少年。歪んだ性格を持っている。 この少年の名は、ウッズ。生物学者であり、自称妖術師。 そして……悪魔に魂を売った少年であった。 ウッズという少年が研究しているのは、死人返りという邪法。 一度、死んだ人間を蘇らせる方法の研究…… 本来人間界で、禁止されている研究のひとつ。 人間の大学から追放されたのは、もう数年前になる。それまでは優秀な学者候補だった。 だが、禁止されている研究を本格的にやろうとしたことが発覚。なんども警告されたにも関わらず撤回しなかったため、とうとう学会より追放処分にされたのだ。 それどころか、出頭要請に応じなかったため、お尋ね者になっている。 しかし、この天才少年はあきらめない。 それからもひそかに研究を重ねて……ついに! 「また寝るの?」 「そうだ」 裸になったインリにこのカプセルに入るように促す。等身大の大きさのカプセルだ。なにやら妙なパイプが回りにくっついている。部屋の中も非情に怪しい雰囲気がプンプン。 まだぼーっとしているインリ。意識がはっきりしないようだ。 「行くぞ」 カプセルの上にある、水晶のようなところをめがけて、少年が気を放つ! すると、カプセルが青白くひかり、インリが見えなくなった。 「よし!」 カプセルを外すウッズ。さっと経過を見る。 「ライファン、ベッドに寝かせてくれ。今日はこれで終わりだ」 ここは、研究室。あれから三人は、いつもの研究室に戻ってきていた。 ここが少年先生の拠点である。 「はい」 抱えて連れて行くライファン。結構力もあるようだ。ダークエルフの女性は人間の女性より、かなりの力がある。 ――うまくいっている……そうさ。 自身満々のウッズ少年。そして少年は、またデータの研究に没頭するのだった。 こちらはベッドで寝ているインリ。それをそっと見守っているライファン。 ゆっくりとインリが目を覚ます。 「お目覚め?」 微笑むように言うライファン。 「……あっ……はい」 ゆっくりと身体を起こす。 ――か、軽い? 「身体、動かしてみて」 「はい」 言われたとおり、体を動かす。するとどうだろう、 今まではなんとなく重かった身体が! 「か、軽いわ」 「うふふ、口も軽くなったようね」 「あっ……」 元気さえ出てきた。今まではなんとなくやる気が出ない、頭が重いなどの症状があったのだ。 「ほぼ、完全体になったみたいね」 「完全体?」 「そう……」 やさしい目で見るお姉さん。それにドキッとするインリ。 「あなたは生まれ変わったのよ、わかる?」 そう言われてもピンとこない。 「感謝するのね、先生に」 「先生……」 なんとなくあの少年のことと思う。今までもぼーっとして考え事もうまくいかなかったのだ。 「どうだ? 」 その先生が入ってきた。 「あ、あの……」 ウッズの目を見るインリ。正直なにがどうなっているのかさえわからない。今まではそれを考える思考能力もなかったのだ。 「さ〜て、理解できるレベルになったようだね」 にやっと笑う。そして少年はしゃべり始めた。 |
BACK | NEXT | TOP |